優等生の美少女に弱みを握られた最恐ヤンキーが生徒会にカチコミ決めるんでそこんとこ夜露死苦ぅ!!

M・K

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1. ヤンキー君と優等生ちゃん

3. 校内一の不良

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 放課後を知らせるチャイムの音で颯空さくは目を覚ました。机にうつぶせになる形で寝ていたので体の節々が痛い。大きく伸びをしながらゆっくりと体を起こした。

「ふぁーぁ、よく寝たぜ」
「ひっ……!」
「あぁ?」

 颯空の近くの席にいる者達が揃って小さな悲鳴を上げる。どうしてそんな声を上げたのかわからず、訝しげな表情で周りの様子を窺った颯空であったが、誰もが自分から顔を背けるのを見てすぐに理由を理解した。どうやら彼らの苦手な猛獣が目を覚ましてしまったからのようだ。理由が分かったからといって、颯空の気分がよくなるわけもない。

「……気に入らねぇな、おい」

 ぼそりと呟いた不機嫌な颯空の声に反応し、周りの生徒がビクッと体を震わせる。そして、そのまま颯空の方には顔を向けず、鞄を持って逃げるように教室から出て行った。それを見た颯空の顔が苦々しいものに変わる。

「最高の席をゲットしていいスタートが切れたと思ったらこれだよ……胸糞わりぃ」

 颯空は体の中に溜まった不快感をため息とともに外へ出した。彼の席は窓際の一番後ろ。春のぽかぽか日光が窓から差し込み、昼寝をしていても誰かの陰になりやすいベストポジション。新学期が始まってから割と機嫌がよかった颯空だったが、今の一瞬で一気にテンションがガタ落ちした。

「こういう時は鬱陶うっとうしい奴らが減るまで、昼寝を決め込むに限るな」

 そう言うと、再び自分の腕を枕にして目を閉じる。がやがやと帰り支度で賑わう教室の音を子守唄にしながら、颯空はゆっくりと眠りに落ちていった。

「起きなさい! 久我山くがやま颯空!!」

 夢と現実の狭間にいたところで、唐突に名前を呼ばれた颯空は寝ぼけ眼をこすりながら気怠そうに顔を上げる。ぼやけた視界がはっきりしてくるにつれ、自分の机の前で腕を組んで立っている女子生徒の姿が見えてきた。

「……誰だお前?」
「誰って……わ、私の事を知らないっていうの!? 同じクラスだというのに!?」
「知らねぇよ。つーか、同じクラスになってまだ一週間ぐらいしか経ってねぇじゃねぇか。知らなくても別におかしくねぇだろ」
「ぐっ……!!」

 欠伸あくび交じりに正論を言われ、美琴は思わず口ごもる。確かに颯空の言う事は正しい。まだ高校二年生になって間もないこの時期に新しいクラスメートを全員把握するのは至難の業だ。だが、そういう問題ではない。他の大多数のクラスメートを知らなくても別に驚かないが、顔も見た事ないような生徒からも声をかけられるこのなぎさ美琴みことを知らないという事が彼女には信じられなかった。

 落ち着きなさい、美琴。相手は学園のはみ出し者。他の人達と同じと考えないほうがいいわ。

 自分は知っているのに相手は知らない、という初めての状況に若干のストレスを感じつつ、美琴はいつものように異性を魅了するような笑顔を颯空に向ける。

「これは失礼したわね。私の名前は渚美琴。あなたと同じD組で生徒会の役員よ」
「そっか。ご丁寧にどうも」

 そう適当に答えると、颯空はそそくさと自分の腕に顔を埋めた。笑顔のまま硬直した美琴。状況が全く呑み込めず、思考回路は完全に凍結した。

「えっ、ちょっと待って。全然意味が分からないんだけど。この私が話しかけているっていうのに、無視して寝ようとする人なんている?」

 こんな態度をとられた事は初めてだった。大抵の男子生徒は自分が話しかけると、顔を赤くして照れたり、嬉しそうな顔をしたりするものなのだ。少なくとも会話をしようという意思を見せる。だというのに目の前で机に突っ伏している男は何の迷いもなく自分を切り捨て睡眠を優先した。

「なにこれ、どういう事? ありえなくない?」
「…………」
「まさか本気で寝てるの? 私がいるのに?」
「…………」
「はっ! もしかして目と耳と頭がとても悪いのかしら? 眼鏡がないと何も見えないとか? そうよ、そうに決まってる! それなら納得だわ! じゃないとこの状況が説明できな」
「だーっ!! うるせぇ!!」

 バンッと激しい音を立てながら両手で机を叩き颯空が立ち上がる。その音にビクッと体を震わせた美琴は恐る恐る颯空の顔を見た。

「人が気持ちよく寝てるっていうのに目の前でぴーちくぱーちく言いやがって! 一体何なんだよ!?」
「ぴ、ぴーちくぱーちくぅ!?」
「その通りだろうが! 独り言が趣味ならだれもいない場所に行って一人でくっちゃべってろよ!!」

 あまりの言い草に美琴は目を大きくしながら口をあんぐりと開ける。そんな彼女を無視して教室の正面にある時計を見た颯空は不機嫌そうに机の横にかけている鞄を手に取った。そのまま教室から出ていこうとする颯空を我に返った美琴が慌てて呼び止める。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」
「はぁ……マジで何なんだよ」

 その場で立ち止まった颯空だったが美琴の方に振り返ろうとはしない。その態度にイラっとしつつも、美琴は必死に言葉を続ける。

「あなたに声をかけたのは他でもないわ! 生徒会役員として素行の悪いあなたを指導しに来たのよ!!」
「素行が悪い?」
「えぇ、そうよ! って、自覚がないっていうの!?」

 美琴は信じられないといった表情を浮かべた。数多の校則を破っておきながら本人は素行が悪いとは思っていない。もしかしたらこの男はバカなのではないだろうか。

「あんたねぇ……! うちの学校はシルバーアクセサリー禁止なの! ピアスも禁止! 制服を着崩して着るのも禁止なのよ!? その事わかってる!?」
「あーはいはい。それはこの前教頭センセにばっちり言われたわ」
「なっ……! 教頭先生に怒られたのに直してないの!?」
「いやー直そうと努力はしたんだけどなー? なかなか上手くいかなくてよー」

 全く悪びれずに颯空は言う。その口ぶりもさることながら、一切こちらを見ようとしない態度に美琴の怒りは募っていった。

「生徒会役員として命ずるわっ! ピアスもネックレスも指輪も全部外してきなさい!!」
「なんでだよ。俺がどんな恰好をしようがお前には関係ねぇだろ。別に迷惑かけてるわけでもねぇし」
「そういう問題じゃないわ! 決められたルールを守りなさいって言ってるの!!」
「守ってなんかいい事あんのか? それともピアスしてる罪で警察にでも突き出してみるか?」
「へ、減らず口を……!!」

 美琴の怒りのボルテージがどんどん上がっていく。ぷるぷると体を震わせながら、ビシッと颯空の事を指差した。

「あんたみたいのが学園の秩序を乱しているのよ! 清新学園の汚点だわっ!!」
「……あ?」
「決められたルールに従えないのであればこの学校に通う資格がないわ!! そもそもなんであんたみたいのがこの学校にいるのよ!? 分を弁えなさい!!」

 その瞬間、ピンっと空気が張り詰める。怒りに我を忘れて言いすぎた、と美琴が咄嗟に自分の口を押さえるがもう遅い。ゆっくりと振り返った颯空の瞳は絶対零度の冷気を放っていた。その瞬間、金縛りにあったかのように美琴の体は自由を奪われる。

「……言いたいことはそれだけか?」

 極寒の地を思わせる声で颯空は尋ねた。研ぎ澄まされた刀よりもさらに鋭利な視線に充てられ、美琴は思わず視線を泳がせる。気が付けば教室には自分達しかいなかった。声を出そうにも口がうまく動かない。
 嫌だ。怖い。逃げたい。叶うならば今すぐこの場から立ち去りたい。
 そんな思いが美琴の心を支配していく。だが、それとは別の感情も沸々と湧き上がっていた。

「……今のは言い過ぎたわ、ごめんなさい。でも、これではっきりしたわ」

 震える唇を懸命に動かし、美琴は言葉を紡ぐ。

「あなた、さっき迷惑はかけていないって言っていたわよね? じゃあ今この状況はどうかしら?」

 逃げ出したくなる凶器のような視線を、それでもまっすぐに見据えながら。

「私は今、あなたに威圧されて恐怖を感じてるわ。あなたにその気はないかもしれないけどね。私はそれに耐えることができるけど、気の弱い人ならどうかしら?」
「…………」
「確かに、耳にピアスをして、ジャラジャラアクセサリーをつけているだけかもしれない。けど、そういう見た目の人に恐れをなす人が確かにいるのよ。確かにファッションは自由だわ。でも、それはプライベートで楽しむものなの。様々な人が集まり、社会での生き方を学ぶこの場には似つかわしくないわ」

 言葉を違えれば颯空の逆鱗に触れてしまう。そんな恐怖と戦いながら美琴は自分の思いを真正面から颯空にぶつける。

「私は生徒会の一員。全ての生徒に寄り添う存在。だからこそ、今のあなたを看過することはできないのよ」

 美琴は一瞬たりとも颯空から目をそらさずに言い放った。生徒会の役員が力に屈することは許されない。その思いだけが今の美琴を奮い立たせていた。

「それに、このままじゃあなた一生独りぼっちよ? 私はそれが心配。……全ての生徒の中には当然あなたも入っているんだから」

 ほのかに温かさを含んだ美琴の言葉に、颯空は僅かに目を見開く。美琴自身も全く予期せぬ自分の言動に戸惑いを隠せずにいた。不良のこの男が心配? 生徒会である自分が? どうしてそんな事を言ったりしたのだろうか。

「……ちっ」

 しばらく無言で美琴の顔を見つめていた颯空だったが、舌打ちと共にその場で踵を返し、美琴に背を向けると、何も言わずに教室から出て行った。
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