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マチルダとアルベルチーヌが参戦する プレセア暦三〇四八年 ローゼンタール王都学院
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マルセルとアーサーがその後も敵ジャマーに抜かれず、コースアウトもせずに制限時間を迎えたため相手チームの得点は二点で終わった。
攻守が交代した。ロアルドのチームに攻撃権が移り、ジャマーであるオスカーがトラックに入った。
相手ジャマーは退出。攻撃権は二回ずつ与えられる。同点なら延長される。なお、決勝戦は攻撃権が三回ずつになっていた。
そしてこの準決勝、相手は守備陣に変更を加えた。
ロアルドのチームは五人ギリギリだったが、マチルダのチームは編成に余裕があるようだ。騎士科の二人が退いて、マチルダとアルベルチーヌが入った。
ブロッカーとして女子が二人入ったことになる。マチルダは五年生だがアルベルチーヌは神学科の一年生なのだ。観衆がどよめいていた。
もともとアルベルチーヌは空中競飛行などの個人種目でことごとく一位をとり、総合個人成績でも上位十傑に入っていた。六百人中の十傑だ。
一年生で十傑に入っているのはアーサーとアルベルチーヌの二人だけだ。
オスカーはところどころ手を抜いているのかマルセルとともに五十位あたりにいた。ちなみにロアルドは下から数えた方がはやかった。
個人成績は半分がチームのポイントなので、どのチームにいるかでかなり左右されるから一概に個人の能力を示すものではない。しかしやはり十位以内は個人の能力が優秀だと言わざるを得ない。
なお現時点で個人成績一位はジェシカ、二位がフランツ、三位マチルダとなっていた。
五十あるチームは均等になるように決められたはずだが、マチルダのチームにもジェシカのチームにも十位以内が二人もいて、それがそのままオーバーテイカーのベスト4になる要因になっていた。
いや、ベスト4に入ったからチームポイントが多く得られ、個人のポイントも増えて十傑にいるのだとマチルダなら言いそうだ。あくまでも狙ってチームを組んだわけではないとマチルダは言うだろう。あるいはマチルダのことだから留学生のアルベルチーヌを監視する目的で特待生の彼女を自分のチームに入れたと言うかもしれない。
ロアルドのチーム五人、マチルダのチーム四人がトラック内で助飛行を始めた。
オスカーが最後尾についたと審判が判断すればスタートだ。
マチルダのチーム四人のうち騎士科の二人がアーサーにぴったりとついた。そしてマチルダとアルベルチーヌがオスカーを意識する位置にいた。
ロアルドのチームのうち残り三人すなわちロアルド、マルセル、騎士科上級生の三人は完全に無視のようだ。それも妥当な作戦だとロアルドも思う。
オスカーが最後尾についた。審判が開始を宣言した。
オスカーが助飛行して追い抜いていく。再び最後尾についてからが得点の対象となる。
そしてオスカーが最後尾についた。その前をマチルダとアルベルチーヌがふさいだ。
全体的に遅いペースになっていた。マチルダのチームは逃げ切り役をおかずにブロックに専念するようだ。
そのためにマルセル、騎士科上級生、ロアルドの三人はフリーのまま先に進んでしまい、気がついたらオスカーの後ろにまで到達していた。
オスカーの前にマチルダとアルベルチーヌ。その前を敵チームの騎士科二人、先頭がアーサーになっていた。その順列で団子状態になっていたのだ。
しかもスローペース。時間だけが過ぎていく。
さすがのオスカーもマチルダとアルベルチーヌの二人に手こずっているようだった。
持っている魔法のバリエーションを考えるならオスカーはマチルダに引けをとらない。むしろ勝っているのだが、そこにアルベルチーヌが加わっていては打つ手もない。
アルベルチーヌは身体強化魔法と推進用のエアロしか使っていなかった。マルセルと一緒にいる時にズラリと用意している強烈な攻撃系魔法は封印しているようだった。
なぜかアルベルチーヌがロアルドとマルセルにも時折視線を送ってくる。
マルセルを警戒するのはわかるがなぜ自分も?とロアルドは不思議に思った。
このままでは埒があかないと思ったアーサーが動いた。猛スピードで先を行き、最後尾についた。
慌てて敵の騎士科上級生二人がアーサーを追ってくる。
彼らが追いつくより先にアーサーはステッキを脚で挟んで手を離し、マルセルと騎士科上級生の手をつかんで、そのまま前へと突進した。
オスカーがそれをかわす。
アーサーの標的はマチルダとアルベルチーヌだった。
いつの間にかマチルダとアルベルチーヌが先頭になっていた。この二人にアーサーは味方二人を両手につかんで体当たりを食らわそうとしていた。
「来たわね」マチルダが不敵に笑った。
次の瞬間、マチルダとアルベルチーヌのステッキ末尾から高火力のエアロが噴出した。それがアーサーと騎士科上級生の顔面に当たった。
この競技では魔法で直接相手を攻撃してはならない。しかしこれは加速行為の結果なのだ。エアロの噴出先にたまたま相手の顔がそこにあったのだ。
「相変わらずエグいことをする」一人だけ難を逃れたマルセルが呟いた。
それはおそらくアルベルチーヌのことを言ったのだろう。マルセルとマチルダには面識はなかったはずだ。
しかし似たようなことをロアルドも思った。このやり方はマチルダのやり方なのだ。本当にエグいことをする。エアロを顔に受けた騎士科上級生は後ろへ離された。
