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学園編
90 逃げたい
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お兄様に案内された個室は、随分と飾り立てられて、派手なものだった。
「……お兄様、ここは何処でしょうか?」
「ん?待って、結界張るから……いや、頼んで良い?」
「分かりましたわ」
私は防御プラス防音の結界を張った。
短い学園生活の間で呼吸をするように結界魔法が使えるようになったのは、気のせいではないだろう。
「……初めて見たが、本当に無詠唱なのだなぁ」
何処からともなく……、ではなく。
堂々と隠し扉から、国王エナードが現れる。
「ごきげんよう、陛下」
私は淑女の礼を取って、紅茶の準備を始めた。
「……もう少し、驚いてくれても良くない?」
しかし、国王は私がまったく動揺しないことにご機嫌ななめな様子である。
「サァラ……、気がついてたね?」
「はい」
「えっ……、大分気配消すのに自信あったんだけど。よく内緒でお忍びしたりするしぃ」
なにやってんだ、この王は。
私が内心呆れていると、お兄様が答え合わせをする。
「サァラは結界を張るときに周りを探る……というか、周辺を確認する魔法を使うでしょ?」
「まあ、そこまで知っていらっしゃいましたの。正解ですわ、お兄様」
というか、口調が家にいるときに戻っているのだが。
つくづく、国王相手に失礼な親子である。
「へぇ、そんな魔法が……。サラちゃん、軍に入って……」
途端、お兄様から本日二度目の殺気が放たれた。
流石に凍らしはしないが、先程より本気度が高い。
「あはは、冗談冗談。そんなことしたら儂、エリックに殺されてしまうわ」
国王を殺す宰相って……。
国としてどうなのだろうか?
「そーれーよーりー、サラちゃん」
「はい」
「今回の主旨はご存知かな?」
「それは、王子二人の婚約者探しだとか……(私は関係ないけど)」
「そ、それ。でね、サラちゃんはそれの第一候補なんだけどーーー」
「ふぁっ!?」
驚きすぎて変なところから声が出た。
「……」
お兄様は苦々しい顔で黙っている。
ーーーそっか、うち、公爵家だもんね……。
お母様とお父様が恋愛結婚でいいよーと言うものだから完全に関係ないと思っていた。
しかも、父は宰相。
公爵家の中でも上の方に構える大御所である。
「おっ?何でかわからないけど、こっちの方が良い反応。んで、どう思う?」
ニタニタと面白そうに笑う国王を反面に私は困惑するばかりだ。
「どう、とは……。ええっと……、お断りしてもよろしいのでしょうか?」
「なんで?」
なんでって……、嫌だろ普通に!
だって、王族だぞ?!ただでさえ公爵家の令嬢なんていう自由の効かない身分なのに!
ましてや王太子妃にでもなってみろ、一生籠の中じゃん!
それじゃあ、剣も振れないよ!!!
とは、言えないので。
「さすがに、顔も知れぬ方とは……。いえ、私に貴族然としたものは足りないかと思われますし……。自分で言うのもあれですが、暴れっぽいので」
「ーーーっぷ……」
事情を知っているお兄様はプルプルと震えだした。
笑いたきゃ、笑えば良いんだよ?
