辺境伯の5女ですが 加護が『液体』なので ばれる前に逃げます。

サラ

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76. 結局は

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結局、どうなったかというと赤い宝玉はアルファント殿下に渡された。

 茶ピンクさんの言う事を聞く必要は全くないのだけど、彼女が魔王のダンジョンがどこにあるかわかる、というのでダンジョンまで一緒に同行することになった。魔王のダンジョンを探す手間も省けるし。

 そして、魔王のダンジョン攻略を今までダンジョン攻略をしてきたメンバーとは別に、茶ピンクさんとラクアート様を中心に平民のブラックさんとグリーンさんを加える形のパーティーで、別々ではあるけれど、同行する形で様子を見る事になった。

 女神像破壊の件については神殿長が全面的に責任を負い、修復の費用も負担する事となる。神殿長が茶ピンクさんを養女にする件については陛下への申請もまだ行われていないので、魔王関連の事象が落ち着くまでは棚上げという形に。また、女神像破壊についての罪に関しては後日、審議が行われるという事で話は落ち着いた。

 アルファント殿下が勇者として同じパーティーに入らないと明言した事が茶ピンクさんはかなり不満だったようで、
「勇者が聖女と別れて行動するなんて聞いた事がない」とか「勇者が聖女の側に付いて守る事が正しいやり方なのに、離れていてブラックさんに心惹かれてしまってから後悔しても遅い」とか、かなり文句を言ったらしい。

 おまけに「側室を持つのを許すつもりだったけど、こんな態度では正妻一人だけしか持たせられないし、王としての資質も疑われるから国王にもなれないかもね」なんて暴言を吐くモノだからさすがの神殿長も慌てて茶ピンクさんの口を塞ぎにかかったそうだ。

「陛下もいる前でかなりの暴言ですね」
「イヤ、俺に対する暴言を吐いたのは陛下が去ってからだ。流石に陛下がいる時は多少だが殊勝な様子だった。二つのパーティーに分かれてダンジョンに入ると決めて、陛下が立ち去った後、あいつが「私達は同じパーティーなのだからお互いに愛称で呼び合いましょう」と言ってきたので、「お前とは別に行動する」と言ってやった」

「茶ピンクと一緒にダンジョンに入るのはもう、決定なのですね」
「全く持って、不本意だが魔王のダンジョンが特定できるのは大きい。それと、アークには気の毒だが、あいつらが『星の王子様』というアークが同行する事で何か、ドラゴンがらみの情報も得られるかもしれない」

「実際、ドラゴンなんて出てきたらどうしたらいいのか」
「ゲームと違って現実世界でドラゴンなんて出て来られても困る」
「ゲームの中ではヒロインがパズルを解いて、ドラゴンを呼び出して使役する形なのでしょうか?」
「わからん。ただ、茶ピンクがドラゴンを呼び出す気だったのは間違いないな」
「いい迷惑です」
「こちらの事をゲームに出てくる駒としか捉えてないせいか、RPGゲームのように平気で人の家のタンスを開けたり、壺を壊したりしそうだ」
「犯罪行為という認識がなさそうですね」
「第一、王家に対する不敬罪だけでもう処刑ものだ」
「処刑です」
「本当ですよ」

 アルファント殿下達は物凄くストレスが溜まったみたいで茶ピンクさんの悪口を言いまくっていた。他の人がいる前で王族がこんなに感情的な言葉を口に出していいのだろうか、と思ったら、いつの間にか侍女や女官たちは退室していて、しかも防音の結界が張られていた。

 それにしても、茶ピンクさんが聖女としてダンジョン攻略にいくのかしら? 殿下を勇者にして。
 そうしたら、どうしても勇者と聖女はセットで考えられてしまうから、それは凄く嫌かもしれない、というか嫌。
 それに私という婚約者がいるのにどうして平気で自分が王妃になるって言えるのかしら。茶ピンクさんって、凄く嫌な人間かもしれない。

「リーナ、大丈夫。何があっても俺が守るから」

 アルファント殿下の声が聞こえる。

「大丈夫、リーナ。リーナはチートだからあの茶ピンクは何もできないよ。それに、殿下がいるし、俺だってあまり役に立たないかもしれないけど、側にいるから。もし、ドラゴンが出てきても、多分、俺には従うんじゃないか、という気がしないでもない。多分」
「もう、お兄様。多分って」
「大丈夫。ドラゴンを呼び出すというアイテムは殿下が持っている」
「ええ、そうね」

「だから、安心してオヤツを出そう。よし、こんな時にはポテトチップとコーラだ。それにドーナッツ! 身体に脂肪を蓄えよう!」
「なにそれ! もう、お兄様ったら」
「いま、何やらコーラとか聞こえてきたけど……、まさかコーラがあるのか?」
「ええ、殿下。リーナの取って置きですよ」

 という事でポテチとコーラ、それにドーナッツで皆の気持ちは盛り上がった。あまり身体には良くないけどたまには良いと思う。美味しいし。若い男の子にはこの組み合わせは魅力的なのかもしれない。
 ノヴァ神官はとても上品に、でも素早くポテチを食べていたが、ふと手を止めると

「そういえば、あのキミカ・タチワルーイ嬢ですが聖女ではありませんね。でも、聖女の杖はかろうじて聖女の杖の範疇に入らない事もない、という感じであのピンクの方と同じです」
「やっぱり、俺の鑑定でも聖女ではなくて……」
「無くて?」
「何ていうか、名前はキミカ・タチワルーイって出てくるんだけれど、その下の称号みたいなのが薄墨みたいなので見えなくなっていて」

「アーク、君の鑑定は今、どこまで見えるようになっているんだ? 加護も分かるのか?」
「それが、魔獣の討伐の時はしっかりと弱点が分かるんですけど、相手が人だったら名前と称号だけがわかるんです。例えば、リーナだったら『聖女の認定待ち』ってなっているし、ノヴァ神官だと『聖女の守り人』って」

「アルファント殿下は?」
「えーと、その『勇者と聖女の資格あり』」
「殿下! 聖女になれるんですか!?」
「いや、俺はなるなら聖人だろう! アークはどうなんだ?」
「俺、俺は、その『星の王子様』ってなっているんです。訳が分からない」
「「星の王子様!」」
「如雨露がいるか?」
「殿下、それはもういいですって」

「ああ、まぁ、それはそれとして、リーナが貰った『虹色の宝玉』は新たな聖女の加護になるのか? アーク、宝玉の鑑定はしてみたか?」
「それが、その」
「なんだ?」
「『女神の加護』って出ているんです」
「女神の加護!?」

 初めて聞いた加護の名前に皆、思わず固まった。
 女神の加護って、そんなものを貰ったらどうなるのだろう。
 皆が私を見ているけど、どうしろと。

 ええ、本当にどうしよう。
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