55 / 103
55. 三学期
しおりを挟む
3学期はピンク旋風が吹き荒れた。
アチコチでピンク小劇場が行われるので、皆さま、その現場に遭遇すると、そっと避けるようになった。高位貴族の子息には私のポーションが配られているせいか、高位貴族の中でピンク教に入っているのはラクアート様だけかもしれない。
タウンハウスのお茶会は乙女ゲームの始まりを警戒して最小限の集まりに縮小した。もちろん、女性のタウンハウス内の小規模なお茶会はこれまでと変わらず密やかに行っている。
ピンクさんもピンク教の布教に忙しいらしくて、あまり私の所へは来なくなったのは助かる。
それでも、時々訪ねてきては悪口と愚痴を零してくる。どうやら、高位貴族と攻略対象者に布教がうまくいかないのがかなり不満らしい。
「こんなに可愛いあたしの事をチヤホヤしてこないなんてどうかしてる! 攻略対象者の近くに寄れないのはどういう事! ラクアートはやたら実家の用事で呼び出されるし、今年に入ってから何か集まりから疎外されているような気がすんのよね。もう、頭来ちゃう! 桜の木はまだ何処にあるかわからない? はやくしてくれないと聖女の杖をバーン! と出せないから困るんだよ~」
「バーンですか」
「そう、ほら、あたしが聖女よ! と宣言したいじゃない。魔王が復活しないと、聖女の有難みがわからないかな~。でも、封印は面倒だし。でも、この間ブラック様、見つけたんだ。王都に来ていたみたいであまりのカッコよさに思わず見とれて声をかけそびれちゃった。魔王封印しなくてもあたしのファンクラブに入ってもらおうかな」
「ブラック様……」
「そうよ。グリーン様と一緒だったけど、イエローは、あれ、そう言えばイエローはどうした、というか、なんでいないの?」
「イエロー、ですか?」
「そう、ほらえーと、シオ、そう、シオって名前だった」
「シオ?!」
「そうそう、リーナの幼馴染の意地悪シオ。ずっと一緒に育ってきたはずなのに、何でいないんだ? そういえばいつも見ない」
「シオには何も加護はないはずですけど」
「シオの母親が『盗賊と詐欺』の加護持ちじゃない。それを貰って混ぜたらシーフの能力になるんだ。けど、シオの母親って一筋縄ではいかなくてちょっと騙すような形で加護を移してシーフにするんだよね。でも、シオの性格が悪いからすぐ、ブラック様にチョッカイ出そうとするし、色々ちょろまかそうとするし扱いづらいから、あたしはあまり好きじゃないんだ。シーフなしでも攻略できるし、なんで7人集めるのか意味わかんない。やっぱ、イエローはいらないや」
ピンクさんは散々愚痴をこぼして帰って行った。
私の前でピンク小劇場をしているくせに平気な顔して遊びに来るその神経が理解できない。
それにしても
「お兄様……」
「ああ、まさかのシオがイエロー……」
「ずっと、乳母が色々誤魔化したり盗んだりしているのにバレないのが不思議だったの。乳母の加護が見えないのも詐欺の加護のせいだったのかもしれないわ。良くない加護もあるって初めて知ったわ」
「よく貴族の家の、それも乳母に潜り込めたな。侍女や使用人は血縁や他家からの推薦で取っているって聞いていたけど」
「側妃の5女だったから採用基準が甘かったのかもしれない」
「そうだな。俺も放って置かれたから。意外といい加減なのかもしれない」
「でも、私、飢えていたから『液体の加護』が生えてきたんだと思うわ。ミルクが飲みたいって物凄く強く願ったもの」
「強い願いが加護に影響するのかもしれない」
「そうね。ただ、乙女ゲームの中では加護のやり取りができるって事よね。『水魔法の加護』も譲渡できるらしいし。でも、ゲームとはいえ、聖女の加護が譲られたもので良いのかしら」
「多分、聖女は『水魔法の加護』関連の氷魔法を使えるから聖女になるんだ。リーナの加護は『液体の加護』だけど、これは『水魔法の加護』の上位に当たると思う。何より、聖女の杖がリーナに認めてほしいと言っている」
「うっ、そうね、今のところは」
「ピンク頭の持っている杖はあの、ピンク色に染まった水晶? は魔物の目に見えた」
「魔物?」
「そう、俺たちはダンジョンの中で魔獣を狩っているけど、魔王の封印されたダンジョンは魔物が出るって言っていただろう」
「ええ」
「魔物は魔獣より一段階も二段階も手ごわい。図鑑で見た魔物の目にあのピンクの水晶が似ているような気がして。ピンク頭の杖、初めて見た時は普通のガラス玉みたいな水晶だったけど今はピンクのこう、邪気、みたいなものを吸収してギラついたピンク色になっているような」
「邪気?」
「あの香水もおかしいし、ピンク頭自体が邪気の塊だったりして」
「えっ、煩悩の塊みたいとは思うけど」
「とりあえず、アルファント殿下に相談しよう」
と言う事でアルファント殿下に相談した結果、ピンクさんが何か企んでいるらしいので彼女が悪役令嬢呼ばわりしているフルール様は卒業パーティーを欠席してもらう事になった。
多分、ピンクさんはこの卒業パーティーで足をかけたとか、ワインを零したとか言ってきそうだから。念のため、私もピンクさんには近づかないように言われた。
卒業パーティーは武闘会が終わった翌々日に開かれるが、卒業生と役付きの下級生、卒業生から招待された下級生に高位貴族の皆さまと主催者の学生会のメンバーが出席する。
高位貴族から順にポーションを配っているけど、私のポーションは美味しいらしくて、仲の良い人に譲ったり、家族に渡している人もいるらしい。
美味しいポーションなので、そんなに値段も下げるわけにはいかなくて中々下級貴族まで行き渡らない。
そして、殿下はブラック様とグリーン様の存在を掴んでいた。
高位の冒険者の中でピンクさんの言った特徴のある人を探したら特級冒険者の中に該当する二人がいたらしい。今はたまたま王都に滞在しているそうだ。
もし、魔王が復活する事があったら彼らに声が掛かったのではないかとの事。
でも、桜の花はまだ、3輪しか咲いていない。
それに、ピンクさんと攻略対象者との距離は結構遠い、と思う。
アチコチでピンク小劇場が行われるので、皆さま、その現場に遭遇すると、そっと避けるようになった。高位貴族の子息には私のポーションが配られているせいか、高位貴族の中でピンク教に入っているのはラクアート様だけかもしれない。
タウンハウスのお茶会は乙女ゲームの始まりを警戒して最小限の集まりに縮小した。もちろん、女性のタウンハウス内の小規模なお茶会はこれまでと変わらず密やかに行っている。
ピンクさんもピンク教の布教に忙しいらしくて、あまり私の所へは来なくなったのは助かる。
それでも、時々訪ねてきては悪口と愚痴を零してくる。どうやら、高位貴族と攻略対象者に布教がうまくいかないのがかなり不満らしい。
「こんなに可愛いあたしの事をチヤホヤしてこないなんてどうかしてる! 攻略対象者の近くに寄れないのはどういう事! ラクアートはやたら実家の用事で呼び出されるし、今年に入ってから何か集まりから疎外されているような気がすんのよね。もう、頭来ちゃう! 桜の木はまだ何処にあるかわからない? はやくしてくれないと聖女の杖をバーン! と出せないから困るんだよ~」
「バーンですか」
「そう、ほら、あたしが聖女よ! と宣言したいじゃない。魔王が復活しないと、聖女の有難みがわからないかな~。でも、封印は面倒だし。でも、この間ブラック様、見つけたんだ。王都に来ていたみたいであまりのカッコよさに思わず見とれて声をかけそびれちゃった。魔王封印しなくてもあたしのファンクラブに入ってもらおうかな」
「ブラック様……」
「そうよ。グリーン様と一緒だったけど、イエローは、あれ、そう言えばイエローはどうした、というか、なんでいないの?」
「イエロー、ですか?」
「そう、ほらえーと、シオ、そう、シオって名前だった」
「シオ?!」
「そうそう、リーナの幼馴染の意地悪シオ。ずっと一緒に育ってきたはずなのに、何でいないんだ? そういえばいつも見ない」
「シオには何も加護はないはずですけど」
「シオの母親が『盗賊と詐欺』の加護持ちじゃない。それを貰って混ぜたらシーフの能力になるんだ。けど、シオの母親って一筋縄ではいかなくてちょっと騙すような形で加護を移してシーフにするんだよね。でも、シオの性格が悪いからすぐ、ブラック様にチョッカイ出そうとするし、色々ちょろまかそうとするし扱いづらいから、あたしはあまり好きじゃないんだ。シーフなしでも攻略できるし、なんで7人集めるのか意味わかんない。やっぱ、イエローはいらないや」
ピンクさんは散々愚痴をこぼして帰って行った。
私の前でピンク小劇場をしているくせに平気な顔して遊びに来るその神経が理解できない。
それにしても
「お兄様……」
「ああ、まさかのシオがイエロー……」
「ずっと、乳母が色々誤魔化したり盗んだりしているのにバレないのが不思議だったの。乳母の加護が見えないのも詐欺の加護のせいだったのかもしれないわ。良くない加護もあるって初めて知ったわ」
「よく貴族の家の、それも乳母に潜り込めたな。侍女や使用人は血縁や他家からの推薦で取っているって聞いていたけど」
