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89. 囚われの魔女
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「ウワッー、凄え!」
「まさに氷の世界、規格外の魔力だ」
「素晴らしいよ、リーナ。さすがの水魔法の加護」
「うん。凄い」
「素晴らしいです」
「凄いです」
皆が驚いているけど、私も驚いている。自分でもびっくりのこの威力。本当に魔物を殲滅してしまった。
「よーし、この氷のおかげで魔物たちはしばらくすれば消えてしまう。いや、本当にあっちの世界の魔物は氷に弱いな」
「異次元では氷魔法は最強だった」
「ほんと、水魔法は貴重だ」
いえ、ですから私の加護は『液体』なんです……。今更、言えないけど。
「それで、これからどうしますか?」
お兄様が話の流れを変えてくれようとしてくれた。
「この氷の上を歩いて行きますか?」
「滑って行こう」
「こう、火魔法で斜めに溶かして氷の滑り台」
「いや、これお湯で溶かせばいいんじゃねぇ。ザザッーと」
はい。皆さん、私を見ています。ので、手のひらからもう一つの攻撃魔法を出してみました。『液体の加護』レベル11で出来るようになった、熱線みたいになる赤マーク付き扱い注意になっている攻撃、攻撃なのかしら。
初めて発動するのでちょっと怖いけど、どんな攻撃になるのか試してみたほうが良いような気がする。どうせ、氷雨も披露してしまったし。お兄様が横から「開きなおっちゃえ」と囁いてくるのが聞こえた。
「熱線、発動」
と小さく唱えると両手の間からビュルルンと赤い熱線? が飛び出て来た。『液体の加護』のレベルが上がっているし、両手をちょっと広げて大き目サイズにしてみたら、ドロドロしたのが凄い勢いで出て来た。
これ、熱線じゃなくて、えーと、線じゃなくて丸太の太いサイズ。着氷すると中に閉じ込められている溶けかけの魔物も含めて下まで穴が開いてしまった。
ダンジョンの床がえぐれているのが見える。熱線というよりはお湯なのに衝撃波、みたいな? 熱線の太いの? とはちょっと違うような。
「いや、なんだ、これ」
「すげぇ、溶岩が飛んで行った」
「溶岩攻撃……」
「いえ、違います。あれはお湯です」
「「いや、まさか」」
「リーナ、あんなお湯があったら、」
「あれは地獄の池から出て来たような、熱湯地獄? 熱湯なのか?」
「氷は溶けたけど、地面がグラグラしているんですけど」
「あの道、歩いたら俺らも溶けちゃうんじゃないか」
「あっ、リーナ。あの道に普通の氷魔法をかけてみたらいいんじゃないか。あれ、氷雨じゃなくて」
「ええ、そうね。氷魔法ね」
お兄様、何故ワクワクと楽しそうなのかしら。他の人はかなりビックリしていると思うけど。
ササッと氷魔法を道にかけるとブクブクと泡立っていた道が落ち着いて歩けそうになった。
「よし、俺は浮遊魔法が使えるから、下の様子を見てくる」
そういうと、グリーンさんが止める間もなく扉から下に降りて行った。そして、何度か足をダンダンと踏みしめるとまた、上に上がってきた。
「大丈夫。ホンワカ暖かい道に変わっている。ちょっと、でこぼこしてるけど。でも、リーナさん、本当に凄いな。『水魔法の加護』を極めるとこんなになるんだ。知らなかった」
