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56. 卒業パーティー
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「お兄様、卒業パーティーでピンクさん、何かしてこないかしら?」
「多分、してくる。ラクちゃんのパートナーで参加する事になっているし、また、豪華なドレスを着てくるんじゃないか。本来なら婚約者がいるならその相手をエスコートすべきだけど」
「そうね。ラクアート様から凄く高いドレスを買ってもらったって自慢していたものね。誕生日に貰ったっていうサファイアのブローチも高そうだったわ」
「あれもリーナに贈った事にしているんだろうな」
「ええ、それは別にいいんだけど、ピンク教に対しての「虐められても健気に頑張っています」アピールは止めてほしいわ」
「しかも、「恋のスパイスだから人前では意地悪な態度をして」とか「悪役令嬢に仕事するように言っといて」とかふざけてる。もっとも、高位貴族や攻略対象者にはアピールが効かなくて焦っているのが、ざまぁみろだけど」
私とお兄様はお汁粉とお煎茶でオヤツを食べていた。
お餅が手に入るようになったので、小さく切って軽く焼いたお餅いりお汁粉である。やっぱり、お汁粉にはお餅が入ってないと。
でも、最近は食べ過ぎで体重が心配。少し自重しないといけないのに、もう、お兄様はせっせと今日もお餅つきをしている。乙女ゲームの登場人物が皆、ふっくらとしていたら絵にならないと思うけど、そうしたらピンクさんも攻略のやる気をなくすかもしれない。
卒業パーティー、当日。
フルール様は欠席だけど私は学生会の一員として卒業生の方をお出迎えする事になっている。
まずは高位貴族を先頭に卒業生の方が入場して、続いて下級生の高位貴族たちがパートナーと共に入ってくる。
卒業生に婚約者、もしくは婚約内定者がいらっしゃる方は卒業生の方と一緒の入場である。学生会の方がパートナーの場合はその方が卒業生ならば卒業生と共に入場するが今年はいらっしゃらない。
学園内のパートナーはご兄弟、もしくはご親戚、あるいは従僕か侍女が務められる事が多い。学園内のパーティーなのでお友達にパートナーを頼む場合もあるようだ。
それでも、私の場合ならラクアート様からのエスコートの申し出があって、婚約者なのでドレスのプレゼントがあるのが普通らしい。
卒業生の入場が終わると、直ぐに下級生の高位貴族の入場。
学園でアルファント殿下を除くと一番家格の高いのはラクアート様なのでピンクさんをエスコートしながら嬉しそうに入場してきた。
その、ピンクさん、そのドレスはやり過ぎではないですか、というほどフリルが付いている。レースもふんだんに使って前世のゴスロリファッションを思い起こさせるようなドレスで、今の流行からは完全に浮いている。
前に私がピンクさんの誕生日プレゼントにあげた人形のドレスによく似ている。でも、あれは人形だからあり得るので、それを実際にドレスにしてしまうなんて。何だか、ごめんなさい、という気持ちになった。
そういえば、「ドレスをラクアートに作ってもらったんだ。皆があっというようなステキなドレス。新しい流行はあたしからはじまる!」と前に自慢していたけど、ゴスロリにしてもケバケバしい感じになってしまって……。
でも、本人が気に入っているから良いのかもしれない。ピンクさん、派手なのが好きみたいだから。
パーティーも中盤になってダンスのための音楽もムードのある曲になってきた。もう、ある程度飲食もひと段落して、アチコチで歓談をしたり、ダンスに興じたりする人たちもいる。
これ迄は特に問題もなく過ごせたので、ちょっと一安心といったところで、ラクアート様が私の所へ近づいてきた。
流石に婚約者なのでダンスの一曲も踊らなくてはいけないのだろうか、嫌だなと思いながら当たり障りのない笑顔で迎えると、突然、そう、突然、ピンク教の人たちに囲まれてしまった。
