辺境伯の5女ですが 加護が『液体』なので ばれる前に逃げます。

サラ

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31. 悩めるアルファント殿下

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 アルファント殿下はしばらく呆けていたが、やがて気を取り直したように

「よ、よし、じゃぁ、ピンクを攻略するぞ! そして、情報を引き出すんだ」
「頑張れ! 殿下」
「応援しています」
「さすがは王族」
「いや、止めてくれよ。ピンクを攻略するのはリーナだよ」
「なぜに私。私には無理です」
「俺も無理」
「俺も無理です」

 殿下、いつの間にか俺って言っています。
 無理と言わなかった侍従さんに皆の視線が集まったけど

「私は傍観者ですから干渉できないかと……」
「なんだよ、傍観者って」
「第3者って事です。残念ながら私はその物語の中には出てきませんから何もできません。物語が始まるのは、ピンクの方が14歳になった後ですよね。その時に備えて物陰からひっそりと殿下たちの後方支援をする事にします」
「お前、多分だけど俺の侍従って事で登場しているぞ」
「その物語では役割はあたえられていないはずです」
「ずっと一緒に育ってきたじゃないか。俺とお前は一心同体だ」
「私はただの侍従です」
「冷たい事いうなよ~」

 殿下たちのじゃれ合いはしばらく続いたけれど、できる範囲で協力します、という事で落ち着いた。従者さん、単に殿下をからかうのが好きなだけのように見えるのだけどね。それにしても、殿下、王族の猫が完全にはがれています。私たちが転生者だとわかって気が抜けているのかもしれないけど。

「ところで、もし、魔王が復活した時に封印する仲間なんですが、どうも平民の冒険者を含めた7人になるみたいです」
「多いな。7人か」
「それが、学園の攻略対象者全員が魔王対策のメンバーになるのではなくて、基本は殿下とラクアート様、ガーヤ・ジートリス様が同級生からの選抜で後は平民の冒険者が二人、平民のシーフに当たる女性が一人とピンクさんが仲間になります。ただ、学園のメンバーはヒロインが選べるので変わる事もあるそうです。バランスがいいので、いつもこのメンバーだったとの事ですが」

「「参上、7レンジャーなんてね」とピンクさんが言っていました。えーと、それぞれ固有の色があって赤、青、黄、緑、白、黒とピンクさん。で、緑と黒が平民の冒険者らしいです。その黒の人がかなりカッコいいらしくてピンクさん、「魔王復活して、ブラック様からのプロポーズも良いかも」って言っていました。年齢も魔王封印の時はピンクさんと殿下たちは15歳から16歳ですけど冒険者の人たちが20歳と21歳ですからかなり大人の魅力があるみたいです。しかも、リーダーは緑の平民の方になるらしいですよ」
「へぇ~。そうなんだ。ちなみに緑と黒が平民の冒険者なら俺は何色なのかな?」
「残りは青、黄、白ですね。殿下は……」

「殿下は白ですよ。黄色と思ったら黄色はシーフの女性で青はラクアート様です」
「その選ばれる冒険者の名前は聞いた?」
「それがブラック様、グリーン様としか言わないんですよ」
「ひょっとして、名前を覚えてないのかもしれない」
「うん。あり得る」
「シーフの女性のことは?」
「イエローはあまり好きじゃないし、私が能力を授けてあげるようなものだからいらないかも、と言っていました」

「シーフはいなくても大丈夫なのか? 大体俺ら、ただの学園の生徒だよ。ラクアートやガーヤにしても魔物と戦ったことすらないのに、魔王と戦うなんてどう考えても無理があるだろ」
「その辺はゲームですから、愛の力で覚醒するらしいです」
「何言ってんだ! 無理だろ」

「殿下、落ち着いてください」
 侍従の方が思わず立ち上がった殿下の肩を叩いて、座らせた。

「えーと、一つ気になっているのがピンクさんがお兄様の事を星の王子様って言う事なんです」
「星の王子様? えーと、如雨露がいる?」
「いりませんよ。そっちじゃなくて、何かドラゴンを手なずけたり、パズルを解くらしいです。パズルを解かれてもお断りですけどね」

「お兄様ったら、もう。ゲームの中で星の王子様を攻略するのにパズルを解かなくてはいけなくて、そのパズルが難しいからピンクさんは星の王子様を攻略できなくて、ドラゴンを手に入れられなかったそうです。でも、なぜか18歳になったお兄様をピンクさんは知っているらしくて、今は幼いから好みではないけど、大人になったお兄様は好みだといっていました」
「15歳が魔王降臨の年なのに、18歳になっているのか? 隠しキャラ? もしくは裏ボスで姿が変わる? というか、あれが4年生の学園がゲームの舞台だとしたら、魔王の封印がとけるのはいつだ?」

「4月ごろから封印が解ける兆しが徐々に表れるそうですよ。実際はピンクさんがとっくに封印を破っているので単に魔王が少しづつ目覚めていってるだけなんですって」
「じゃぁ、さっさと再封印にいけばいいじゃないか。起きたばかりでボーッとしているほうが楽だろ」
「ストーリー的には、ひょっとして、封印を破ってしまったんじゃないか、と罪の意識に苛まれつつ言いだせないヒロインと何かを抱えながらも健気に明るく振る舞う彼女を心配して助けようとする攻略対象者たちがお互いを想い合い、交流するうちに時が過ぎてしまうそうです」

「で、結局魔王が復活して被害が出始めて、勇者と聖女の選別が行われている時にピンクさんが名乗り出るそうです」
「名乗り出るのか?」
「その時に勇者とその仲間を指名します」
「勇者って誰なんだ?」
「その時のピンクさんの気分だそうです」
「なんだよ。それ!」
「ゲームですから。ヒロインが選択できるんです」
「ふざけたゲームだ」

「ゴホン、ところで大事な話ですが、『治癒の加護』を得られる加護の実が存在している、というかここにお持ちなんですよね」
「そうなんですよね。これ、どうしましょう?」
「おい、ピンクが聖女に成るのがゲームの始まりなのに、ピンクが聖女に成らないのが確定だとしたらゲームはどうなるんだ? 魔王さえ復活しなければ問題ないのか」
「どうなるんでしょう? ゲームの強制力とかなければいいけど、ピンク頭は魔王を復活させてしまうかもしれません」
「ラクアートはゲーム前なのにもう既に攻略されているぞ」
「ピンクさんが前倒ししたんですけど、聖女に成る為のアイテムは間違って私たちが手に入れてしまったので……」
「リーナが聖女?」
「いえ、私は『隠蔽の加護』しか持っていません」

 殿下は頭を抱えてしまった。
 そうだよね。
 困るよね。
 ごめんね。アルファント殿下。
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