「リーナは生まれてすぐ、からずっと『水魔法の加護』を使い続けているんです。『隠蔽の加護』も5歳から常時発動していますし、水魔法も常時発動しているはずです。極めると本当に凄い威力になるというのが良く分かります」
アルファント殿下が得意げに自慢してくれた。有難いけど、ちょっと違うんです、とは言えない。お兄様が笑いをこらえているのがわかる。もう、如何してくれよう。
「いや、人間、極めれば凄いんだという事が実感できたよ」
「これまでの聖女は短期間だけの加護だったし、今のこの世界でも、そんなに加護を極めようとしている人はいないから、まさにリーナさんは先駆者だ」
「本当だ。俺も今の加護を極めてみよう」
「俺も精進します」
「頑張ります」
「あっー、俺もパンの木の加護を極めてみよう。そうしたらどんなパンでも自由自在に出せるようになるかも」
「アーク、それはとても良い心がけだ」
「そうだ。食べ物関係の加護は特に極める事を推奨したいな」
「よし、では最終ボス、魔王じゃないけど、魔女の元に行こう。これまでと勝手が違うから油断はしないように」
「まずは、様子を見て話しかけてみる」
「「はい」」
私達は下におりて、氷の壁に挟まれたデコボコの通路を歩いて、そして、最終の扉に着いた。
「あれ、扉が赤い」
「本当だ」
「前と違うんですか?」
「前は普通の茶色で割と重厚な感じの扉だった」
「そういえば、これまでは茶色の普通の扉でしたね。扉も怒って赤くなっているとか」
「まさか」
「あの二人だったらピンク色でしょう」
「そうですね。これはピンクじゃなくて真っ赤です」
魔女とのご対面は怖いけど、グリーンさんがバァーンと扉を開けた。
すると、其処は大きく広がった円形のホールになっていて一段高くなった王座? に茶ピンクさんが偉そうに足を組んで座っていた。
王座の近くにはスライムのようなプヨプヨしたゼリー状のモノが散らばっている。
「来るのが遅いわよ。一体、これ、どうなってるの! ここから離れられないんだけど」
「いや、君。勝手な行動をするから、そこに縛られてしまったんだよ」
「なによ! なんでそんな遠くから話しているのよ! ここに縫い付けられたように動けないのよ。おまけに何か、変なのが憑りついたみたいで」
(変なのじゃない。あたしはフレグランス!)
「なんで、勝手に私の中にいるのよ! 出ていって!」
(あたしだって出ていきたい!)
どうやらピンクさんと茶ピンクさんが争っているみたい。でもその王座の下には穴が開いていてそこから魔物が顔を出しているんですけど。結構、大きいせいで身体が引っ掛かっているみたい。
「ああ、又魔物が来てるわ。えい! ほらあっちへ行って!」
茶ピンクさんが手に持っている聖女の杖? を振ると魔物が吸引されるように穴から出てきてその前に魔法陣が浮かぶとそこに吸い込まれていった。でも、その穴から又、次の魔物がはい出てきた。
「もう、次から次へと鬱陶しいわ! ほれ、お前もあっちへお行き!」
そして、また魔法陣に魔物が吸い込まれていく。
「えーと、切りがないからリーナさん、氷魔法でその穴、塞いでくれ」
グリーンさんに言われて、穴に氷魔法をかけると穴は氷で塞がれてしまった。魔物も、出てこない。
「やっぱり、氷魔法は便利ね。リーナ、水魔法の加護、私にちょうだい」
(リーナから水魔法を貰うのはあたし!)