今日、ピンク教の人は通り過ぎる時に睨んできたり嫌味を言ったりするし、胸にピンクの造花を付けていたので良く判る。
お揃いのピンクの造花だなんて趣味が悪いと思いつつ知らんぷりしていたけど。
「リーナ、君には失望した!」
ラクアート様が突然大きな声で私を指さした。人を指さしちゃいけません。
「これまでは婚約者だからと君の横暴な振る舞いを許してきたが、もう、我慢できない。フレーを毎日のように虐めているそうじゃないか。何人もの人間が君の虐める場面を目撃しているぞ」
「ラクアート、あたしは別にいいの。ただ、謝ってもらえれば」
「何を言っているんだ。フレー。この間は階段から突き落とされそうになったと聞いたぞ。いつもいつも、通りすがりに付き飛ばしたり、足をかけて転ばしたり、誰も見てないと思うなよ」
「いいのよ。ラクアート。リーナだってちょっと焼きもちを焼いただけで」
「ちょっとじゃないだろう! もう我慢できない。リーナ、君との婚約は破棄だ。私は愛するフレグランスと正式に婚約する。フレーは聖女だ」
「ラクアート」
「フレー、君を愛している」
「ありがとう、ラクアート」
「おめでとう」
「悔しいけどお似合いだ」
「「「おめでとう」」」
「それより、謝れよ! アプリコット!」
「フレー様に謝れ!」
「謝れ!」
「借りてたものも返せよ」
「返せ!」
「皆、止めて。リーナも悪気があるわけではないと思うの。私はただ、心からあやまって『水魔法の加護』を渡しますって言ってくれればいいから」
「ほら、フレーもこう言っている。早く、謝って加護を渡すと言え!」
「言え!」
「早く言え!」
私の頭は真っ白になってしまった。悪意のある人達に囲まれるのって怖い。
断罪シーンというのがあるのは知っていた。でも、まさか私が。ここで!?
どうして、私が?
側にいたノームル様が私を守るように前に立ってくれたけど、悪意のある言葉は降り注ぐ。
「リーナ、早く言うのよ。「ごめんなさい『水魔法の加護』はフレグランス様のものって」、ほらっ! 早く」
そう言いながらピンクさんは懐から香水のビンを取り出してシュッシュッと私に振りかけた。
ああ、もう、ウソ!
信じられない!
「多分、してくる。ラクちゃんのパートナーで参加する事になっているし、また、豪華なドレスを着てくるんじゃないか。本来なら婚約者がいるならその相手をエスコートすべきだけど」
「そうね。ラクアート様から凄く高いドレスを買ってもらったって自慢していたものね。誕生日に貰ったっていうサファイアのブローチも高そうだったわ」
「あれもリーナに贈った事にしているんだろうな」
「ええ、それは別にいいんだけど、ピンク教に対しての「虐められても健気に頑張っています」アピールは止めてほしいわ」
「しかも、「恋のスパイスだから人前では意地悪な態度をして」とか「悪役令嬢に仕事するように言っといて」とかふざけてる。もっとも、高位貴族や攻略対象者にはアピールが効かなくて焦っているのが、ざまぁみろだけど」
私とお兄様はお汁粉とお煎茶でオヤツを食べていた。
お餅が手に入るようになったので、小さく切って軽く焼いたお餅いりお汁粉である。やっぱり、お汁粉にはお餅が入ってないと。
でも、最近は食べ過ぎで体重が心配。少し自重しないといけないのに、もう、お兄様はせっせと今日もお餅つきをしている。乙女ゲームの登場人物が皆、ふっくらとしていたら絵にならないと思うけど、そうしたらピンクさんも攻略のやる気をなくすかもしれない。
卒業パーティー、当日。
フルール様は欠席だけど私は学生会の一員として卒業生の方をお出迎えする事になっている。
まずは高位貴族を先頭に卒業生の方が入場して、続いて下級生の高位貴族たちがパートナーと共に入ってくる。
卒業生に婚約者、もしくは婚約内定者がいらっしゃる方は卒業生の方と一緒の入場である。学生会の方がパートナーの場合はその方が卒業生ならば卒業生と共に入場するが今年はいらっしゃらない。
学園内のパートナーはご兄弟、もしくはご親戚、あるいは従僕か侍女が務められる事が多い。学園内のパーティーなのでお友達にパートナーを頼む場合もあるようだ。
