30 / 103
30. 治癒の実と聖女の杖
しおりを挟む
さて、どうしようかなって悩んでいたんだけど、お兄様と話し合って聖女になる為の加護の話をアルファント殿下に打ち明ける事にした。
お兄様は私が『治癒の加護』の実を食べたらいいって言うんだけど、これ、食べると私が完全に聖女に成ってしまうから嫌だった。
聖女って癒しの力が使えるイメージがすごくあるから、『治癒』がつかえる人が聖女でいいんじゃないかな。
お兄様もこれ以上過ぎた力は俺にはちょっと無理って……。
じゃぁ、私に勧めないでよ、って言ったら、「リーナはすでにチートだから大丈夫」ですって。どういう理屈なの。
どうせ、『隠蔽』と『鑑定』は私とお兄様の二人に分かれているんだから『治癒』の加護は他の人が手に入れるといいんじゃないかと思う。加護は普通一人、一つですもの。
「お兄様、鑑定の加護、どうだった?」
「それがさ、色々試行錯誤したら、使い方が分かったけど木を鑑定したら『木』って出てくるし、ナイフを鑑定したら『ナイフ』、リーナを鑑定したら『女の子』だって。そのまま見たままが鑑定結果なんだよ。使えねぇ」
「それは、まぁ。レベルが上がるとわかる事が増えてくるのね。きっと」
「もっと早くからわかっていればレベルも上がったのに、ああ~、もったいない事した。その点、リーナは『隠蔽』のレベルがしっかり上がっているな」
「だって私、『隠蔽』の加護、使いまくっているもの。ステータスを誤魔化すために常時発動中でもあるしね。『液体』の加護も食料確保のために暇さえあれば色々出しているし」
「時々、指咥えて何か飲んでいるし」
「もう、お兄様ったら。はい、これ飲む?」
「おっ、ブドウジュースか」
「の、味がするポーション」
「このポーションも反則だよ。このおかげで魔力量がドンドン上がっているような気がする。そのうちエリクサーとかも出せるようになったら、もう『治癒』の加護なんていらないんじゃないか。加護なしでも聖女と変わりない。しかも、戦闘能力付き。むしろ勇者?」
「もう、お兄様ったら止めてよね。考えないようにしていたのに。私はごく平凡で幸せな人生を送りたいの」
「チートで平凡か。能力を隠しながらスローライフ、それもいいかも」
「いいわよね~。ささやかな幸せを積み重ねたいの」
「できるといいな」
「本当に」
「じゃぁ『治癒の加護』はアルファント殿下に相談してみよう。でさ、もう一つ、思いだしたんだけど、リーナ、洞窟の奥に温泉、作ったじゃないか」
「ああ、そういえばそうね」
「その時にさ、温泉の横でかき氷をよく食べていたよね」
「お兄様はブドウジュースをお酒に見立てて飲んでいたわ。お盆にお猪口と徳利のつもりでお皿と壺だったけど」
「そう、それでさ、リーナがお盆の横に大きな雪ダルマを置いた事があったじゃないか」
「ああっー、木の実で目とか鼻とかつくったわ」
「それで、何時の間にか手足にした木の枝に丸い宝石みたいなのが付いていてさ。これなんだろって言いながら拾ったじゃないか。その枝、まだ持っている?」
「ええ、あるわよ。これ」
久々にアイテムボックスからその木の枝を出したら、木の枝が光輝いた。
木の枝なのに喜んでいるみたい。
やがて、徐々に光は収まり、ごく普通の枝になった。枝の先にはキラキラした宝石が付いていたけど。
「これ、木の枝に見えるけど、この先についている宝石? は取れないわ」
私はキラキラした石を取ろうとしたけど、その石は木の枝の先にしっかりとくっ付いて離れなかった。
「なぁ、それって?」
「これは木の枝よ!」
「でもさ、やっぱり。知らずに何かしたんじゃないか」
「ピンクさんが言うには聖女の杖はちゃんとスティック型になっていて、その先にキラキラした、キラキラした魔法玉が付いているって……もう、どうして木の枝なの!?」
「つまり、聖女の杖を手に入れるには氷の彫刻が必要だし、その出来によって杖の良し悪しも決まるみたいな事をピンク頭が言っていただろう?」
「大きな氷が必要だって言っていたのよ」
「大きな氷で彫刻するんだよ。つまり、それは聖女の杖だ。木の枝に見えるけど」
「どうしましょう。お兄様」
「聖女の杖があったとしても、」
「ええ」
「その使い方はわからない」
「……」
といった会話を昨日の夜に交わしてお互いにため息をついた。
この流れで行くと私が聖女に成ってしまいそう、なので何とかそれは阻止したい。聖女の杖の使い方もわからないし、聖女の杖が木の枝って言うのも問題がありそうな気がする。
私とお兄様はアルファント殿下に色々と丸投げする事にした。
という事で私たちは学生会に入る事にしたのである。
聖女の加護と聖女の杖の話を聞いたアルファント殿下と侍従の方は二人して、ポカンと口を開けた。
凄く揃っていて仲が良いと思った。
ところで、ピンクさんが言っていたように仲間を集めるとしたら、勇者の役はやはりアルファント殿下がするのだろうか?
