魔法と科学の境界線

北丘 淳士

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更なる疑問

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 ラグラニア調査を開始して2日目の授業も、旭は半分以上頭に入らなかった。昨日のエルザの言葉から新たな疑問が浮かんだからだ。
 他の恒星系から来たと言っても、最低でも10数年はかかるはずだ。高度な科学力を持っているとはいえ、ある程度の人数を揃えないといけない。それに必要な最低限の食料も……。
「コールドスリープ、出来るのだろうか」
 思わず独り言を言ってしまい顔を二人に向けると、両隣に座るエディアとジェリコが睨んでいた。
 1年生の第3期に入って席が自由になってから、エディアとジェリコが大体、隣にいる。
 旭は再び顔を伏せて、何事も無かったようにノートにシャープペンシルを走らす。だが、再び、その疑問に没入してしまう。
「あの空間から繋がる別の空間がいくつかあるって言ってたな……。そこに、いるのかな……」
「何の空間なのよ。いい加減に教えてよ!」
「あ! ああ、悪い。えーっと、寝言だ」
 旭は冗談を言ったつもりだった。
 キッと睨むエディアは手を挙げた。
「教授! トウジョウ君が寝ています!!」
 そう大声で言った。
「東城、眠いなら立ってろ」と、教壇に立つ若い教授から言葉が返ってきた。
「くっ、エ、エディア! お前!!」
 旭は歯噛みしながら、エディアを睨んで席を立つ。
 ふん、と鼻を鳴らし、不貞腐れた表情をエディアは旭から背けた。

 その授業が終わってすぐ、旭は北野の職務室に向った。扉横のチャイムを押すと、すぐに扉が開く。
 挨拶もなく旭は北野の席に駆け寄って話しはじめた。
「教授、エルザとの対話で色々な疑問が出てきたのですが」
「そうか! 教えてくれ」
「はい。次の授業がありますので手短に話します」
「……次の授業は運動生理学の柄本女史だったかな?」
「そうですけど」
 そう言って北野は手首に巻いたLOTに指示した。
「柄本里香教授につないでくれ」
 数瞬して回線がつながる。アカデミーの医療室室長を担当している澄んだ柄本の声が、北野の手首から響いた。
「柄本です。何でしょう? 北野教授」
「次の時間、クラスAの東城旭君を借りたい。彼を出席扱いにしてくれ」
「え、あ、はい! 分かりました」
 またジェリコとエディアから何か言われる……。そう思ってややげんなりしていたところ、北野から席を促された。その席に旭は座り、彼に疑問を述べ始めた。
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