「ああ、もう、アンタが煩いから、この椅子から流れてくる声が良く聞こえないじゃない! 黙んなさいよ!」
「あんたこそ、アンタのせいであたし、動けなくなったんだから」
「ふふん、それはご愁傷様。ハッピーエンドは私のものよ」
どうやら、茶ピンクさんはまだ、魔女になった自覚はないみたい。どうやって伝えたらいいのかしら。
「ちょっと、遠くて、声が聞こえずらい! もっと、こっちへ来て!」
茶ピンクさんがそういうのでソロソロと王座の近くに寄った。
「リーナ、あまり近くによるな。何があるかわからない」
「そうだね。声が届く範囲で良いと思うよ」
そう言いながら、アルファント殿下が私の前に立ち、
「君たち、どうしてリーナの『水魔法の加護』を移す事が出来るというんだ」
と問いかけると茶ピンクさんは立ち上がり殿下に向かって何かを投げつけてきた。殿下には水の障壁があるから茶ピンクさんはただの嫌がらせで何かを投げた、と思ったのだけどそれは薄灰色の網状に殿下を包み、殿下はそのまま倒れてしまった。
「ははっ、それは特別な毒の網よ。解毒薬がほしければ『水魔法の加護』を私に寄こしなさい」
茶ピンクさんが高笑いをしている。
ひどい! あぁ、アルファント殿下。
「まさに氷の世界、規格外の魔力だ」
「素晴らしいよ、リーナ。さすがの水魔法の加護」
「うん。凄い」
「素晴らしいです」
「凄いです」
皆が驚いているけど、私も驚いている。自分でもびっくりのこの威力。本当に魔物を殲滅してしまった。
「よーし、この氷のおかげで魔物たちはしばらくすれば消えてしまう。いや、本当にあっちの世界の魔物は氷に弱いな」
「異次元では氷魔法は最強だった」
「ほんと、水魔法は貴重だ」
いえ、ですから私の加護は『液体』なんです……。今更、言えないけど。
「それで、これからどうしますか?」
お兄様が話の流れを変えてくれようとしてくれた。
「この氷の上を歩いて行きますか?」
「滑って行こう」
「こう、火魔法で斜めに溶かして氷の滑り台」
「いや、これお湯で溶かせばいいんじゃねぇ。ザザッーと」
はい。皆さん、私を見ています。ので、手のひらからもう一つの攻撃魔法を出してみました。『液体の加護』レベル11で出来るようになった、熱線みたいになる赤マーク付き扱い注意になっている攻撃、攻撃なのかしら。
初めて発動するのでちょっと怖いけど、どんな攻撃になるのか試してみたほうが良いような気がする。どうせ、氷雨も披露してしまったし。お兄様が横から「開きなおっちゃえ」と囁いてくるのが聞こえた。
「熱線、発動」
と小さく唱えると両手の間からビュルルンと赤い熱線? が飛び出て来た。『液体の加護』のレベルが上がっているし、両手をちょっと広げて大き目サイズにしてみたら、ドロドロしたのが凄い勢いで出て来た。
これ、熱線じゃなくて、えーと、線じゃなくて丸太の太いサイズ。着氷すると中に閉じ込められている溶けかけの魔物も含めて下まで穴が開いてしまった。
ダンジョンの床がえぐれているのが見える。熱線というよりはお湯なのに衝撃波、みたいな? 熱線の太いの? とはちょっと違うような。
「いや、なんだ、これ」
「すげぇ、溶岩が飛んで行った」
「溶岩攻撃……」
「いえ、違います。あれはお湯です」
「「いや、まさか」」
「リーナ、あんなお湯があったら、」
「あれは地獄の池から出て来たような、熱湯地獄? 熱湯なのか?」
「氷は溶けたけど、地面がグラグラしているんですけど」
「あの道、歩いたら俺らも溶けちゃうんじゃないか」
「あっ、リーナ。あの道に普通の氷魔法をかけてみたらいいんじゃないか。あれ、氷雨じゃなくて」
「ええ、そうね。氷魔法ね」
お兄様、何故ワクワクと楽しそうなのかしら。他の人はかなりビックリしていると思うけど。
ササッと氷魔法を道にかけるとブクブクと泡立っていた道が落ち着いて歩けそうになった。
「よし、俺は浮遊魔法が使えるから、下の様子を見てくる」
そういうと、グリーンさんが止める間もなく扉から下に降りて行った。そして、何度か足をダンダンと踏みしめるとまた、上に上がってきた。
「大丈夫。ホンワカ暖かい道に変わっている。ちょっと、でこぼこしてるけど。でも、リーナさん、本当に凄いな。『水魔法の加護』を極めるとこんなになるんだ。知らなかった」