あとで、どうなっても知らないけれど。
お母様仕込みのメンチを切りつつ、笑顔を保つという高等テクニックを使う場面である。
お兄様は雰囲気を察して、さっと通常モードに戻った。
「……暴れっぽい?」と、陛下はきょとんとなる。
まあ、令嬢の口から出るにはあまりにかけ離れた言葉ではあるわな。
もうちょっと、おしとやかな言葉使いを選べば良かったと後悔しても時すでに遅し。
陛下は笑いが止まらないようすで、ずっとゲラゲラと笑っている。
お兄様が「なんで、俺は駄目であいつが笑うのは良いんだよ」と文句言いたげな目線を送ってきたが、知らんぷりである。
私は次の言葉に困り、うーむと唸っていた。
「……お兄様、ここは何処でしょうか?」
「ん?待って、結界張るから……いや、頼んで良い?」
「分かりましたわ」
私は防御プラス防音の結界を張った。
短い学園生活の間で呼吸をするように結界魔法が使えるようになったのは、気のせいではないだろう。
「……初めて見たが、本当に無詠唱なのだなぁ」
何処からともなく……、ではなく。
堂々と隠し扉から、国王エナードが現れる。
「ごきげんよう、陛下」
私は淑女の礼を取って、紅茶の準備を始めた。
「……もう少し、驚いてくれても良くない?」
しかし、国王は私がまったく動揺しないことにご機嫌ななめな様子である。
「サァラ……、気がついてたね?」
「はい」
「えっ……、大分気配消すのに自信あったんだけど。よく内緒でお忍びしたりするしぃ」
なにやってんだ、この王は。
私が内心呆れていると、お兄様が答え合わせをする。
「サァラは結界を張るときに周りを探る……というか、周辺を確認する魔法を使うでしょ?」
「まあ、そこまで知っていらっしゃいましたの。正解ですわ、お兄様」
というか、口調が家にいるときに戻っているのだが。
つくづく、国王相手に失礼な親子である。
「へぇ、そんな魔法が……。サラちゃん、軍に入って……」
途端、お兄様から本日二度目の殺気が放たれた。
流石に凍らしはしないが、先程より本気度が高い。
「あはは、冗談冗談。そんなことしたら儂、エリックに殺されてしまうわ」
国王を殺す宰相って……。
国としてどうなのだろうか?
「そーれーよーりー、サラちゃん」
「はい」
「今回の主旨はご存知かな?」
「それは、王子二人の婚約者探しだとか……(私は関係ないけど)」
「そ、それ。でね、サラちゃんはそれの第一候補なんだけどーーー」
「ふぁっ!?」
驚きすぎて変なところから声が出た。
「……」
お兄様は苦々しい顔で黙っている。
ーーーそっか、うち、公爵家だもんね……。
お母様とお父様が恋愛結婚でいいよーと言うものだから完全に関係ないと思っていた。
しかも、父は宰相。
公爵家の中でも上の方に構える大御所である。
「おっ?何でかわからないけど、こっちの方が良い反応。んで、どう思う?」
ニタニタと面白そうに笑う国王を反面に私は困惑するばかりだ。
「どう、とは……。ええっと……、お断りしてもよろしいのでしょうか?」
「なんで?」
なんでって……、嫌だろ普通に!
だって、王族だぞ?!ただでさえ公爵家の令嬢なんていう自由の効かない身分なのに!
ましてや王太子妃にでもなってみろ、一生籠の中じゃん!
それじゃあ、剣も振れないよ!!!
とは、言えないので。
「さすがに、顔も知れぬ方とは……。いえ、私に貴族然としたものは足りないかと思われますし……。自分で言うのもあれですが、暴れっぽいので」
「ーーーっぷ……」
事情を知っているお兄様はプルプルと震えだした。
笑いたきゃ、笑えば良いんだよ?
あとで、どうなっても知らないけれど。
お母様仕込みのメンチを切りつつ、笑顔を保つという高等テクニックを使う場面である。
お兄様は雰囲気を察して、さっと通常モードに戻った。
「……暴れっぽい?」と、陛下はきょとんとなる。
まあ、令嬢の口から出るにはあまりにかけ離れた言葉ではあるわな。
もうちょっと、おしとやかな言葉使いを選べば良かったと後悔しても時すでに遅し。
陛下は笑いが止まらないようすで、ずっとゲラゲラと笑っている。
お兄様が「なんで、俺は駄目であいつが笑うのは良いんだよ」と文句言いたげな目線を送ってきたが、知らんぷりである。
私は次の言葉に困り、うーむと唸っていた。
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