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熱の病 その5

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 本腰入れて眠りにつくために、目を瞑る。
 
 すると数秒後に、ギシッとベットが沈む。
 
「……?」
「こ、これを」
 
 何を血迷ったのか、ルカは突然、私のベットへと上がり、仰向けに横になっていた私の肩をグッとベットに押さえつけた。そのまま、ポケットから、小さな布袋を出す。
 
「はっ、はあ?!っゲホッ、ッ、なに、……ぅ」
 
 体重をかけられて肩がミシッと嫌な音を立てる。
 
 ……急に何?!行動が突飛すぎるよ!言葉が気に触ったのか?!殺されるの、私っ。
 
 袋の中から錠剤が三粒ほど出てきて、ルカはそれを手に取る。
 
「飲ませれば、あぁ、……君に何をすればいいんだっけ」
「なに、何、なにっ、ど、どうしたの」
「いや、それで、人間の君には幸せになる価値はないって言う、話を俺はしようと思って」
 
 混乱する私の口に、その錠剤を放り込んで、サイドテーブルにおいてあった水差しを口をめがけて、バシャバシャと注ぐ。
 
「っ!!」
「人間は存在自体が害悪だからさ、俺の前から消えてくれれば楽なのに、人間の中から妻を選べなんて……エグバート様も酷なことを、仰る」
 
 口ぶりからして、毒薬のたぐいだろうか。
 
 顔面に冷水を浴びせられて、途端にどうにか抵抗しようとして、起き上がろうと力む。
 すると、思い切り、口に入った水ごと薬を嚥下してしまう。
 
 ば、はかっ、私。
 
 すぐに声を出そうとすると、鼻から水が入ってむせてしまう。
 髪と服までびしょびしょで、途端に寒気がやってくる。
 
「がはっ…っぁ、ごほっ、はあっ」
「それで、……だから。ええと、俺は人間が嫌いだからさ」
 
 また、ルカは薄ら笑う。この人のこの顔が嫌いだ。まったく楽しそうじゃない笑顔に腹が立つ。
 そんなに、中身の無い言葉が大事か!
 
 いや、今は、そんな事より、何を飲まされたのかの方が重要だ。ルカは似たような言葉を繰り返し、壊れたおもちゃのようになっている。
 
 何を考えているのかまったく分からない。私が何を言っても伝わらないような気がして、なんだか腹が立つ。
 イライラすると頭に血が上って、今度はクラクラしてくる。押さえ付けられている肩が痛くて、滲んだ涙は頬を伝って流れ落ちた。
 
 突然の事態に、熱に茹でられている脳みそでは、対処しきれない。
 
「…………、よかった」
 
 ルカは笑みを深めて、嬉しそうに、表情をほころばせる。
 
 ……な、何なの。
 
 この人の性格がまったく掴めない。
 ふと、ルカの柔らかい猫っ毛がほほを撫でた。抱きしめられた事に気がついた時、既に私は白目を向いていたと思う。
 
 
 


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