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75. まさかの
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アルファント殿下とノヴァ神官が同時に立ち上がった。
「嫌な予感がするので見に行ってくる。リーナは絡まれるかもしれないから、ここに居てくれ」
殿下の言葉に陛下が
「私の全権を委任するから、これ以上立ち入らせるな」
と言葉を投げかけ、ランディ様とトーリスト様、近衛が2人付いて足早に部屋を出ていった。
それにしても、王宮の神殿ってこんなに簡単に入れるとは思わなかった。
「王宮の神殿には普通、神殿長と神官長、ノヴァ神官と担当の神官3人しか立ち入る事は出来ない事になっている。神殿長はこれまで王宮の神殿に足を踏み入れたことさえないはずだ。だからまさかこちらに来るとは思わなかった。それにあれは権威主義者だ。聖女と思っているとは言え、あんな態度を取られて黙っている人間じゃないはずなんだが」
「あの、魅了されているとか、ではないでしょうか」
「魅了か、ありえるな」
しばらく経ち、王宮神殿からアルファント殿下とノヴァ神官達、茶ピンクさんと神殿長が出てきた。しかし、何やら揉めている。
「だから! 私は聖女なのよ。だから、神殿で見つかったモノは私のモノなの!」
「いや、王宮の神殿なんだから勝手に取る事は許されない。ましてや女神像に対してあんな事をするなんて」
「だって、アイテムを取る為なんだから仕方ないじゃない。ドラゴンがいたほうが討伐する時、楽なのよ!」
「ドラゴン!? なんだ、それは?」
「ドラゴンはドラゴンよ。パズルを解くと、ドラゴンが出てくるの」
茶ピンクさんの声が大きいし、もう完全に敬語を忘れてアルファント殿下とやりあっている。側で神殿長が何だかオロオロしているし。でも、ドラゴン、ドラゴンが登場するためのアイテムが神殿に有ったという事?
前にピンクさんはドラゴンと星の王子様、つまりお兄様が関係あるみたいな事を言っていたけど、パズルが解けないから諦めるとか言っていたような。
茶ピンクさんはドラゴンを呼び出そうとしている? でも、ドラゴンなんて呼び出して言う事聞いてくれなかったら大災害になる。
第一、ドラゴンなんて怖い。ゲームの画面に出てくるのなら平気だけど、この世界の魔獣は動物が魔物に変わったみたいで、大きくて不気味だしできれば遭遇したくないモノなのに、家を踏みつぶすぐらいの大きさのドラゴンなんて見たくない、と思う。
「何を揉めておる!」
いつの間にか、神殿前に行っていた国王陛下の声に辺りは静まった。皆が一斉に陛下に対して礼を取る。
「アルファント」
陛下の呼びかけに殿下が肯くと説明をした。
殿下達が神殿に入ると女神像の後ろで破壊音がして、急いでそこに近づくと茶ピンクさんがハンマーで女神像の衣装の端の部分を壊していたそうだ。
慌てて止めさせようとしたがもう裾の部分は壊されていてそこからコロリと赤い宝玉が転がり出てきた。
その宝玉を茶ピンクさんは上着で軽く拭うとそのままポケットに入れてしまったとの事。
その赤い宝玉を渡すように言うと、聖女のアイテムだから渡せないと茶ピンクさんが言い張る為、争っているそうだ。
「この神殿の責任者はノヴァ神官である。神殿の管理も今代はノヴァ神官に移管している」
「はい。神殿の女神様の像を始め、全ての備品、宝物は私が管理させていただいております。その宝玉を渡していただけますか」
「嫌よ。これは私のもの」
