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第3章
第32話 ムジョウノヨロコビ×ト×ユウショウノアイ
しおりを挟むそして、鳳凰の卵を温め始めてから10日後。
遂にこの日がやってきた。
「震えてるねぇ~♪ もうすぐだねぇ~♪」
「どんな子なのかしら、リオリオ」
「名前はマフリル、そう決めたはずですわ!」
結局、名前は揉めに揉めたので真里愛、フラン、俺、まひるちゃんから1文字ずつ取ることにした。
真世さんはいいのかと尋ねたところ、お腹を撫でながら意味深に微笑んでいた。
さすがに冗談だと思いたい。
「あ、卵にヒビが!」
「どれ!? 見せて!」
「あ、ちょっと! ずるいですわ~~~! ママはわたくしですのよ!」
俺にはわかる。3人とも刷り込み効果でママになるつもりだと言うことが。
なぜならここ数時間ほど、3人とも至近距離で卵を囲っているんだもの。
「くちばしが見えたよっ! 早くママにお顔を見せてっ♪」
「ほら! あたしがママよ!」
「2人とも未練がましいですわ。そこまで必死になるなんてお見苦しいですこと。気品あふれるわたくしがママであるとフラリンも理解しているはずですわ!」
特大のブーメランがフランに刺さった時、遂に卵が割れて中の鳥が姿を現した!
「ぴぃ?」
「「「はわぁ~!」」」
「お、遂に孵化したね!」
5本のアホぽい鶏冠、金色の体毛に少しだけ長い5色の尾羽根。ソフトボール程の大きさと、同じように真ん丸な体。
おそらく鳳凰の雛で間違いないだろう。
通常の鳥の雛とは異なり、既にある程度の体はできている様子だ。
「ぴっぴっぴっぴ!」
ぴょんぴょんと跳びはねながら俺の元へとやってきた雛――マフリル。
「あはは! やっぱり俺がママだということがわかるんだね――いってぇー!?」
「ぴっぴぃっ!」
撫でようと近づけた手、その小指を思いっきり啄まれた!
血が流れてるし、肉もちょっと食われた気がする!
「よし、殺そう。晩飯は小鳥の丸焼きだ」
やはり元はモンスター、殺し合った相手。
この10日間払ったコストよりも今後の平穏を求めるぜ!
「ま、待ってよ! 小指の1つや2ついいじゃない!」
「よくないでしょ! まひるちゃんどいて、そいつ殺せない!」
「ぴーっ! ぴっぴっぴ!」
俺の殺意を感じたか、雛が必死な様子で俺にすり寄ってくる。しかしもう遅い。このゴマすりクソバードめっ!
「(ぴっぴっぴっぴ! ぴぴぴぴぴっ!)」
「(……ん?)」
「(ぴーっ! ぴーっ!)」
「こいつ直接脳内に……!」
肉は啄む。脳内で延々と『ぴっぴぴっぴ』煩い。最悪だ。
「脳内? もしや『念話』でしょうか……」
「あー、そうかも。頭の中でずっと『ぴっぴ』言っててたまらない」
「……ふむ。マフリルさん、私に『念話』を使ってみてください」
「ぴ~」
真世さんの指示に、首を横に振って答える鳥。既に人間の言葉を理解している……だと?
「……なるほど。もしかしたらですが、先程の小指を啄む行為は1種の契約を結ぶための行動かも知れません」
「契約……?」
「ぴっぴ! ぴぴぴぴぴっ!」
肯定と歓びを示すかのように小躍りしている鳥。
「私の愛読書である『闇と悪夢の漆黒契約無双~お前の女?俺と契約して毎晩使わせてもらってるが?~』に似たような描写があります。案外小説の描写もばかにならないですね」
「……」
薄っすらと厨二側な気配は感じていたが……確定したね。ついでにNTR好きも。
今晩は再びゴン太君の出番かもしれないな……。
「それにしても……結構痛かったんだぞ」
「ぴよっ……ぴぃぃ!」
指でマフリルを小突く。
するとマフリルの体が淡く光り、その光が俺の小指を優しく包んだ。
「ぬお? け、怪我が……!」
「治ってますわね。さすがは鳳凰の雛――否、わたくしと凜音様の愛の結晶ですわぁ~~~!」
「お嬢様、しっかり鳳凰の雛と仰ってるじゃないですか。それに、本物の愛の結晶とは……ふふっ」
再びお腹を撫でながら意味深に微笑む真世さん。冗談だよね?
「ぴよっ! ぴよぉ~!」
「どどど、どうしたんだいマフリル! お腹が減ったのかな!?」
べべべ別に動揺なんてしてないもん!
……ところで、こいつのご飯って何?
「お前、何を食うんだ?」
「凜ちゃんのお肉じゃない?♪」
「……それ以外がいいな」
おっとり笑顔で何を言ってるんだ……。
「一般の小鳥用の餌を複数用意しております。あたしが自ら選んだ味、品質ともに最高峰の――」
「ぴっ!」
「――そ、そんなぁ~……」
まひるちゃんがピンセットで差し出した小鳥用の餌だったが、マフリルはお気に召さなかったらしい。
「となると、やはり魔力でしょうか。1度お試し頂けますか?」
「そうね」
「ぴよっ!」
せっかくの初食事だ。できるだけ美味しい魔力を食べさせてやろう。
食べやすいように指先に、全身の魔力を集中させて圧縮。それを複数回繰り返し……いつしかドロっとし液体のようなものが垂れてる幻視が見えるほどに濃縮された魔力。それをマフリルの口元へと運ぶ。
「ぴよっ!? ぴよよよよよよ~~~!」
「(ぴよよよよよよよよ! ぴるるるるるる~~~)」
「おお、すごい食べっぷりだ!」
少々頭の中が煩いが。どんだけ喜んでるんだ。
「ぴっぴっぴっぴっぴっぴ」
「(ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~!)」
たまらぬ……この味を知ってしまっては、もう……他の物は喰えぬではないか。足りぬ……もっとだ……! ありったけ……持って参れ……。
そんな幻聴が聞こえた気がした。鳥だけに。ほう王だけに。
「ぴぃ~……! ぴぃ~……ぴ……」
腹が満たされて眠気が襲ってきたのか、そのまま眠ってしまったマフリル。
「かわっ!? きゃわわわわぁ~……!」
「まあ! 寝ちゃいましたわ! 何て可愛らしいんでしょう!」
「しーっ! 静かにねっ。凜ちゃんも動いちゃダメだよ~?」
小指を咥えられたままなんだけど……動くなと?
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