51 / 118
魚人
しおりを挟む
朝になって目を覚ますと、携帯食とスープを摂りながら今日の方針を話し合う。
話し合うとは言っても、事前に決めていたルートの再確認だ。
今回の目的地は二階層の地底湖だ。
魚の身が手に入ったら、いつかの時の為に少し個人的に買い取らせてもらおう。
「そう言えば、前に僕が二階層に降りてきた時はもっと魔物が多かったと思うんだけど。なんで今はこんなに少なくなってるの?」
「そりゃ、番人がいるからだな」
「番人?」
「一階層にもいだだろ?」
「もしかしてサナムさん達のこと?」
ラングルはうんと頷いた。
「二階層にもレイド級の魔物が出る場所があるんけどな、そこを魔道具と魔法使いの力で抑えてるんだよ」
「そのおかげで~、普通の魔物の湧き率とか活性化が抑えられてる、ってこと~。ふうぅっ」
「うわあ」
「あっ、ニーシムさんまたっ」
ニーシムが後ろから抱きついてきて、僕の耳に息を吹き掛けてくる。ゾワゾワするから嫌なんだけど、これに対して僕の《危険感知》は仕事をしてくれないんだよね。もはや立派な攻撃だと思うんだけど。
ミントがニーシムを引き剥がしてくれて、ラングルがまたニーシムにげんこつを落とす。
「じゃあなんで一階層にも同じ事をしないのかな?」
「それは探索者が育たなくなるから、とか、素材が手に入らなくなるから、って言われとるねぇ」
「でも、その理屈で言ったら二階層の魔晶石も手に入りにくくなるんじゃ?」
「それはそうなんだけど、もう一つ理由があるらしいんだよ」
「そやね。今はそのレイドモンスターを倒せるパーティーがいないんよ」
「今は全員、三階層の降りてすぐのとこに出るレイド級のモンスター対策で手が離せないんだとさ」
あー、確かになんか前に聞いたような気がするね。三階層の攻略が始まらない理由は、凄く強い魔物がいるからだ、って。
「でもこれだと僕らのレベルはなかなか上げられないよね」
「かと言って俺らだけでレイドモンスターは倒せないしな」
「まあ、お強い人らが三階層の魔物を倒すの待ちやねぇ」
「なんか嫌ですね、そう言うの」
「おっ、言うねぇミントちゃん」
「私も気に入らないけどね~。けどレイドモンスターが湧く所を抑えるのってギルドの指示らしいからね~」
「ギルドからの指示なんだ……じゃあ、意味があること、なのかなぁ」
ギルマスやサブマスが決めたのなら、何かしら意味があるんだろうな、となんとなく納得してしまった。僕はいつの間にかギルマスに対して結構信頼感を持っていたらしい。
「来る、よ。魔物」
「お、もう少しで湖だってのに。まあ、しっかり経験値を稼いでおこうかね」
「はい」
「俺は《火弾》でもええ?」
「敵の数による」
通路の奥から出てきたのは、魚顔の人型の魔物だった。僕は初めて見たけど、その名前だけは知っていた。
「魚人だ!」
「三匹!」
「うげ~。私は治療に専念しま~す」
「俺も前に出なしゃーないな」
水属性の魔物には火属性の魔法は通じにくい。もちろん同属性の魔法も効きにくい。
「火と水が二人ずつなんは嵌まれば凄いんやけど、水系にはきっついな」
「いや、前が三人いるんだから比較的楽勝だろ!?」
「がんばりますっ!」
ラングルが言ったように、魚人と一対一になる事で後衛に被害がいかなかったし、僕は自分が担当した魚人を、通常装備の二刀流で危なげなく倒す事ができた。
魚人は三叉槍を持ってたし、槍を振る速度自体は速かったけど、動きが遅かったから結構余裕で躱してとどめを刺せた。
ラングルも盾できっちりと攻撃を受け止めながら剣でとどめを刺してたし、スルフも少し時間がかかったものの担当分を《寸勁》で殴り飛ばし、フォレストが短剣でとどめを刺していた。フォレストはこうやって時々とどめを刺す。そしてスルフはその度に悔しがる。
そのやり取りは見ていて面白いんだけど、たまに本気で怒ってるというか、苛ついてる時があるように見えてちょっと気になってる。
「ふぅ、やっぱり前が一人増えると楽になるな」
「……せやね」
「な~に~? 今の間は」
「なんでもあらへんよ。いや、ほんまに楽になった思ってな」
「でもタンクがいたらもっといいかな、って思うけど」
「まあ、それらしい事は俺がやるよ」
僕のタンク発言にラングルがそう答えて、カンカンと剣で盾を軽く叩いた。
スキルばかりが全てじゃないとは思うけど、ずっとスキルを手に入れられなかった僕だから分かってる事がある。
それはスキルの力は強大だって事だ。
《鉄壁》《反射》《重装備》を持ってるのと持ってないのとでは、敵の攻撃を耐え続けるのに大きな差が絶対に出る。
どんなに技術があって、どんなに鍛えたとしても、スキルを使う事によって発揮される能力を超える事は難しいと思う。
それはスルフの《拳闘士》の《寸勁》もそうだし、ラングルの《剣士》の《剣速上昇》もそうだ。魔法と同じで、持ってる人しか使う事ができない特別な力なんだ。
だから、タンク役に適したスキルを持ってる仲間を入れる、と言うのは大事な事だと思うんだけど。
あ、そうだった。後から入った新人がパーティーの構成について何か言うのは止めておこうと思ってたんだっけ。
失敗した。つい言ってしまった。
このパーティーにいつまでいるか分からないのに、引っ掻き回したら駄目だよね。
話し合うとは言っても、事前に決めていたルートの再確認だ。
