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32. 七夕
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「リーナ、誕生日おめでとう。七夕が誕生日って覚えやすくていいな」
「ありがとう。お兄様」
「ほら、今年はこんなにプレゼントが届いたよ。凄いな、アルファント殿下からの花束が大きい。ぬいぐるみに宝石付きのペンダントが付いている。俺の時はワインだったのに」
「ホントね……お礼の意味もあるのかしら」
「そうかもしれないな。それにしてもこのカレーは美味しい」
私たちはタウンハウスの居間でカレーを食べていた。飲み物はコーラ。カレーが美味しい。そして、炭酸飲料は久しぶりなのでとても嬉しかった。
この世界は乙女ゲームの世界なのにカレーはなかったのだ。香辛料をタップリ使うのでコストがかかるからかもしれない。
私の『液体』の加護レベルが上がって、出汁(各種)にコーラとカレースープ、ミネストローネが出せるようになった。カレースープの濃度を上げて、人参、タマネギ、ジャガイモを足してカレーのできあがり。私が作っていた懐かしいカレーの味がした。
おまけに温泉を絞ってピューと飛ばせるようになった。 前は手のひらからドバーって感じだったけど、細く絞るとなんだろう、お湯だけど熱線みたいになった。温泉、いやお湯だけど温度設定の所に赤マークがあって試しにお庭で赤マークをちょっとだけ飛ばしてみたらそこの草が溶けて庭に穴が開いた。
「凄い! 氷雨とあわせて攻撃手段が増えた。もう魔王でもいけるんじゃないか。戦う聖女」
「止めてよ。お兄様。『治癒の加護』はアルファント殿下にあげたんだから聖女は殿下だわ」
「ははは、聖女の王子様か。けど、驚いたな。王妃様が呪われていたなんて」
「そうね。まさか『治癒の加護』と『光魔法の加護』を合わせる事で解呪できるなんて思わなかったわ。でも、まだ『治癒』のレベルが低いから完全に解呪できないんですって」
「『治癒の加護』で人助けができて良かったよ。王族だと治癒ができてもおかしくないし。殿下、『隠蔽』の加護のおかげでレベルが確認できるようになったってすごく喜んでいたけど。でも、リーナ、殿下はいまだにリーナの加護の事、『水魔法』だと思っているけどいいの?」
「いいも何も、『水魔法』だから私たち、魔法学園にいるのよ。独り立ちできる年までは保護者がいたほうがいいわ」
「まぁ、水魔法でできる事は『液体』の加護で大体できるから誤魔化しやすいけどね」
「できれば私、魔法大学校に行って魔法士になりたいわ」
「魔法士になるとそれだけで引く手あまたらしいからね。でも、魔法学園4年生の武闘会で優勝して、そのまま上の大会でも優勝して爵位を貰って独立って手もあるよ」
「15歳で? 無理よ。貴族に混ざってやっていける自信はないわ。お兄様はどう?」
「うーん。俺も自信ないな。俺、前世は高校生だったんだよ。社会経験もないし、せめて18ぐらいにはなっていたいな」
「うん。私も社会経験がないの。できれば、ラクアート様から穏便に婚約破棄してもらって……有用な加護だから家に置いておこうと思われつつ魔法大学校を卒業したら失踪! が理想なんだけど」
「それもこれも、魔王が復活しなければ、なんだよな」
「そうなのよね~。ピンクさん、魔王の情報、言わないよね」
「おかげで、攻略対象者の趣味とか食べ物の好みとかに詳しくなってしまった」
「余分な知識ね~」
結局、ピンクさんと交流して、何とか魔王の事を聞き出して情報を共有しようという事で話がまとまったせいで、ピンクの彼女はいまだに家のタウンハウスに時々やってきてはストレス解消をしていく。
おかげで私のストレスはたまっていく。
学生会は大変そうだと思ったけど、意外と居心地が良い。
私やお兄様の計算能力は前世の記憶もあってかなり優れているし、魔法学園の勉強もはっきり言って楽勝である。お兄様は侍従という立場なので試験は参考として受けているけど、私とお兄様で1,2位を争った。
アルファント殿下は当然、2学年のトップである。
ラクアート様は残念ながら真ん中の下ぐらい、ピンクさんもラクアート様のちょっと下である。日本の教育を受けておきながらこの成績はどうなんだろうと思う。
ピンクさんからも誕生日のプレゼントを貰った。もう着ないからとピンクのヒラヒラドレスを。誕生日にお下がりのドレス、サイズもあるのに。何、考えているんだろうこの人。
ラクアート様からはすごく小さな花束と「誕生日、おめでとう」と走り書きされたカード。プレゼントの品物はなかった。
代わりにピンクさんが「こんなの買ってもらったの」って宝石の付いた高そうなブレスレットを見せに来たけど、それ、本当は私あてのプレゼントのための予算から買ったんじゃないですか、と思った。
まぁ、いいけど。
ピンクさんが聖女に成る為のアイテムを全部私たちが貰ってしまったし。
聖女の杖はいまだに私のアイテムボックスの中にある。
使い方がわからないし、アイテムボックスから出すと光るけど、それだけだし、良く判らない。
お酒のケーキを食べた後、ピンクさんは酔っぱらった時の記憶はなくしたけど酷い頭痛に襲われて、それ以来、自重して沢山は食べてくれなくなった。
酔っ払いのピンクさんのお口はとても軽かったのに……。
氷が出せるようになったか凄くしつこく聞いてくるので、バレーボールサイズの氷を出してあげたら物凄く喜んでいて、何だか申し訳ない気分になってしまった。
