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聖女の肖像
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ゴアドア王はラルフを連れて、長い廊下をスタスタと歩いて行く。護衛は付けない。ラルフに勝る護衛などいないからだ。
突き当りの昇降機で城の地下へ降りた。
昇降機の扉が開くと、正面に地下道への門が見える。鎧をまとった屈強な門番が二人、鋼鉄で塞がれた入り口を左右から守っていた。
冥府のように暗く、静かな場所。ゴアドア城において、ラルフが初めて足を踏み入れる空間だった。
「ここは、私の知る地下ではない……」
「地下の地下といったところだ。城の最深部に、これから案内をする」
王は燭台を手に、ラルフの先を歩き出した。
門の前に立つと手の平を鋼鉄の扉にピタリとつけて、軽く押した。すると、重々しい音を響かせ扉が開き始める。
二人の門番は、固唾を呑んでそれを見守る。力自慢の彼らでさえ、押しても引いてもびくともしない重厚な扉が、老王のひと押しで素直に開いたのだ。
扉が完全に開くのを待って、王はラルフを手招きした。
「さあ、行こうか」
中に入ると、そこには板状の石が敷き詰めてあり、歩くには楽であった。
「太古の火山活動によって形成された板状節理を利用したのだ。1000年もの昔に、我が国ではこれほど滑らかに加工する技術が発達していた」
ラルフの眉がぴくりと動く。
「建国当初に造られたというのか。この通路は」
「これからお前を案内する部屋も……な」
ゴアドア国の何もかもを、私は知り尽くしている。今の今まで、そう信じていた。それなのに、これほどの規模の空間を秘密にされていたとは。
ラルフは心で自分を嗤った。
しばらく行くと通路は途切れ、真っ黒な壁に突き当たる。
王は燭台を掲げ、入り口の門よりも大きく重厚な扉を照らし出した。
「どうだ、立派なものだろう。この部屋には、歴代の王誰一人として足を踏み入れていない。初代王の他にはな……」
王は先ほどのように、手の平を分厚い鋼鉄の扉に当てた。顔面に汗を滲ませている。
「ラルフ。お前の問いに対する答えがここにある。初代王は我々に、その遺言を預けたのだ。だが、初代王がこの中に何を遺したのか、それは伝わっていない」
「……」
王はゆっくりと、扉を押す。
風が感じられた。ラルフの頬を優しく撫でるような、柔らかな風が吹き抜けていく。
「おお……」
遠い遠い、遥か昔の記憶。懐かしい風に吹かれ、何もかも鮮やかに思い出せる気がした。
突き当りの昇降機で城の地下へ降りた。
昇降機の扉が開くと、正面に地下道への門が見える。鎧をまとった屈強な門番が二人、鋼鉄で塞がれた入り口を左右から守っていた。
冥府のように暗く、静かな場所。ゴアドア城において、ラルフが初めて足を踏み入れる空間だった。
「ここは、私の知る地下ではない……」
「地下の地下といったところだ。城の最深部に、これから案内をする」
王は燭台を手に、ラルフの先を歩き出した。
門の前に立つと手の平を鋼鉄の扉にピタリとつけて、軽く押した。すると、重々しい音を響かせ扉が開き始める。
二人の門番は、固唾を呑んでそれを見守る。力自慢の彼らでさえ、押しても引いてもびくともしない重厚な扉が、老王のひと押しで素直に開いたのだ。
扉が完全に開くのを待って、王はラルフを手招きした。
「さあ、行こうか」
中に入ると、そこには板状の石が敷き詰めてあり、歩くには楽であった。
「太古の火山活動によって形成された板状節理を利用したのだ。1000年もの昔に、我が国ではこれほど滑らかに加工する技術が発達していた」
ラルフの眉がぴくりと動く。
「建国当初に造られたというのか。この通路は」
「これからお前を案内する部屋も……な」
ゴアドア国の何もかもを、私は知り尽くしている。今の今まで、そう信じていた。それなのに、これほどの規模の空間を秘密にされていたとは。
ラルフは心で自分を嗤った。
しばらく行くと通路は途切れ、真っ黒な壁に突き当たる。
王は燭台を掲げ、入り口の門よりも大きく重厚な扉を照らし出した。
「どうだ、立派なものだろう。この部屋には、歴代の王誰一人として足を踏み入れていない。初代王の他にはな……」
王は先ほどのように、手の平を分厚い鋼鉄の扉に当てた。顔面に汗を滲ませている。
「ラルフ。お前の問いに対する答えがここにある。初代王は我々に、その遺言を預けたのだ。だが、初代王がこの中に何を遺したのか、それは伝わっていない」
「……」
王はゆっくりと、扉を押す。
風が感じられた。ラルフの頬を優しく撫でるような、柔らかな風が吹き抜けていく。
「おお……」
遠い遠い、遥か昔の記憶。懐かしい風に吹かれ、何もかも鮮やかに思い出せる気がした。
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