それでも、私の場合ならラクアート様からのエスコートの申し出があって、婚約者なのでドレスのプレゼントがあるのが普通らしい。
卒業生の入場が終わると、直ぐに下級生の高位貴族の入場。
学園でアルファント殿下を除くと一番家格の高いのはラクアート様なのでピンクさんをエスコートしながら嬉しそうに入場してきた。
その、ピンクさん、そのドレスはやり過ぎではないですか、というほどフリルが付いている。レースもふんだんに使って前世のゴスロリファッションを思い起こさせるようなドレスで、今の流行からは完全に浮いている。
前に私がピンクさんの誕生日プレゼントにあげた人形のドレスによく似ている。でも、あれは人形だからあり得るので、それを実際にドレスにしてしまうなんて。何だか、ごめんなさい、という気持ちになった。
そういえば、「ドレスをラクアートに作ってもらったんだ。皆があっというようなステキなドレス。新しい流行はあたしからはじまる!」と前に自慢していたけど、ゴスロリにしてもケバケバしい感じになってしまって……。
でも、本人が気に入っているから良いのかもしれない。ピンクさん、派手なのが好きみたいだから。
パーティーも中盤になってダンスのための音楽もムードのある曲になってきた。もう、ある程度飲食もひと段落して、アチコチで歓談をしたり、ダンスに興じたりする人たちもいる。
これ迄は特に問題もなく過ごせたので、ちょっと一安心といったところで、ラクアート様が私の所へ近づいてきた。
流石に婚約者なのでダンスの一曲も踊らなくてはいけないのだろうか、嫌だなと思いながら当たり障りのない笑顔で迎えると、突然、そう、突然、ピンク教の人たちに囲まれてしまった。
今日、ピンク教の人は通り過ぎる時に睨んできたり嫌味を言ったりするし、胸にピンクの造花を付けていたので良く判る。
お揃いのピンクの造花だなんて趣味が悪いと思いつつ知らんぷりしていたけど。
「リーナ、君には失望した!」
ラクアート様が突然大きな声で私を指さした。人を指さしちゃいけません。
「これまでは婚約者だからと君の横暴な振る舞いを許してきたが、もう、我慢できない。フレーを毎日のように虐めているそうじゃないか。何人もの人間が君の虐める場面を目撃しているぞ」
「ラクアート、あたしは別にいいの。ただ、謝ってもらえれば」
「何を言っているんだ。フレー。この間は階段から突き落とされそうになったと聞いたぞ。いつもいつも、通りすがりに付き飛ばしたり、足をかけて転ばしたり、誰も見てないと思うなよ」
「いいのよ。ラクアート。リーナだってちょっと焼きもちを焼いただけで」
「ちょっとじゃないだろう! もう我慢できない。リーナ、君との婚約は破棄だ。私は愛するフレグランスと正式に婚約する。フレーは聖女だ」
「ラクアート」
「フレー、君を愛している」
「ありがとう、ラクアート」
「おめでとう」
「悔しいけどお似合いだ」
「「「おめでとう」」」
「それより、謝れよ! アプリコット!」
「フレー様に謝れ!」
「謝れ!」
「借りてたものも返せよ」
「返せ!」
「皆、止めて。リーナも悪気があるわけではないと思うの。私はただ、心からあやまって『水魔法の加護』を渡しますって言ってくれればいいから」
「ほら、フレーもこう言っている。早く、謝って加護を渡すと言え!」
「言え!」
「早く言え!」
私の頭は真っ白になってしまった。悪意のある人達に囲まれるのって怖い。
断罪シーンというのがあるのは知っていた。でも、まさか私が。ここで!?
どうして、私が?
側にいたノームル様が私を守るように前に立ってくれたけど、悪意のある言葉は降り注ぐ。
「リーナ、早く言うのよ。「ごめんなさい『水魔法の加護』はフレグランス様のものって」、ほらっ! 早く」
そう言いながらピンクさんは懐から香水のビンを取り出してシュッシュッと私に振りかけた。
ああ、もう、ウソ!
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