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体育祭賭博 プレセア暦三〇四八年 ローゼンタール王都学院
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意図的に気配を消しているわけではないが、存在感が薄いといろいろ余計な話が耳に入ってくることがある。
仕官科の教室で食事のあとの午睡からロアルドは目が覚めつつあった。その時聞こえたのが「オッズ」という言葉だった。
耳を傾けていたわけでもないのに男子生徒たちの声が聞こえてきた。
「優勝候補は……」
「ベットはここに……」
どうも体育祭の優勝チームを当てる賭けが行われているらしい。
もちろん学院内では賭け事は禁止であったが、裕福な貴族たちはこの手の遊びを楽しんでいるようで、平民や下級貴族の多い仕官科一年生にもそれが波及してきたようだった。
ロアルドが机から頭を起こすと彼らはロアルドにも声をかけた。
「ロアルド、君もやってみないか?」
参加者を元締めに紹介すると何らかの特典があるようだ。
「僕はおこづかいも少ないし」
「銅貨一枚からでもベットできるよ」
「じゃあ少しだけ」
流されるようにロアルドは加わることになった。
ロアルドは一枚の札を渡された。これが参加証だという。何の変哲もない木札なのだが、契約を交わした者にだけ文字が見える仕掛けが魔法によって施されていた。
このような魔法を扱える者がいるのか。その術式はどのようなものなのだろうとロアルドの興味は尽きなかった。
元締めは「ティガ」と名乗っていた。参加証には学院内に設置されたベットポイントの位置が示されていた。そこへ行き参加証をベットポイントに示した上で、ベットする硬貨をベットポイントに入れると完了するらしい。
複数で行くと目につくのでロアルドは一人でベットポイントへ行ってみた。
学院内中庭の一角、そこには植樹された低木しか見当たらない。しかし参加証を取り出して前にかざすと、植木の一つが浮き上がるように色が変わり、手が入る程度の口が開いた。そこに金を入れろということらしい。
なるほどと思ったロアルドは、銅貨一枚だけその穴に放り込んだ。
穴はふさがり植木の色はもとに戻った。こうしたポイントがいたるところに頻繁に位置を変えながら存在しているようだった。
さて賭け方だが、五十あるチーム一つ一つにベットするやり方ではなかった。五チームあるグループが十グループできていて、そのどれかに賭ける方式だ。
現在最もオッズの低い、言い換えれば最も人気のあるグループはマチルダのチームが入っているグループだった。
そのグループに入っている他のチームはおそらく弱いのだろう。同じグループに一位、二位、三位が入るとそれだけリファンドが多くなる。賭ける者も多くなり、オッズが下がり賭けが成立しない可能性が高いために抱き合わせのように弱いチームを組み合わせて一つのグループにしているようだ。
ロアルドは冷やかしだったので、自分のチームが入っているグループに銅貨一枚ベットしただけだ。そのグループは不人気でオッズは高かった。
勝てばお小遣いが増える? ロアルドは一瞬心を動かされた。
そんなことがあった日の最後の授業が終わった時、ロアルドは生徒会長から呼び出しを受けた。生徒会長マチルダがロアルドの姉であることを知る者は少ない。
まわりが皆、何をしたんだ?という顔をする。
ロアルドに賭けを勧めた生徒が寄ってきて目配せをした。賭けのことは喋るなということだ。
ロアルドは頷いた。
仕官科の教室で食事のあとの午睡からロアルドは目が覚めつつあった。その時聞こえたのが「オッズ」という言葉だった。
耳を傾けていたわけでもないのに男子生徒たちの声が聞こえてきた。
「優勝候補は……」
「ベットはここに……」
どうも体育祭の優勝チームを当てる賭けが行われているらしい。
もちろん学院内では賭け事は禁止であったが、裕福な貴族たちはこの手の遊びを楽しんでいるようで、平民や下級貴族の多い仕官科一年生にもそれが波及してきたようだった。
ロアルドが机から頭を起こすと彼らはロアルドにも声をかけた。
「ロアルド、君もやってみないか?」
参加者を元締めに紹介すると何らかの特典があるようだ。
「僕はおこづかいも少ないし」
「銅貨一枚からでもベットできるよ」
「じゃあ少しだけ」
流されるようにロアルドは加わることになった。
ロアルドは一枚の札を渡された。これが参加証だという。何の変哲もない木札なのだが、契約を交わした者にだけ文字が見える仕掛けが魔法によって施されていた。
このような魔法を扱える者がいるのか。その術式はどのようなものなのだろうとロアルドの興味は尽きなかった。
元締めは「ティガ」と名乗っていた。参加証には学院内に設置されたベットポイントの位置が示されていた。そこへ行き参加証をベットポイントに示した上で、ベットする硬貨をベットポイントに入れると完了するらしい。
複数で行くと目につくのでロアルドは一人でベットポイントへ行ってみた。
学院内中庭の一角、そこには植樹された低木しか見当たらない。しかし参加証を取り出して前にかざすと、植木の一つが浮き上がるように色が変わり、手が入る程度の口が開いた。そこに金を入れろということらしい。
なるほどと思ったロアルドは、銅貨一枚だけその穴に放り込んだ。
穴はふさがり植木の色はもとに戻った。こうしたポイントがいたるところに頻繁に位置を変えながら存在しているようだった。
さて賭け方だが、五十あるチーム一つ一つにベットするやり方ではなかった。五チームあるグループが十グループできていて、そのどれかに賭ける方式だ。
現在最もオッズの低い、言い換えれば最も人気のあるグループはマチルダのチームが入っているグループだった。
そのグループに入っている他のチームはおそらく弱いのだろう。同じグループに一位、二位、三位が入るとそれだけリファンドが多くなる。賭ける者も多くなり、オッズが下がり賭けが成立しない可能性が高いために抱き合わせのように弱いチームを組み合わせて一つのグループにしているようだ。
ロアルドは冷やかしだったので、自分のチームが入っているグループに銅貨一枚ベットしただけだ。そのグループは不人気でオッズは高かった。
勝てばお小遣いが増える? ロアルドは一瞬心を動かされた。
そんなことがあった日の最後の授業が終わった時、ロアルドは生徒会長から呼び出しを受けた。生徒会長マチルダがロアルドの姉であることを知る者は少ない。
まわりが皆、何をしたんだ?という顔をする。
ロアルドに賭けを勧めた生徒が寄ってきて目配せをした。賭けのことは喋るなということだ。
ロアルドは頷いた。
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