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59. アルファント殿下と婚約
しおりを挟む「リーナ、リーナ」
アルファント殿下の声が甘い。どうしよう。恥ずかしい。ちょっと低めのいい声……。
そう言えば「好きだ、愛してる」って言われたんだった。
どうしよう。
と悩んでいたら朝だった。夢の中でも殿下の声が聞こえてくるなんてどうかしている。
春休みに入って直ぐ、本神殿でアルファント殿下と私の婚約の儀が行われることになった。
本神殿はとても立派で大きな建物だった。
そして、立ち合いは神殿長とノヴァ神官に大勢の神官たち。国王陛下にこの国の宰相、主な大臣までいらっしゃるし、私のステータスがうまくごまかせるのかすごく心配。お兄様も神妙な顔をして端っこに並んでいるけど、距離が遠い。
事前にステータスやレベルの事を知っているノヴァ神官から
「誤魔化したステータスで大丈夫です。大元のクリスタルは神殿の奥に安置されていて、普段は簡易のクリスタルを使いますから。どのみち、大元のクリスタルでも出てくるステータスは変わらないんです。レベルが分かるのはリーナ様ぐらいですよ。安心して『隠蔽の加護』を使ってください」
と言われてしまった。
誤魔化しているのは違いないけど、私の加護は『液体の加護』なんです。とは、今更言えない。この秘密はどこまで持っていけばいいのだろう。
一応今は
リーナ・アプリコット
14歳
加護『水魔法』
が表向きのステータス。
『隠蔽の加護』で本当のステータスを隠しているのはもう、アルファント殿下を始め、国王陛下やノヴァ神官も知っているけどアプリコット家の領主であるお父様と奥様方はご存じないのでそのまま加護は隠しておくことになった。
もちろん、聖女の杖を持っていることもまだ内緒。
本当は『水魔法の加護』ではなく『液体の加護』である事もお父様には絶対にばれたくない。
今回の婚約破棄はラクアート様がフレグランス・タチワルーイ嬢に入れあげて、彼女を正妻にするために一旦、私との婚約を破棄してフレグランス嬢と婚約してから、また、改めて私を側妃として迎えるつもりだったとの事で、ウオーター公爵家としてはラクアート様の勝手な暴走として片付けたかったみたいだけど、高位貴族の大勢いるところで宣言してしまったのと、ノヴァ神官が立ち会ってしまった事でなかったことにはできなかった。
しかも、ラクアート様はしっかりと婚約破棄の書類にサインしているし。
それでも、「もし、アルファント殿下の婚約の話がなければそのまま婚約を続けるつもりだった」とお父様は言いながら呆れた顔で私を見た。
「学生会で会長補佐の仕事ができるなんて、なかなかやるもんだと思っていたが、まさかアルファント殿下を捕まえるなんて驚いた。よくやったとしか言えないが、『水魔法の加護』は聖女の加護でもあるから王家としても確保しておきたかったのだろう」
「はい」
「今の時点では桜は咲いていないし、聖女は必要とされていないがダンジョンの活性化には『水魔法の加護』の使い手が必要とされるからな。お前の魔力がかなり多いのは知っていたがまさか、学園生の内に第一人者になるとは思わなかった。おかげで王家に嫁げることになったのは何とも、めでたい事だ」
いいえ、お父様、桜は咲いているんです。3輪だけだけど。
高位貴族は流石に桜の花が咲くと聖女が現れる、という事を知っている。そして、ラクアート様がピンクさんの事を聖女だと言っているのを戯言だと思っている。
婚約式が始まった。
神殿長からおめでとうございますと挨拶があり、その後、神殿長とノヴァ神官がご神体の女神像に祈りを捧げた。
そして、神官が丸い水晶玉をご神体の前に置いたので、加護の確認のためにまずはアルファント殿下がご神体に深く拝礼をして水晶玉に触れると物凄く眩い光が輝いた。
明るい金色の光だ。そして、半透明で大きなステータスカードが現れた。
アルファント・ド・レクシャエンヤ・パール
15歳
加護『光の加護』レベル12
加護『治癒の加護』レベル3
ああ、しまった。
殿下のステータスのレベルを消すのを忘れていた。私のバカ。自分のステータスで頭が一杯だったから。
「おおっ!」
「凄い光だ、それになんだ、レベルだと!?」
「加護が二つ! 確か『光の加護』だけだったはずなのに」
「さすがアルファント殿下! 『治癒の加護』までお持ちになるとは」
外野から色々な声が聞こえてくる。
殿下もノヴァ神官も一瞬、アッ! という顔をした。二人とも完全にレベルの事を忘れていたらしい。
「静粛に!」
神殿長の声にどよめきは収まったが、目線で促されて仕方なく前に進み出た。殿下の後はすごくやりにくい。
深く拝礼をして水晶玉に触れるとまた、物凄く眩い光があふれ出た。
殿下に比べると白く、白銀色といった感じの色の光が溢れてきた。殿下の光はピカッと光る感じだが私の光はフンワリと広がる感じ。
リーナ・アプリコット
14歳
加護『水魔法』
殿下に比べると普通だ。けれど
「なんと凄い光だ」
「柔らかい色だが物凄い魔力量だ」
「この魔力量だと殿下とお似合いだ」
「王家も安泰だ」
「金と銀でバランスも良い」
また、どよめきが聞こえてきた。魔力量が多いので驚かれたらしい。
婚約式は殿下のレベルがばれてしまうというアクシデントはあったが無事におわり、どうやら王家や重鎮の方々にも受け入れられというか、歓迎されているようだ。
でも、外堀が埋められたような気はするけど、私の覚悟はまだグラグラしている。
どうしよう、とまだ思っている。
それにしても、ピンクさんが行方不明なのが怖い。
王家の影がピンクさんが寮に入ったのを確認しているのに、出ていったのはわからなかったというのが不安材料だし、その後も全く行方が分からないのもおかしいと思う。
ピンクさんの『隠蔽の加護』では一応、灰色の靄をバックの中に忍ばせる事によってアイテムボックスの機能を持つことはできるし、ひょっとして灰色の靄の中に自分自身を隠すことができるのではないだろうか。
それでも、ラクアート様が謹慎していてもピンクさんなら平然と私の前に出てくるような気がする。
私に冤罪をかぶせて謝罪を強要してきても、悪いなんて欠片にも思ってないだろうし。
ひょっとして、ひょっとしてだけど、ピンクさんは拉致された? かもしれない。
何事も起きなければいいけど。
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