「リーナは生まれてすぐ、からずっと『水魔法の加護』を使い続けているんです。『隠蔽の加護』も5歳から常時発動していますし、水魔法も常時発動しているはずです。極めると本当に凄い威力になるというのが良く分かります」
アルファント殿下が得意げに自慢してくれた。有難いけど、ちょっと違うんです、とは言えない。お兄様が笑いをこらえているのがわかる。もう、如何してくれよう。
「いや、人間、極めれば凄いんだという事が実感できたよ」
「これまでの聖女は短期間だけの加護だったし、今のこの世界でも、そんなに加護を極めようとしている人はいないから、まさにリーナさんは先駆者だ」
「本当だ。俺も今の加護を極めてみよう」
「俺も精進します」
「頑張ります」
「あっー、俺もパンの木の加護を極めてみよう。そうしたらどんなパンでも自由自在に出せるようになるかも」
「アーク、それはとても良い心がけだ」
「そうだ。食べ物関係の加護は特に極める事を推奨したいな」
「よし、では最終ボス、魔王じゃないけど、魔女の元に行こう。これまでと勝手が違うから油断はしないように」
「まずは、様子を見て話しかけてみる」
「「はい」」
私達は下におりて、氷の壁に挟まれたデコボコの通路を歩いて、そして、最終の扉に着いた。
「あれ、扉が赤い」
「本当だ」
「前と違うんですか?」
「前は普通の茶色で割と重厚な感じの扉だった」
「そういえば、これまでは茶色の普通の扉でしたね。扉も怒って赤くなっているとか」
「まさか」
「あの二人だったらピンク色でしょう」
「そうですね。これはピンクじゃなくて真っ赤です」
魔女とのご対面は怖いけど、グリーンさんがバァーンと扉を開けた。
すると、其処は大きく広がった円形のホールになっていて一段高くなった王座? に茶ピンクさんが偉そうに足を組んで座っていた。
王座の近くにはスライムのようなプヨプヨしたゼリー状のモノが散らばっている。
「来るのが遅いわよ。一体、これ、どうなってるの! ここから離れられないんだけど」
「いや、君。勝手な行動をするから、そこに縛られてしまったんだよ」
「なによ! なんでそんな遠くから話しているのよ! ここに縫い付けられたように動けないのよ。おまけに何か、変なのが憑りついたみたいで」
(変なのじゃない。あたしはフレグランス!)
「なんで、勝手に私の中にいるのよ! 出ていって!」
(あたしだって出ていきたい!)
どうやらピンクさんと茶ピンクさんが争っているみたい。でもその王座の下には穴が開いていてそこから魔物が顔を出しているんですけど。結構、大きいせいで身体が引っ掛かっているみたい。
「ああ、又魔物が来てるわ。えい! ほらあっちへ行って!」
茶ピンクさんが手に持っている聖女の杖? を振ると魔物が吸引されるように穴から出てきてその前に魔法陣が浮かぶとそこに吸い込まれていった。でも、その穴から又、次の魔物がはい出てきた。
「もう、次から次へと鬱陶しいわ! ほれ、お前もあっちへお行き!」
そして、また魔法陣に魔物が吸い込まれていく。
「えーと、切りがないからリーナさん、氷魔法でその穴、塞いでくれ」
グリーンさんに言われて、穴に氷魔法をかけると穴は氷で塞がれてしまった。魔物も、出てこない。
「やっぱり、氷魔法は便利ね。リーナ、水魔法の加護、私にちょうだい」
(リーナから水魔法を貰うのはあたし!)
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どうやら、茶ピンクさんはまだ、魔女になった自覚はないみたい。どうやって伝えたらいいのかしら。
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茶ピンクさんがそういうのでソロソロと王座の近くに寄った。
「リーナ、あまり近くによるな。何があるかわからない」
「そうだね。声が届く範囲で良いと思うよ」
そう言いながら、アルファント殿下が私の前に立ち、
「君たち、どうしてリーナの『水魔法の加護』を移す事が出来るというんだ」
と問いかけると茶ピンクさんは立ち上がり殿下に向かって何かを投げつけてきた。殿下には水の障壁があるから茶ピンクさんはただの嫌がらせで何かを投げた、と思ったのだけどそれは薄灰色の網状に殿下を包み、殿下はそのまま倒れてしまった。
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