あなたを瞳にうつす

色無 音恋

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「やっぱり、ポップコーンはキャラメル味だよ!」


「いーや、バター醤油だよ。甘いキャラメル味より塩っぱさが断然一番。」


「はぁ?甘いキャラメルが一番だし!」


「バター醤油だね。」


 2人の争いを目の前にして、私たちは座っている。
 上映時間までまだ時間があるため、ポップコーンとドリンク、チュロス等を買ったのだけど…。


「喧カップルだな。」


「…。」


 直登くんがそんな言葉を知っていることに私は今驚いてるよ。
 “喧カップル”なんて使うんだね。
 はじめて知ったよ。


「それ、美味い?」


「ポップコーン?キャラメル味だけど、食べる?」


「あぁ、一つだけ貰う。」


 ポップコーンをひとつ掴むと、直登くんはポイッと口の中へ放り込んだ。


「美味いな。」


「うん。私、キャラメルが一番好きなんだよね~。」


「そうか。」



「「…。」」


 話すことも無くなってしまい、しばらく2人で静かに座っていた。
 目の前で喧嘩を繰り広げていた2人はどこかに行ったみたいで、私たちだけポツンと取り残されたように感じられる。


 不思議と、この無言の時間が辛くはなかった。


 落ち着く、という訳では無いけども…ただ普通だった。


 学校でも、こんな風に話せたらいいのに…。
 直登くんがモテるのは何となくわかる。

 クラスメイトが「カッコイイ」とか「イケメン」とか話してるところを何回か聞いたことがある。

 あと、告白されたっていうのも。


 王子様、に見えるんだろうね。
 確かに、直登くんはカッコイイ。
 カッコイイけど、なんか掴めない。

 とても不思議な人。


 憧れとかはないけど、なんとなく仲良くなりたかった。



「もうそろそろしたら行こう。アイツ達のことは放っておいて。」


「う、うん。」


 急に現実へと引き戻される。
 いつまで経っても2人は帰ってこなかった___。


 …ってのは冗談。


 あの後2人はきちんと帰ってきて、まだ痴話喧嘩をしていた。
 喧嘩するほどなんとやら、ってことかな?


「この席だ。」


「歩都里は私の右においで!」


「うん。」


「じゃあ、左は俺ね?」


「歩都里さんの右は俺、な。」


 直登くん、私、智、連さんの順番に席へ腰を下ろす。


「どんな話かな?ちょっとワクワクしてきちゃった!」


「智ってこうゆうの見るんだね?」


「見るよー?歩都里の中では私のイメージってどうなってんのよ…。」


「うーん。…恋愛脳68パーセント、かな?」


「えー。数値がビミョー。」


 映画が始まるまで他愛ない話で盛り上がる。
 直登くんは静かに映画が始まるのを待っていた。
 連さんはと言うと…腕を組んで寝る姿勢をとっていた。

 ___寝るき満々だね。


 見る予定の映画はアニメなんだけれど、アクション系で時々に推理要素も入っているものを選んだ。


 前作の映画もなかなか見応えがあった。


 なので、このいい機会を逃すのも惜しいと思い提案させて頂いた。


「…フフっ!楽しみ。」


 観るのが楽しみすぎてワクワクしてしまう。
 ネットでエンディング曲を聞いたけど、あの歌詞はとても良かった。

 激しくはなくゆっくりとした曲調。
 そんな曲が私は好き。


「そんなに見たかったの?」


 智はポップコーンをながら片手にこちらをみた。
 モリモリと頬張る姿はまるで____



「リスみたい。」


 と、私が言うまでもなく寝ていると思っていた連さんが揶揄うような顔をして呟いていた。


「キャラメルは美味しいから仕方がない。」


 智は真顔で言い切った。


「確かに、キャラメルは美味しいと思う。」


 私もそれには同調する。
 バター醤油だって美味しいと思うけど、一番はキャラメルだね。
 譲れない思い~。




「俺も、……キャラメルが一番だと…思う。」



 「だよね!」と親友は満面の笑みを浮かべた。
 私も直登くんがそう言ってくれて、ほのかに嬉しくなる。


 直登くんも、キャラメルが好きなんだ。


 また一つ、彼のことを知れた気がする。
 よくよく考えてみると、私は直登くんの事をよく知らない。

 クラスで見かける時とはちょっと違って、雰囲気が柔らかい。


 ふと、隣の彼に視線を向ける。
 すると…直登くんは私を見つめるとふわりと微笑み、視線を前に移した。


 こんな表情するんだ…。


 初めて見る姿に、私は頬が赤くなる感覚を静かに感じていた。

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