隣の家の渡邊くんはイケメン俳優やってます

藤野ひま

文字の大きさ
9 / 20
お正月

三日(ⅲ)

しおりを挟む
 男は子供たちに絡んでいて、子供たちは身を引きながら困ってオドオドしている。

「どうしたの?」

 私と董也が割り込むと一人の子が言った。

「えっと、あの、ミノルが……」
「あんた、親か? こいつがぶつかってきたんだよ。最近のガキは謝ることも知らねえ」

 親のわけないだろう、いくつだと思ってんだよ、と思いながらミノルを見ると彼は言った。

「そっちからぶつかってきたんじゃねえか。それに、謝ったぞ」

 きっとそうだと思う、そう思うのが正しいかはわからないけど。分かるのは、僅かに酒の匂いもさせているこの中年の痩せぎすの男が、まともに話し合える相手じゃないということだ。

「ああ、すみません、お兄さん、悪かったね、怪我とか無い?」

 隣で董也がニコニコしながらおっさんに話しかけた。ミノルが勢いこんで口出ししようとするのを、私は慌てて止めるとそっと距離をとらせて小さな声で子供たちに伝えた。

「ここはいいからもう皆んな帰りな」
「でも……」
「大丈夫、大丈夫。皆んなで帰るんだよ? 一人になっちゃう子いない?」

 それぞれに、うん、いないよ、と頷く。

「だけど、さあ、あいつ……」

 ミノルが口を挟んだ。視線の先に男二人がいる。彼の不満げな口調の、あいつ、がどっちを指しているのかはわからないが、とにかく家へ帰るように言うと、ミノルも友人達に「行くよ」と引っ張られるように帰っていく。

 その後ろ姿を見送って、二人の男の様子を伺うと、まだ董也が機嫌をとっているところだったが、だいぶ中年男の気も鎮まったのか落ち着いていた。董也は変わらずニコニコしながら絡まれている。

「あんた、いい男だな。女にモテるだろう」
「いや、そんなことないよ?」
「どっかで会ったことあるか?」
「どうだろう、ないんじゃないかな」

 早く行けや、おっちゃん、と私は内心毒づきながら遠巻きに見ていると、男は奇妙な親しさというか馴れ馴れしさで董也の肩に手を置いた。
 げ。気持ち悪い。
 思わず顔をしかめた私と対照的に董也は表情を変えない。男は董也に顔を寄せるようにしてボソボソ何か言ってる。董也は困ったような顔をして、でもまだ笑っていた。
 ……大丈夫かな。高校生の頃の彼の、知らない人に近寄られるだけで嫌そうにして距離をあけていた事が思い出される。

 やがてどう話が落ち着いたのかしれないけど、男はニヤニヤしながら離れて歩き去っていこうとした。そして道の途中に立っていた私に視線を向ける。目がどんよりと曇っていてそのくせ口元だけニヤけていて、どう取り繕っても好感が持てない。

「お姉ちゃんが兄さんの女か?親って者も大変だな」

 だから違うって。言ってることめちゃくちゃだな。よく董也、我慢して相手したよ。

「よく見りゃ姉ちゃんも美人だな」

 そりゃどうも、と心の中で苦々しく思いつつ表面上はあやふやな笑みを浮かべる。ああ、嫌。

「いいねえ、美男美女」

 その言葉とともに手が伸びてきた。


 

 



しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

Emerald

藍沢咲良
恋愛
教師という仕事に嫌気が差した結城美咲(ゆうき みさき)は、叔母の住む自然豊かな郊外で時々アルバイトをして生活していた。 叔母の勧めで再び教員業に戻ってみようと人材バンクに登録すると、すぐに話が来る。 自分にとっては完全に新しい場所。 しかし仕事は一度投げ出した教員業。嫌だと言っても他に出来る仕事は無い。 仕方無しに仕事復帰をする美咲。仕事帰りにカフェに寄るとそこには…。 〜main cast〜 結城美咲(Yuki Misaki) 黒瀬 悠(Kurose Haruka) ※作中の地名、団体名は架空のものです。 ※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載されています。 ※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。 ポリン先生の作品はこちら↓ https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911 https://www.comico.jp/challenge/comic/33031

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

処理中です...