殿下って光魔法の使い手だし、むしろ殿下が聖女、いや男だから聖人? になればいいかもしれない。
杖(木の枝)を持ってたたずむ殿下。
以外と似合うかもしれない。
お兄様は私が『治癒の加護』の実を食べたらいいって言うんだけど、これ、食べると私が完全に聖女に成ってしまうから嫌だった。
聖女って癒しの力が使えるイメージがすごくあるから、『治癒』がつかえる人が聖女でいいんじゃないかな。
お兄様もこれ以上過ぎた力は俺にはちょっと無理って……。
じゃぁ、私に勧めないでよ、って言ったら、「リーナはすでにチートだから大丈夫」ですって。どういう理屈なの。
どうせ、『隠蔽』と『鑑定』は私とお兄様の二人に分かれているんだから『治癒』の加護は他の人が手に入れるといいんじゃないかと思う。加護は普通一人、一つですもの。
「お兄様、鑑定の加護、どうだった?」
「それがさ、色々試行錯誤したら、使い方が分かったけど木を鑑定したら『木』って出てくるし、ナイフを鑑定したら『ナイフ』、リーナを鑑定したら『女の子』だって。そのまま見たままが鑑定結果なんだよ。使えねぇ」
「それは、まぁ。レベルが上がるとわかる事が増えてくるのね。きっと」
「もっと早くからわかっていればレベルも上がったのに、ああ~、もったいない事した。その点、リーナは『隠蔽』のレベルがしっかり上がっているな」
「だって私、『隠蔽』の加護、使いまくっているもの。ステータスを誤魔化すために常時発動中でもあるしね。『液体』の加護も食料確保のために暇さえあれば色々出しているし」
「時々、指咥えて何か飲んでいるし」
「もう、お兄様ったら。はい、これ飲む?」
「おっ、ブドウジュースか」
「の、味がするポーション」
「このポーションも反則だよ。このおかげで魔力量がドンドン上がっているような気がする。そのうちエリクサーとかも出せるようになったら、もう『治癒』の加護なんていらないんじゃないか。加護なしでも聖女と変わりない。しかも、戦闘能力付き。むしろ勇者?」
「もう、お兄様ったら止めてよね。考えないようにしていたのに。私はごく平凡で幸せな人生を送りたいの」
「チートで平凡か。能力を隠しながらスローライフ、それもいいかも」
「いいわよね~。ささやかな幸せを積み重ねたいの」
「できるといいな」
「本当に」
「じゃぁ『治癒の加護』はアルファント殿下に相談してみよう。でさ、もう一つ、思いだしたんだけど、リーナ、洞窟の奥に温泉、作ったじゃないか」
「ああ、そういえばそうね」
「その時にさ、温泉の横でかき氷をよく食べていたよね」
「お兄様はブドウジュースをお酒に見立てて飲んでいたわ。お盆にお猪口と徳利のつもりでお皿と壺だったけど」
「そう、それでさ、リーナがお盆の横に大きな雪ダルマを置いた事があったじゃないか」
「ああっー、木の実で目とか鼻とかつくったわ」
「それで、何時の間にか手足にした木の枝に丸い宝石みたいなのが付いていてさ。これなんだろって言いながら拾ったじゃないか。その枝、まだ持っている?」
「ええ、あるわよ。これ」
久々にアイテムボックスからその木の枝を出したら、木の枝が光輝いた。
木の枝なのに喜んでいるみたい。
やがて、徐々に光は収まり、ごく普通の枝になった。枝の先にはキラキラした宝石が付いていたけど。
「これ、木の枝に見えるけど、この先についている宝石? は取れないわ」
私はキラキラした石を取ろうとしたけど、その石は木の枝の先にしっかりとくっ付いて離れなかった。
「なぁ、それって?」
「これは木の枝よ!」
「でもさ、やっぱり。知らずに何かしたんじゃないか」
「ピンクさんが言うには聖女の杖はちゃんとスティック型になっていて、その先にキラキラした、キラキラした魔法玉が付いているって……もう、どうして木の枝なの!?」
「つまり、聖女の杖を手に入れるには氷の彫刻が必要だし、その出来によって杖の良し悪しも決まるみたいな事をピンク頭が言っていただろう?」
「大きな氷が必要だって言っていたのよ」
「大きな氷で彫刻するんだよ。つまり、それは聖女の杖だ。木の枝に見えるけど」
「どうしましょう。お兄様」
「聖女の杖があったとしても、」
「ええ」
「その使い方はわからない」
「……」
といった会話を昨日の夜に交わしてお互いにため息をついた。
この流れで行くと私が聖女に成ってしまいそう、なので何とかそれは阻止したい。聖女の杖の使い方もわからないし、聖女の杖が木の枝って言うのも問題がありそうな気がする。
私とお兄様はアルファント殿下に色々と丸投げする事にした。
という事で私たちは学生会に入る事にしたのである。
聖女の加護と聖女の杖の話を聞いたアルファント殿下と侍従の方は二人して、ポカンと口を開けた。
凄く揃っていて仲が良いと思った。
ところで、ピンクさんが言っていたように仲間を集めるとしたら、勇者の役はやはりアルファント殿下がするのだろうか?
殿下って光魔法の使い手だし、むしろ殿下が聖女、いや男だから聖人? になればいいかもしれない。
杖(木の枝)を持ってたたずむ殿下。
以外と似合うかもしれない。
11
あなたにおすすめの小説
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
その聖女は身分を捨てた
喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。
その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。
そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。
魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。
こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。
これは、平和を取り戻した後のお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる