お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

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メイドの二人 その2

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 数日前にクルスに貰ったロケットペンダントをポケットから出して、彼女に見せる。

 付け方を教えて欲しいと行ったのには、理由がある。
 このペンダント、ネックレスにしては、チェーンが短すぎるのだ。
 首にぴっちり一周になってしまうし、間違ってつけていたら恥ずかしいでしょ?

 それに、ネックレスは、既に一つ付けている。

 これを誰かに一度相談したかった。
 それに、このペンダントがどういう物なのかも教えて欲しいな、なんて思って言った。
 
 ピンッと耳を立てて私の声に反応し、彼女は私の事を睨む。
 動物の威嚇のように、しっぽの毛を逆立てて耳を伏せて、口を開く。
 
「姫さんは、そんなにゃ事も知らないので?」
 
 好意的では無い態度に、一瞬喉が詰まるが、熟考することなく、言葉を返す。
 
「ええ、マナンルークには、無い形のネックレスだから」
「……嫌です」
「え」
 
 思わぬ回答に、目を見開く。

 いや、わかっていた事だ。……私が人間だから。

 私が俯くと、彼女はそっと、歩み寄ってくる。一歩、二歩と距離が縮まると、私の心臓の鼓動も早くなる。
 
「……」
 
 彼女の表情を確認すると、まだ機嫌が悪そうに、私の事を睨んでいる。
 
 ッ!お、怒らせてしまった!
 どうしよう、こっちに来る!
 
 私が大慌てで、逃げだそうかと考えていると、ピタッと彼女は止まる。
 
「ほらにゃ、姫さん。僕が怖いからアクセサリーにゃんて付けられないじゃにゃいの」
「……え。……えぇ」
 
 さっきから「な」の言葉が「にゃ」になっている衝撃と、彼女だと思っていたが「僕」ってまさか男の子じゃないだろうな?!
 
 喋り方の癖が強すぎて、彼?が言った言葉の意味がいまいち理解できない。
 
「姫さんは、ここに来てずっと怯えてるから、ルカの所為で大変だから、マティに話しかけちゃダメって言われてるのです」
「ま、マティって……?」
「マティはマティです。メイドのマティ」
「あ、えと、おっきい方の?」
「正解だにゃ」
 
 大きな耳をぴょこんと立てて会話をする。しっぽは、ふわふわと緩く揺れて、随分と愛らしい。
 
 え、ええ?
 もしかして、私、ひとりで勝手に怯えてた?
 
「あ、貴方は?」
「僕はリノ。……姫さんは……僕が怖くにゃくにゃった……?」
 
 な、名前じゃ性別判断できん!!
 あや、もう怖くはないけれども気になる。非常に気になるよ!リノ!
 どこからどう見ても、メイド服着てるし、髪は長いし、お目目は大きくて女の子みたいなんだけど、ほら万が一、男の子だとしたらさ、さすがに、洗濯はマティに頼みたいかな?!
 
「僕らが部屋に入る度、姫さん懐いてにゃい猫みたいだった。僕は……姫さんと……にゃかよく」
 
 耳を伏せて、私をじっと見る。今まで睨んでいると思っていた表情は、しょんぼりしていたのかもしれない。
 ふと、もう一歩、彼は私の方へ踏み込んでくる。
 
「そ、そんなに露骨だった?」
「……鼓動が大きいから姫さん。……ルカが嫌いにゃのも知ってる」
 
 私の状態は、鼓動で判断できるらしい。びっくりだ。
 半獣人は、そんなことを言ったことは無かったのに。
 これだけ大きい耳だと何か違うのかな。
 
 というか、リノのお耳の形で、ネコ科の生物が思いつかない。なぜしゃべり言葉に「にゃ」が混ざるのか不明だ。
 
「……まぁ、ルカのことは一旦置いておこう。……リノは、人間が、嫌いじゃないの?」
「人は好き。強い香水の香りがしなければ、もっと好き。姫さんは、小さくて可愛い」
 
 にぱっと口を開けて笑う彼は、なんの迷いもなくそう言った。
 可愛いと言われたのは、お世辞でも嬉しいけれど、そうか……。

 私の中で、獣人がまたよくわからなくなった。こんな人もいるんだ。
 
「あ、ありがとう。……これから、よろしく」
「うん。姫さん、頑張ってお世話するにゃ」
 
 私が怯えてると気がついて、近くに寄らないでいてくれた彼に、私は手を伸ばした。
 握手かハグぐらいはしようと思ったのだ。これから私の生活を支えてくれるのだし。
 
 ついでに、そのもふもふにすこし触らせて貰いたかった。
 まぁ、そんな大胆な事は出来ないので彼の手を取ったが、そのまま引き寄せられて、持ち上げるようにハグをされた。
 
「うおっ」
「姫さん、軽いのにゃ」
 
 想像以上に力強くて、背中に回された手が大きい。あ、こりゃ多分男性だなと思った次第だが、まぁいい、だって、こんなに純粋に嬉しそうな顔をしているんだから。

 すると、ガチャッと、扉を開く音がして、マティが姿を表す。ちょうどいいので、彼女にも挨拶をしようと、視線を向けると、マティは私達を見て、しっぽをしならせて前傾姿勢になった。彼女は、私がパチッと瞬きをする間に、目の前にトンっと瞬時に移動した。
 
「ひっ」
 
 喉がひきつった音を鳴らす。
 襟首をつかまれ、ぐわっと体が浮いて、空中で一回転した後に、マティの腕の中にすっぽりと収まる。
 
「リノ!貴方って人は、一体、姫様に何をしているのですか!」
「ちょ、え?」
 
 マティは、リノに向かってガルルゥと咆哮すると、私をお姫様抱っこしたまま、数歩飛び退く。
 
「マティこそ、横取りしにゃいで!姫さんは僕とにゃかよくしていたんだっ」
 
 リノの話から察するに、マティは私を心配してくれていたのだろう。そして、部屋に入ったら、急にリノと私がくっついていた、何かあったのかと勘違いしたに違いない。
 リノは話し合うということをせずに、あろう事かマティに対して、手を床につけてフッー!っと毛を逆立てて威嚇する。
 
 キューンと機械音のような妙な音が聞こえて、リノの頭上に五つ程の魔力弾が生成される。
 
 へ、部屋を壊す気か!?
 
「お部屋をダメにする気ですか!のこ馬鹿っ!」
 
 マティと意見が一致するが、彼女も頭に血が上っているのか、私を抱きとめる力が強くて少し痛い。
  
「うるさいっ!マティが悪い!」
「っ!なんですかさっきから!人の話も聞かずに!……貴方っていつもそう!」
「いつもってにゃにさ!」
「いつもはいつもです!」
 
 二人が口論を始めてしまい、これ以上騒ぎが大きくなっても困るので、私は、マティの腕の中で暴れる。
 
「ちょっと待って!!……マティ!下ろして」
「は……ぇ、……はい」
 
 私は床に足をつけると、マティの手を取って、それから、リノの方へと向かう。
 
 リノは、牙むきだしにして怒っていたが、私を前にすると、あっと私の存在を思い出し、お口を閉じて、汗をだくだくかきながら立ち上がる。
 
 
「マティも、リノも、とりあえず一旦仲直りしてね」
 
 二人の手と手を取って、合わせると、少し気まずそうに私の方を見みて、握手をして、それから、お互いに抱き合った。
 もしかすると、この国はマナンルークよりも、ハグをする習慣が強いのかもしれないなぁと思いつつ。
 二人が抱き合ったのに加わった。
 
「ひえっ」
「にゃぅ」
 
 ビクッとする二人をぎゅうっと抱きしめる。
 
 これから仲良くできるだろうか。




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