「窃盗罪で牢に入りたいのですか? 王家の女神像に秘蔵してある宝玉は王家の所有だとお分かりになりませんか。ましてや、女神像にハンマーを振るうなど、女神様への冒涜です。破門されてもおかしくない案件です。それと神殿長、桜の咲く中庭にはお入りになれますが、王宮神殿へ立ち入る時は私への連絡が必要であったはずです。お忘れですか?」
「い、いや、私もまさか女神像にヒビを入れるとは思わなかった、がしかし、私が責任をもって女神像の修復を依頼しよう。ただ、キミカ・タチワルーイ嬢が聖女であるからにはその宝玉も魔王の討伐に必要なのではないか」
「魔王は討伐してはいけないとご存じだったと思いましたが」
「あっ? ああ、そうだったか」
「封印よりは討伐してしまえばもう、これで全部終わりにできるからいいでしょう!」
「そういうものではないのです」
「魔王の存在が無くなって、困る人がいるって事かしら?」
「とにかく、それは国家のモノです。お返しください」
「じゃぁ、アルファント殿下が持って魔王のダンジョンに一緒に行く、ってのはどうですか?」
「魔王のダンジョンが分かるのか?」
「ええ、女神様に教えていただきましたから」
「どこだ?」
「教えてほしかったら私についてきて下さい。そして、ダンジョン攻略に協力してくださいね。勇者として」
「……」
「私、神殿長の養女になりますの。そうしたら身分的にもアルファント殿下と釣り合いますから結婚できますね」
「はっ?」
「あら、歴史的にも勇者と聖女は結ばれるものですわ。殿下は色々とご事情もお有りのようですから、私を王妃にするのは都合がいいのではありませんか」
「ラクアートはどうするつもりだ?」
「リーナはもともと、ラクアート様と婚約していたのですから元の形に戻しましたら八方丸く収まりますし、ラクアート様もそれでいいそうです」
「はい。構いません」
ラクアート様が一歩前にでて答えた。ラクアート様、居たんだ。気が付かなかった。
茶ピンクさんの言葉に思わず皆がラクアート様を見た。
そう、ラクアート様はまるで従者のごとく影のように茶ピンクさんの斜め後ろに立っていたのだ。
何だか存在感が薄くなっているような。
それにしても
な、に、が、構いません、ですか!
私は構います!
「嫌な予感がするので見に行ってくる。リーナは絡まれるかもしれないから、ここに居てくれ」
殿下の言葉に陛下が
「私の全権を委任するから、これ以上立ち入らせるな」
と言葉を投げかけ、ランディ様とトーリスト様、近衛が2人付いて足早に部屋を出ていった。
それにしても、王宮の神殿ってこんなに簡単に入れるとは思わなかった。
「王宮の神殿には普通、神殿長と神官長、ノヴァ神官と担当の神官3人しか立ち入る事は出来ない事になっている。神殿長はこれまで王宮の神殿に足を踏み入れたことさえないはずだ。だからまさかこちらに来るとは思わなかった。それにあれは権威主義者だ。聖女と思っているとは言え、あんな態度を取られて黙っている人間じゃないはずなんだが」
「あの、魅了されているとか、ではないでしょうか」
「魅了か、ありえるな」
しばらく経ち、王宮神殿からアルファント殿下とノヴァ神官達、茶ピンクさんと神殿長が出てきた。しかし、何やら揉めている。
「だから! 私は聖女なのよ。だから、神殿で見つかったモノは私のモノなの!」
「いや、王宮の神殿なんだから勝手に取る事は許されない。ましてや女神像に対してあんな事をするなんて」
「だって、アイテムを取る為なんだから仕方ないじゃない。ドラゴンがいたほうが討伐する時、楽なのよ!」
「ドラゴン!? なんだ、それは?」
「ドラゴンはドラゴンよ。パズルを解くと、ドラゴンが出てくるの」
茶ピンクさんの声が大きいし、もう完全に敬語を忘れてアルファント殿下とやりあっている。側で神殿長が何だかオロオロしているし。でも、ドラゴン、ドラゴンが登場するためのアイテムが神殿に有ったという事?