「側妃の5女だったから採用基準が甘かったのかもしれない」
「そうだな。俺も放って置かれたから。意外といい加減なのかもしれない」
「でも、私、飢えていたから『液体の加護』が生えてきたんだと思うわ。ミルクが飲みたいって物凄く強く願ったもの」
「強い願いが加護に影響するのかもしれない」
「そうね。ただ、乙女ゲームの中では加護のやり取りができるって事よね。『水魔法の加護』も譲渡できるらしいし。でも、ゲームとはいえ、聖女の加護が譲られたもので良いのかしら」
「多分、聖女は『水魔法の加護』関連の氷魔法を使えるから聖女になるんだ。リーナの加護は『液体の加護』だけど、これは『水魔法の加護』の上位に当たると思う。何より、聖女の杖がリーナに認めてほしいと言っている」
「うっ、そうね、今のところは」
「ピンク頭の持っている杖はあの、ピンク色に染まった水晶? は魔物の目に見えた」
「魔物?」
「そう、俺たちはダンジョンの中で魔獣を狩っているけど、魔王の封印されたダンジョンは魔物が出るって言っていただろう」
「ええ」
「魔物は魔獣より一段階も二段階も手ごわい。図鑑で見た魔物の目にあのピンクの水晶が似ているような気がして。ピンク頭の杖、初めて見た時は普通のガラス玉みたいな水晶だったけど今はピンクのこう、邪気、みたいなものを吸収してギラついたピンク色になっているような」
「邪気?」
「あの香水もおかしいし、ピンク頭自体が邪気の塊だったりして」
「えっ、煩悩の塊みたいとは思うけど」
「とりあえず、アルファント殿下に相談しよう」
と言う事でアルファント殿下に相談した結果、ピンクさんが何か企んでいるらしいので彼女が悪役令嬢呼ばわりしているフルール様は卒業パーティーを欠席してもらう事になった。
多分、ピンクさんはこの卒業パーティーで足をかけたとか、ワインを零したとか言ってきそうだから。念のため、私もピンクさんには近づかないように言われた。
卒業パーティーは武闘会が終わった翌々日に開かれるが、卒業生と役付きの下級生、卒業生から招待された下級生に高位貴族の皆さまと主催者の学生会のメンバーが出席する。
高位貴族から順にポーションを配っているけど、私のポーションは美味しいらしくて、仲の良い人に譲ったり、家族に渡している人もいるらしい。
美味しいポーションなので、そんなに値段も下げるわけにはいかなくて中々下級貴族まで行き渡らない。
そして、殿下はブラック様とグリーン様の存在を掴んでいた。
高位の冒険者の中でピンクさんの言った特徴のある人を探したら特級冒険者の中に該当する二人がいたらしい。今はたまたま王都に滞在しているそうだ。
もし、魔王が復活する事があったら彼らに声が掛かったのではないかとの事。
でも、桜の花はまだ、3輪しか咲いていない。
それに、ピンクさんと攻略対象者との距離は結構遠い、と思う。
0
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
2025/9/29
追記開始しました。毎日更新は難しいですが気長にお待ちください。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします
ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに
11年後、もう一人 聖女認定された。
王子は同じ聖女なら美人がいいと
元の聖女を偽物として追放した。
後に二人に天罰が降る。
これが この体に入る前の世界で読んだ
Web小説の本編。
だけど、読者からの激しいクレームに遭い
救済続編が書かれた。
その激しいクレームを入れた
読者の一人が私だった。
異世界の追放予定の聖女の中に
入り込んだ私は小説の知識を
活用して対策をした。
大人しく追放なんてさせない!
* 作り話です。
* 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。
* 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。
* 掲載は3日に一度。
【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!
隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。
※三章からバトル多めです。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる