お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

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お見合いパーティー その3

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 ……結婚か。

 結婚するという事は、家族が出来るという事だ。

 私には、家族と呼べる人間が居ない。屋敷の使用人たちとは、家族同然と言えるぐらい長い時間を共に過ごしているが、皆には、私ではない家族が居て、しっかりと家庭を持っている。
 
 どんなに長くそばに居ても、使用人は決して本物の家族では無い。結婚によって、お互いを一番に大切にし合える家族が出来るのなら……きっと幸せなんだろうな。
 
 クルス王子の想い人はいいな、あんな誠実そうな、可愛いお耳の人に愛されて。
 
 ……。
 
 こんな事を思った自分は、やっぱり結婚を望んでいるんだろうか。まぁ、でもマナンルークに帰れば、そのうち結婚相手は決められるだろう。

 家族はそのうちできるのだ、私だって今焦る必要は無い。それに、あんな愛らしい姫様達と、私は比べ物にならないだろう、望みは初めから無いに等しいんだ。
 タリスビアへは、観光にきたも同然。
 
 ……美味しいものでも山ほど食べて帰ろ。
 それから、お土産だな。魔力豊富なこの国のお土産と言えば、マジックアイテムだ。
 帰る前に下町に買い物に行ければいいのだけど。
 
 またクッキーを食べようと思い手を伸ばすともうすっかり空で、お菓子を取り会場中央のテーブルへと向かう。
 中央テーブルには、小さなプティフールが所狭しと並んでおり、ブッフェスタイルで自由に取り分けて食べることが出来る。
 
 でも、ちょっとやっぱり味が薄いんだよね。屋敷のメイド長が肥満を気にしてる時に作ってた、ダイエット菓子のような感じだ。
 
 私がお菓子を沢山取っているのを横目に、姫様達はクスクスと笑っている。
 彼女たちは、中央テーブルの近くに設置されているテーブルで、優雅にお紅茶を楽しんでいる。
 
「あら、卑しい身分の者には遠慮がないのね」
「場違いな場所に連れてこられて恥を晒すなんて、お可哀想に」
  
 なんか言われてる……。

 少し離れた距離にいた、パッとクルス王子が片方の耳だけこちらに向けた。この距離でも私が馬鹿にされているのが聞こえたらしい。
 
 でも、気にしなくて大丈夫だ。姫様達は船に乗ってる時からこうなのだから、もはや口癖だよ。
 クルス王子はその目の前に居る、ふわふわ笑ってる可愛い子に意識を集中した方が良い。
 
 お菓子を片手に、膝を曲げて姫様達にお辞儀をしておく。
 何か返しても詰られるだけなので、お辞儀だけして適当に歩き出した。
 
「そ、その通りですわね!本当に!礼儀も教えられてないのかしら!」
 
 二人の姫に合わせるように、遅れて一人の姫が首振り人形のように頷く。
 
 お皿からお菓子がこぼれないように慎重にその場を離れてから、先程のテーブルの様子を伺う。
 
 なんか……変じゃない?
 
 一人だけ、下位の王族だ。
 二人は、そこそこ名前も知られている、姫様達だが、あの目立つ黒髪の姫は少し身分違いだろう。
 ふと会場全体を見回す。

 自由に着席できるテーブルセットが複数と、タリスビアの王子のために準備された席があり、所々にイスが配置されている。
 私は、端の方の椅子を二脚を占領していたわけだが、他はだいたい纏まって、ある程度身分ごとにテーブルに付いて談笑していたり、グループで動いている。
 今までは、あの下位の姫様……カトリーナ姫は、あのグループに。
 
 そう思って、探してみると、カトリーナ姫がいたグループは、王子の席の方へと移動している。
 近くの椅子の数が足りないという事も無く、カトリーナ姫が居ないことを気にする事も無く、談笑している。
 
 どうやらカトリーナ姫は、あのグループから外されてしまったらしい。
 これだから我が国の姫様達は困ったものだ。自分達は高貴な血筋だと誇るのに、女学生みたいな事をするのだから。
 
 同じあぶれ物として、どうにかしてあげたいような気もする。絶対にあの姫様達の接待をしているより、美味しいものを食べた方がお得だ。
 今日のパーティが終わったら声をかけてみようそう決心して、テーブルにお菓子の乗ったお皿を置いて椅子に座った。
 
 クルス王子は、歩きながら女性に声をかけて、たまに笑顔を見せる。彼の付き人は少し離れた位置から見守っており、表情も朗らかだ。
 ……それに比べるとあっちは、少し空気が悪そうだね……。
 
 この場には、クルス王子以外にもう一人結婚相手を選んでいる王子がいる。
 カトリーナ姫の元いたグループの姫様達が囲んでいるのがそのもう一人だ。

 彼は如何にも気だるそうに、周りに集まる姫様達と会話して、あからさまな作り笑いを浮かべている。
 
 名前は……ルカ王子。
 
 長毛種の猫のような柔らかい金の毛色のシッポ。その先っぽだけ少し暗い色が混じってる。
 お耳は、少し小さめなので、はやりネコ科だろう。あれは、相当もふもふだね。
 
 彼のお月様みたいに綺麗な瞳は、今は憂鬱そうに色を曇らせている。

 ネコ科の獣人は、特に光り物が苦手な者が多い。
 理由は……多分じゃれちゃうから……多分。
 揺れる宝石をつけてると良くネコ科の半獣人に目をそらされた。
 
 ルカ王子は、一見優しげに見える、好青年だけれど、人間に対する嫌悪感らしきものがじわじわと滲み出ている。
 
 出来れば関わりなくないけれど、一度、挨拶ぐらいはしなければ失礼に当たるだろう。このパーティの主催者なのだから仕方なし。これだけ豪華なパーティだ、お金だって沢山かかっているだろうし、選ばれないにしても、呼んでくれてありがとうと伝えなければ。
 
 取ってきたお菓子をパクパクと口に放り込み、お皿を給仕係に下げてもらって、スタスタとルカ王子の所へと向かう。
 
 すると、先程のカトリーナ姫が居るテーブルの側を通る瞬間、何か、シュッと香水を振ったような音がかすかに聞こえた。
 
 通り過ぎることなく、私が振り向くと、ちょうどカトリーナ姫も立ち上がって私と同じ方向に行くところだった。
 急に振り返った私に、カトリーナ姫はビクッと反応して、キッとこちらを睨む。
 
「なっ、なによ!」
 
 その背後で、テーブルに座ったままの姫は、小さな瓶を袖に隠した。
 
 香水?今、カトリーナ姫にふりかけたよね。
 私がカトリーナ姫の質問を無視して、後ろの二人を凝視していると、カトリーナ姫は「ふんっ」と顔を逸らして歩いていく。
 
 相変わらず、クスクス笑っている姫様達は、カトリーナ姫の背中を見ながら、彼女がルカ王子の所へ行くのをじっと見ている。
 
「……?」
 
 ……彼女たち隠れて何をカトリーナ姫にふりかけたのだろう。
 カトリーナ姫は、ルカ王子の元へと足を進める、元いたグループと、どうにかよりを戻したいのか、意を決して、気軽に微笑んで近づいて行く。
 
「あの子、気が付かないわよ」
「うふふ、いいじゃない。面倒だもの少し痛い目を見ればいいのよ」
 
 少し声を潜めて言い、姫様達はその笑みを深くした。
 私は、何か良くない事が起こるんじゃないかと思い、カトリーナ姫を駆け足で追いかけた。
 



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