前にピンクさんはドラゴンと星の王子様、つまりお兄様が関係あるみたいな事を言っていたけど、パズルが解けないから諦めるとか言っていたような。
茶ピンクさんはドラゴンを呼び出そうとしている? でも、ドラゴンなんて呼び出して言う事聞いてくれなかったら大災害になる。
第一、ドラゴンなんて怖い。ゲームの画面に出てくるのなら平気だけど、この世界の魔獣は動物が魔物に変わったみたいで、大きくて不気味だしできれば遭遇したくないモノなのに、家を踏みつぶすぐらいの大きさのドラゴンなんて見たくない、と思う。
「何を揉めておる!」
いつの間にか、神殿前に行っていた国王陛下の声に辺りは静まった。皆が一斉に陛下に対して礼を取る。
「アルファント」
陛下の呼びかけに殿下が肯くと説明をした。
殿下達が神殿に入ると女神像の後ろで破壊音がして、急いでそこに近づくと茶ピンクさんがハンマーで女神像の衣装の端の部分を壊していたそうだ。
慌てて止めさせようとしたがもう裾の部分は壊されていてそこからコロリと赤い宝玉が転がり出てきた。
その宝玉を茶ピンクさんは上着で軽く拭うとそのままポケットに入れてしまったとの事。
その赤い宝玉を渡すように言うと、聖女のアイテムだから渡せないと茶ピンクさんが言い張る為、争っているそうだ。
「この神殿の責任者はノヴァ神官である。神殿の管理も今代はノヴァ神官に移管している」
「はい。神殿の女神様の像を始め、全ての備品、宝物は私が管理させていただいております。その宝玉を渡していただけますか」
「嫌よ。これは私のもの」
「窃盗罪で牢に入りたいのですか? 王家の女神像に秘蔵してある宝玉は王家の所有だとお分かりになりませんか。ましてや、女神像にハンマーを振るうなど、女神様への冒涜です。破門されてもおかしくない案件です。それと神殿長、桜の咲く中庭にはお入りになれますが、王宮神殿へ立ち入る時は私への連絡が必要であったはずです。お忘れですか?」
「い、いや、私もまさか女神像にヒビを入れるとは思わなかった、がしかし、私が責任をもって女神像の修復を依頼しよう。ただ、キミカ・タチワルーイ嬢が聖女であるからにはその宝玉も魔王の討伐に必要なのではないか」
「魔王は討伐してはいけないとご存じだったと思いましたが」
「あっ? ああ、そうだったか」
「封印よりは討伐してしまえばもう、これで全部終わりにできるからいいでしょう!」
「そういうものではないのです」
「魔王の存在が無くなって、困る人がいるって事かしら?」
「とにかく、それは国家のモノです。お返しください」
「じゃぁ、アルファント殿下が持って魔王のダンジョンに一緒に行く、ってのはどうですか?」
「魔王のダンジョンが分かるのか?」
「ええ、女神様に教えていただきましたから」
「どこだ?」
「教えてほしかったら私についてきて下さい。そして、ダンジョン攻略に協力してくださいね。勇者として」
「……」
「私、神殿長の養女になりますの。そうしたら身分的にもアルファント殿下と釣り合いますから結婚できますね」
「はっ?」
「あら、歴史的にも勇者と聖女は結ばれるものですわ。殿下は色々とご事情もお有りのようですから、私を王妃にするのは都合がいいのではありませんか」
「ラクアートはどうするつもりだ?」
「リーナはもともと、ラクアート様と婚約していたのですから元の形に戻しましたら八方丸く収まりますし、ラクアート様もそれでいいそうです」
「はい。構いません」
ラクアート様が一歩前にでて答えた。ラクアート様、居たんだ。気が付かなかった。
茶ピンクさんの言葉に思わず皆がラクアート様を見た。
そう、ラクアート様はまるで従者のごとく影のように茶ピンクさんの斜め後ろに立っていたのだ。
何だか存在感が薄くなっているような。
それにしても
な、に、が、構いません、ですか!
私は構います!
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