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1.出会い
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「早く着いてしまった…」
時計は18時半を指している。気が急いでいたのか、随分早くに着いてしまった。予定の時間までどうしようか、そんなことを考えていた矢先のことだった。
「あっ!」
体がよろける。考え事をしていたせいか、つまずいてしまった。しかし、気がついた時にはどうすることも出来ず、前を歩いていた人へと吸い込まれていく。
「す、すいません!!」
目の前を歩いていた人は楽曲ケースを背負っており、それにぶつかってしまった。振り向いた相手は20代後半くらいで黒髪のくせ毛、優しそうな顔をした男性だった。
「僕は大丈夫だよ。ゲガはない?」
「は、はい。大丈夫です!本当にすいません!!あの、その、楽器は大丈夫でしょうか…」
パッと見で質の良さそうなケースだとわかる。楽器は高価なものも多い、壊してしまっていたらどうしようかという不安が過る。
「ああ、楽器なら心配しなくていいよ?怪我がなかったなら良かった。それじゃ。」
そう言って歩き出す相手に会釈をする。
「痛ッ…。」
どうやら、変な足の付き方をして捻ってしまったようだ。
歩き出した楽器の彼が振り返り、心配そうにこちらを見る。
「大丈夫?じゃなさそうだね。どこが痛いの?」
「あの。大丈夫です。ご迷惑を…」
「いいよ、時間もあるし、足が痛むの?そこのファミレスまで歩ける?冷やした方がいい。」
どうやら、相手に左足を庇った動きから悟られてしまったようだった。
彼はゆっくりと歩いて僕のペースに会わせてくれた。申し訳なさで何も言えないでいると、店にはすぐに着き、席まで案内されてしまった。楽器の彼は店員に言って氷の入った袋を持ってきてくれた。足は冷やしていると少しずつ痛みが引いていく。
「僕はお腹すいたから、なにか食べようと思うけど、君もどう?」
「えっと、すきました…。」
「それなら、一緒に食べよう。」
その後、ご飯を食べながら何気ない会話をした。どうやら、この親切な人は八重坂さんという人で、普段は家でPCを使って仕事をしていているらしい。今日はちょっとしたショーの予定があるため、出てきていたそうだ。
話していると楽しく、時間はあっという間に過ぎていった。ファミレスに着いたときは18時40分頃だったのに、既に一時間近くが経過していた。
八重坂さんは時計を確認すると話を切り上げる。
「さて、そろそろ行かなきゃいけないから、東雲くんはゆっくりしていってね。」
「何から何までありがとうございました。」
そう言うと微笑んで八重坂さんは伝票を持っていってしまう。
「あの!ご迷惑をお掛けしたのでお会計はっ」
「気にしなくていいよ。学生に奢ってもらうほど困ってないから安心して。」
「すいません。ありがとうございます。」
彼は手を振り、店から出ていった。
この頃になると、足の痛みも随分と良くなった。思いの外楽しい時間を過ごしたと東雲は一人笑みをこぼす。20分ほどのんびりすると、東雲も席を立った。
もちろん、バーへ向かうためにだ。
時計は18時半を指している。気が急いでいたのか、随分早くに着いてしまった。予定の時間までどうしようか、そんなことを考えていた矢先のことだった。
「あっ!」
体がよろける。考え事をしていたせいか、つまずいてしまった。しかし、気がついた時にはどうすることも出来ず、前を歩いていた人へと吸い込まれていく。
「す、すいません!!」
目の前を歩いていた人は楽曲ケースを背負っており、それにぶつかってしまった。振り向いた相手は20代後半くらいで黒髪のくせ毛、優しそうな顔をした男性だった。
「僕は大丈夫だよ。ゲガはない?」
「は、はい。大丈夫です!本当にすいません!!あの、その、楽器は大丈夫でしょうか…」
パッと見で質の良さそうなケースだとわかる。楽器は高価なものも多い、壊してしまっていたらどうしようかという不安が過る。
「ああ、楽器なら心配しなくていいよ?怪我がなかったなら良かった。それじゃ。」
そう言って歩き出す相手に会釈をする。
「痛ッ…。」
どうやら、変な足の付き方をして捻ってしまったようだ。
歩き出した楽器の彼が振り返り、心配そうにこちらを見る。
「大丈夫?じゃなさそうだね。どこが痛いの?」
「あの。大丈夫です。ご迷惑を…」
「いいよ、時間もあるし、足が痛むの?そこのファミレスまで歩ける?冷やした方がいい。」
どうやら、相手に左足を庇った動きから悟られてしまったようだった。
彼はゆっくりと歩いて僕のペースに会わせてくれた。申し訳なさで何も言えないでいると、店にはすぐに着き、席まで案内されてしまった。楽器の彼は店員に言って氷の入った袋を持ってきてくれた。足は冷やしていると少しずつ痛みが引いていく。
「僕はお腹すいたから、なにか食べようと思うけど、君もどう?」
「えっと、すきました…。」
「それなら、一緒に食べよう。」
その後、ご飯を食べながら何気ない会話をした。どうやら、この親切な人は八重坂さんという人で、普段は家でPCを使って仕事をしていているらしい。今日はちょっとしたショーの予定があるため、出てきていたそうだ。
話していると楽しく、時間はあっという間に過ぎていった。ファミレスに着いたときは18時40分頃だったのに、既に一時間近くが経過していた。
八重坂さんは時計を確認すると話を切り上げる。
「さて、そろそろ行かなきゃいけないから、東雲くんはゆっくりしていってね。」
「何から何までありがとうございました。」
そう言うと微笑んで八重坂さんは伝票を持っていってしまう。
「あの!ご迷惑をお掛けしたのでお会計はっ」
「気にしなくていいよ。学生に奢ってもらうほど困ってないから安心して。」
「すいません。ありがとうございます。」
彼は手を振り、店から出ていった。
この頃になると、足の痛みも随分と良くなった。思いの外楽しい時間を過ごしたと東雲は一人笑みをこぼす。20分ほどのんびりすると、東雲も席を立った。
もちろん、バーへ向かうためにだ。
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