今回の目的地は二階層の地底湖だ。
魚の身が手に入ったら、いつかの時の為に少し個人的に買い取らせてもらおう。
「そう言えば、前に僕が二階層に降りてきた時はもっと魔物が多かったと思うんだけど。なんで今はこんなに少なくなってるの?」
「そりゃ、番人がいるからだな」
「番人?」
「一階層にもいだだろ?」
「もしかしてサナムさん達のこと?」
ラングルはうんと頷いた。
「二階層にもレイド級の魔物が出る場所があるんけどな、そこを魔道具と魔法使いの力で抑えてるんだよ」
「そのおかげで~、普通の魔物の湧き率とか活性化が抑えられてる、ってこと~。ふうぅっ」
「うわあ」
「あっ、ニーシムさんまたっ」
ニーシムが後ろから抱きついてきて、僕の耳に息を吹き掛けてくる。ゾワゾワするから嫌なんだけど、これに対して僕の《危険感知》は仕事をしてくれないんだよね。もはや立派な攻撃だと思うんだけど。
ミントがニーシムを引き剥がしてくれて、ラングルがまたニーシムにげんこつを落とす。
「じゃあなんで一階層にも同じ事をしないのかな?」
「それは探索者が育たなくなるから、とか、素材が手に入らなくなるから、って言われとるねぇ」
「でも、その理屈で言ったら二階層の魔晶石も手に入りにくくなるんじゃ?」
「それはそうなんだけど、もう一つ理由があるらしいんだよ」
「そやね。今はそのレイドモンスターを倒せるパーティーがいないんよ」
「今は全員、三階層の降りてすぐのとこに出るレイド級のモンスター対策で手が離せないんだとさ」
あー、確かになんか前に聞いたような気がするね。三階層の攻略が始まらない理由は、凄く強い魔物がいるからだ、って。
「でもこれだと僕らのレベルはなかなか上げられないよね」
「かと言って俺らだけでレイドモンスターは倒せないしな」
「まあ、お強い人らが三階層の魔物を倒すの待ちやねぇ」
「なんか嫌ですね、そう言うの」
「おっ、言うねぇミントちゃん」
「私も気に入らないけどね~。けどレイドモンスターが湧く所を抑えるのってギルドの指示らしいからね~」
「ギルドからの指示なんだ……じゃあ、意味があること、なのかなぁ」
ギルマスやサブマスが決めたのなら、何かしら意味があるんだろうな、となんとなく納得してしまった。僕はいつの間にかギルマスに対して結構信頼感を持っていたらしい。
「来る、よ。魔物」
「お、もう少しで湖だってのに。まあ、しっかり経験値を稼いでおこうかね」
「はい」
「俺は《火弾》でもええ?」
「敵の数による」
通路の奥から出てきたのは、魚顔の人型の魔物だった。僕は初めて見たけど、その名前だけは知っていた。
「魚人だ!」
「三匹!」
「うげ~。私は治療に専念しま~す」
「俺も前に出なしゃーないな」
水属性の魔物には火属性の魔法は通じにくい。もちろん同属性の魔法も効きにくい。
「火と水が二人ずつなんは嵌まれば凄いんやけど、水系にはきっついな」
「いや、前が三人いるんだから比較的楽勝だろ!?」
「がんばりますっ!」
ラングルが言ったように、魚人と一対一になる事で後衛に被害がいかなかったし、僕は自分が担当した魚人を、通常装備の二刀流で危なげなく倒す事ができた。
魚人は三叉槍を持ってたし、槍を振る速度自体は速かったけど、動きが遅かったから結構余裕で躱してとどめを刺せた。
ラングルも盾できっちりと攻撃を受け止めながら剣でとどめを刺してたし、スルフも少し時間がかかったものの担当分を《寸勁》で殴り飛ばし、フォレストが短剣でとどめを刺していた。フォレストはこうやって時々とどめを刺す。そしてスルフはその度に悔しがる。
そのやり取りは見ていて面白いんだけど、たまに本気で怒ってるというか、苛ついてる時があるように見えてちょっと気になってる。
「ふぅ、やっぱり前が一人増えると楽になるな」
「……せやね」
「な~に~? 今の間は」
「なんでもあらへんよ。いや、ほんまに楽になった思ってな」
「でもタンクがいたらもっといいかな、って思うけど」
「まあ、それらしい事は俺がやるよ」
僕のタンク発言にラングルがそう答えて、カンカンと剣で盾を軽く叩いた。
スキルばかりが全てじゃないとは思うけど、ずっとスキルを手に入れられなかった僕だから分かってる事がある。
それはスキルの力は強大だって事だ。
《鉄壁》《反射》《重装備》を持ってるのと持ってないのとでは、敵の攻撃を耐え続けるのに大きな差が絶対に出る。
どんなに技術があって、どんなに鍛えたとしても、スキルを使う事によって発揮される能力を超える事は難しいと思う。
それはスルフの《拳闘士》の《寸勁》もそうだし、ラングルの《剣士》の《剣速上昇》もそうだ。魔法と同じで、持ってる人しか使う事ができない特別な力なんだ。
だから、タンク役に適したスキルを持ってる仲間を入れる、と言うのは大事な事だと思うんだけど。
あ、そうだった。後から入った新人がパーティーの構成について何か言うのは止めておこうと思ってたんだっけ。
失敗した。つい言ってしまった。
このパーティーにいつまでいるか分からないのに、引っ掻き回したら駄目だよね。
0
あなたにおすすめの小説
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
道化たちの末路
希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる