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story3
しおりを挟む今が何月何日の何時で、自分は何歳なのだろうか。そもそも誕生日がいつなのかも分からない。
アイリーンはベッドの上で痛みに耐えつつもぼんやりとそんなことを思った。そして寒さに体を震わせると、足元に丸まっていた毛布を引っ張りあげて包まる。そんな簡単な動作をするだけでも体中がギシギシと悲鳴をあげ、そこへさらに刺すような寒さが重なって痛みを増幅させた。
アイリーンが住まうこの屋敷は、王都近くに建てられた別邸であった。本邸はイレオスキー家の領地であるもっと北の寒い所であると聞く。彼女の部屋には暖炉があるものの、そこで燃やすための牧がほとんど無かった。冬の初めに大量に部屋に置かれたものの、今年の寒さは例年にはないほどである。今までならどうにか我慢を重ねて節約をすることで冬を越してきたが今年はそうもいかなかった。
3日ほど前、食事を運んできた使用人にどうにか身振り手振りで牧が足らないことを伝えたつもりだったが一向に追加の牧を持ってくる様子は見られずこうして長年使い込んで薄くなった毛布1枚で必死にたえた。手足の指先は霜焼けていて、もはや感覚は無い。
(早く眠ってしまいたい…)
そう思っていた時、どこからか美しい音楽と人々の楽しそうな声が聞こえてきた。
(そういえば、今日はグレイブの誕生日だったわね)
『俺は今日、誕生日なんだ。父上や母上、サーシャはプレゼントを用意していてくれたがお前は何の用意もないだろう?だからその体で何か俺のためにするんだ』
そう言ってグレイブは日頃の鬱憤を晴らすべく、先程彼女に暴力をふるたのだった。
世の中では婚約者を探すのも兼ねて貴族の子息たちは皆、盛大に誕生日パーティを催す。それは勿論イレオスキー公爵家も同じで、今日はグレイブの為のパーティが催されているらしかった。
毎年グレイブの誕生日も、サーシャの誕生日もそれはそれは盛大に行われる。屋敷の大広間で行われるそれを、アイリーンはいつもこっそりとカーテンの隙間から除き羨ましいと思い、そして最後には自分があの明るく賑やかで楽しい世界に踏み入れることは無いと思い返してそっと1人布団ベッドに潜り込むのだ。
今日は体が痛くてとてもじゃないが窓際まで歩ける元気がなかった。おまけに体はだんだんと熱くなり、頭もズキズキとし始めた。
(これは熱じゃない。辛くない。大丈夫、大丈夫。少し眠ればきっと治るわ)
暗示でもかけるかの様に自分に言い聞かせて目をつぶると、今度こそ彼女は朝まで目を覚まさなかった。
--------------
そして次の日、目が覚めてゆっくりと起き上がったものの酷い頭痛に吐き気、おまけに目眩がしてすぐにベッドに倒れ込んだ。ついでに昨日蹴られたところがとてつもなく痛み、指一本動かすのが辛かった。ゾクゾクとした寒気もある。これでは風邪をひいて熱が出ていることを認めるしかない。
もう一度目を閉じて、ゆっくりと深呼吸を繰り返した。吐き気が少し治まってきたところを見計らうと彼女はベッドの柱を無欲握り意を決して立ち上がった。
(目が回る…気持ち悪い…だけどどうにか牧だけでも増やして貰えるように言わないとさすがに耐えられない)
今まで苦しい重いばかりしたのだから、死ぬ時くらい眠るように死にたいというのが今の所の彼女の目標だった。
一歩前に足を踏み出す度にフラフラと体が左右前後に振れた。そしてあと少しで扉だという所で等々彼女は力つき、運悪く引っ掛けてしまった花の飾られていない花瓶が割れるガシャーン!!という音と共に床へと倒れ込んで意識を失ったのだった。
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