アーサーは平気だ。マルセルの手を掴んだまま突進した。三人よりもこの二人の方が身軽でスピードが速いと言っているかのようだった。
攻守が交代した。ロアルドのチームに攻撃権が移り、ジャマーであるオスカーがトラックに入った。
相手ジャマーは退出。攻撃権は二回ずつ与えられる。同点なら延長される。なお、決勝戦は攻撃権が三回ずつになっていた。
そしてこの準決勝、相手は守備陣に変更を加えた。
ロアルドのチームは五人ギリギリだったが、マチルダのチームは編成に余裕があるようだ。騎士科の二人が退いて、マチルダとアルベルチーヌが入った。
ブロッカーとして女子が二人入ったことになる。マチルダは五年生だがアルベルチーヌは神学科の一年生なのだ。観衆がどよめいていた。
もともとアルベルチーヌは空中競飛行などの個人種目でことごとく一位をとり、総合個人成績でも上位十傑に入っていた。六百人中の十傑だ。
一年生で十傑に入っているのはアーサーとアルベルチーヌの二人だけだ。
オスカーはところどころ手を抜いているのかマルセルとともに五十位あたりにいた。ちなみにロアルドは下から数えた方がはやかった。
個人成績は半分がチームのポイントなので、どのチームにいるかでかなり左右されるから一概に個人の能力を示すものではない。しかしやはり十位以内は個人の能力が優秀だと言わざるを得ない。
なお現時点で個人成績一位はジェシカ、二位がフランツ、三位マチルダとなっていた。
五十あるチームは均等になるように決められたはずだが、マチルダのチームにもジェシカのチームにも十位以内が二人もいて、それがそのままオーバーテイカーのベスト4になる要因になっていた。
いや、ベスト4に入ったからチームポイントが多く得られ、個人のポイントも増えて十傑にいるのだとマチルダなら言いそうだ。あくまでも狙ってチームを組んだわけではないとマチルダは言うだろう。あるいはマチルダのことだから留学生のアルベルチーヌを監視する目的で特待生の彼女を自分のチームに入れたと言うかもしれない。
ロアルドのチーム五人、マチルダのチーム四人がトラック内で助飛行を始めた。
オスカーが最後尾についたと審判が判断すればスタートだ。
マチルダのチーム四人のうち騎士科の二人がアーサーにぴったりとついた。そしてマチルダとアルベルチーヌがオスカーを意識する位置にいた。
ロアルドのチームのうち残り三人すなわちロアルド、マルセル、騎士科上級生の三人は完全に無視のようだ。それも妥当な作戦だとロアルドも思う。
オスカーが最後尾についた。審判が開始を宣言した。
オスカーが助飛行して追い抜いていく。再び最後尾についてからが得点の対象となる。
そしてオスカーが最後尾についた。その前をマチルダとアルベルチーヌがふさいだ。
全体的に遅いペースになっていた。マチルダのチームは逃げ切り役をおかずにブロックに専念するようだ。
そのためにマルセル、騎士科上級生、ロアルドの三人はフリーのまま先に進んでしまい、気がついたらオスカーの後ろにまで到達していた。
オスカーの前にマチルダとアルベルチーヌ。その前を敵チームの騎士科二人、先頭がアーサーになっていた。その順列で団子状態になっていたのだ。
しかもスローペース。時間だけが過ぎていく。
さすがのオスカーもマチルダとアルベルチーヌの二人に手こずっているようだった。
持っている魔法のバリエーションを考えるならオスカーはマチルダに引けをとらない。むしろ勝っているのだが、そこにアルベルチーヌが加わっていては打つ手もない。
アルベルチーヌは身体強化魔法と推進用のエアロしか使っていなかった。マルセルと一緒にいる時にズラリと用意している強烈な攻撃系魔法は封印しているようだった。
なぜかアルベルチーヌがロアルドとマルセルにも時折視線を送ってくる。
マルセルを警戒するのはわかるがなぜ自分も?とロアルドは不思議に思った。
このままでは埒があかないと思ったアーサーが動いた。猛スピードで先を行き、最後尾についた。
慌てて敵の騎士科上級生二人がアーサーを追ってくる。
彼らが追いつくより先にアーサーはステッキを脚で挟んで手を離し、マルセルと騎士科上級生の手をつかんで、そのまま前へと突進した。
オスカーがそれをかわす。
アーサーの標的はマチルダとアルベルチーヌだった。
いつの間にかマチルダとアルベルチーヌが先頭になっていた。この二人にアーサーは味方二人を両手につかんで体当たりを食らわそうとしていた。
「来たわね」マチルダが不敵に笑った。
次の瞬間、マチルダとアルベルチーヌのステッキ末尾から高火力のエアロが噴出した。それがアーサーと騎士科上級生の顔面に当たった。
この競技では魔法で直接相手を攻撃してはならない。しかしこれは加速行為の結果なのだ。エアロの噴出先にたまたま相手の顔がそこにあったのだ。
「相変わらずエグいことをする」一人だけ難を逃れたマルセルが呟いた。
それはおそらくアルベルチーヌのことを言ったのだろう。マルセルとマチルダには面識はなかったはずだ。
しかし似たようなことをロアルドも思った。このやり方はマチルダのやり方なのだ。本当にエグいことをする。エアロを顔に受けた騎士科上級生は後ろへ離された。
アーサーは平気だ。マルセルの手を掴んだまま突進した。三人よりもこの二人の方が身軽でスピードが速いと言っているかのようだった。
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