聖女の杖は枝になって、私が持っているんです。
言いたいけど言えない。
「ありがとう。お兄様」
「ほら、今年はこんなにプレゼントが届いたよ。凄いな、アルファント殿下からの花束が大きい。ぬいぐるみに宝石付きのペンダントが付いている。俺の時はワインだったのに」
「ホントね……お礼の意味もあるのかしら」
「そうかもしれないな。それにしてもこのカレーは美味しい」
私たちはタウンハウスの居間でカレーを食べていた。飲み物はコーラ。カレーが美味しい。そして、炭酸飲料は久しぶりなのでとても嬉しかった。
この世界は乙女ゲームの世界なのにカレーはなかったのだ。香辛料をタップリ使うのでコストがかかるからかもしれない。
私の『液体』の加護レベルが上がって、出汁(各種)にコーラとカレースープ、ミネストローネが出せるようになった。カレースープの濃度を上げて、人参、タマネギ、ジャガイモを足してカレーのできあがり。私が作っていた懐かしいカレーの味がした。
おまけに温泉を絞ってピューと飛ばせるようになった。 前は手のひらからドバーって感じだったけど、細く絞るとなんだろう、お湯だけど熱線みたいになった。温泉、いやお湯だけど温度設定の所に赤マークがあって試しにお庭で赤マークをちょっとだけ飛ばしてみたらそこの草が溶けて庭に穴が開いた。
「凄い! 氷雨とあわせて攻撃手段が増えた。もう魔王でもいけるんじゃないか。戦う聖女」
「止めてよ。お兄様。『治癒の加護』はアルファント殿下にあげたんだから聖女は殿下だわ」
「ははは、聖女の王子様か。けど、驚いたな。王妃様が呪われていたなんて」
「そうね。まさか『治癒の加護』と『光魔法の加護』を合わせる事で解呪できるなんて思わなかったわ。でも、まだ『治癒』のレベルが低いから完全に解呪できないんですって」
「『治癒の加護』で人助けができて良かったよ。王族だと治癒ができてもおかしくないし。殿下、『隠蔽』の加護のおかげでレベルが確認できるようになったってすごく喜んでいたけど。でも、リーナ、殿下はいまだにリーナの加護の事、『水魔法』だと思っているけどいいの?」
「いいも何も、『水魔法』だから私たち、魔法学園にいるのよ。独り立ちできる年までは保護者がいたほうがいいわ」
「まぁ、水魔法でできる事は『液体』の加護で大体できるから誤魔化しやすいけどね」
「できれば私、魔法大学校に行って魔法士になりたいわ」
「魔法士になるとそれだけで引く手あまたらしいからね。でも、魔法学園4年生の武闘会で優勝して、そのまま上の大会でも優勝して爵位を貰って独立って手もあるよ」
「15歳で? 無理よ。貴族に混ざってやっていける自信はないわ。お兄様はどう?」
「うーん。俺も自信ないな。俺、前世は高校生だったんだよ。社会経験もないし、せめて18ぐらいにはなっていたいな」
「うん。私も社会経験がないの。できれば、ラクアート様から穏便に婚約破棄してもらって……有用な加護だから家に置いておこうと思われつつ魔法大学校を卒業したら失踪! が理想なんだけど」
「それもこれも、魔王が復活しなければ、なんだよな」
「そうなのよね~。ピンクさん、魔王の情報、言わないよね」
「おかげで、攻略対象者の趣味とか食べ物の好みとかに詳しくなってしまった」
「余分な知識ね~」
結局、ピンクさんと交流して、何とか魔王の事を聞き出して情報を共有しようという事で話がまとまったせいで、ピンクの彼女はいまだに家のタウンハウスに時々やってきてはストレス解消をしていく。
おかげで私のストレスはたまっていく。
学生会は大変そうだと思ったけど、意外と居心地が良い。
私やお兄様の計算能力は前世の記憶もあってかなり優れているし、魔法学園の勉強もはっきり言って楽勝である。お兄様は侍従という立場なので試験は参考として受けているけど、私とお兄様で1,2位を争った。
アルファント殿下は当然、2学年のトップである。
ラクアート様は残念ながら真ん中の下ぐらい、ピンクさんもラクアート様のちょっと下である。日本の教育を受けておきながらこの成績はどうなんだろうと思う。
ピンクさんからも誕生日のプレゼントを貰った。もう着ないからとピンクのヒラヒラドレスを。誕生日にお下がりのドレス、サイズもあるのに。何、考えているんだろうこの人。
ラクアート様からはすごく小さな花束と「誕生日、おめでとう」と走り書きされたカード。プレゼントの品物はなかった。
代わりにピンクさんが「こんなの買ってもらったの」って宝石の付いた高そうなブレスレットを見せに来たけど、それ、本当は私あてのプレゼントのための予算から買ったんじゃないですか、と思った。
まぁ、いいけど。
ピンクさんが聖女に成る為のアイテムを全部私たちが貰ってしまったし。
聖女の杖はいまだに私のアイテムボックスの中にある。
使い方がわからないし、アイテムボックスから出すと光るけど、それだけだし、良く判らない。
お酒のケーキを食べた後、ピンクさんは酔っぱらった時の記憶はなくしたけど酷い頭痛に襲われて、それ以来、自重して沢山は食べてくれなくなった。
酔っ払いのピンクさんのお口はとても軽かったのに……。
氷が出せるようになったか凄くしつこく聞いてくるので、バレーボールサイズの氷を出してあげたら物凄く喜んでいて、何だか申し訳ない気分になってしまった。
聖女の杖は枝になって、私が持っているんです。
言いたいけど言えない。
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