お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

文字の大きさ
41 / 139

遊猟会 その4

しおりを挟む





 圧力が見えないから、私だけこれほど能天気でいられるのだろうか。

 他の人が、怯えたり危険を感じたり、する物なのに、感じられないのは、少し怖いと思う。でも私は獣人を知っていくと決めている。
 
 大丈夫、お義母さまの事、私は結構信じているのだ。
 
「ノーラ、教えて?」
「っ、なっ何を!ノーラはっ!ロイネ様がノーラをバカにするからっ」
「ごめんね、ノーラ、馬鹿にした態度を取った記憶が無い。私、ここに来て、皆と本当に仲良くなりたいと思って接してるよ」
「う、嘘よ!」
「嘘じゃないよ」
 
 ノーラの目を見て、訴えかけたが、どうにも通じそうに無かったので、私は交友的に接していると信じて欲しくて、とりあえず、席を立って、彼女の手を取った。
 
 柔らかくて小さな手は、女の子らしいと感じた。
 握手とハグでもしておこうかと思ったが、手を取った時点で、その手がガタガタと震えていた。
 
「え。え?、え?」
「どうかした?」
「ロイネ様、ノーラが好き、な、の」
「えぇ?か、可愛らしいとは思うよ」
「こ、困るよ、カミーユがいるもの」
「あら、恋人なの?」
「婚約者よ」
「いいね、ステキ」
 
 えへへと笑って私は席に戻る。どうやらもう、ノーラは怒っていないようで、ぽかんとしたまま、私を目で追っている。
 
 カミーユとノーラは婚約関係だったようだ。ままあることだろう。二人共貴族の中でも、地位の高い家柄同士だ婚姻関係があれば国内の結束力を高まる、是非とも仲むつまじくやっていってほしいものである。
 カミーユに頑張れという意味で視線を送ると、彼は瞳を瞬きながら呆然としている。
 
 さて、ノーラはさっきまで怒っていたのだ。私の友好的握手!で何とか収まったが、あのままだったら修羅場まっしぐらだっただろう。理由を確認しなければ。
 
「それでノーラ、なんで怒っていたの?」
「え……ええと、ロイネ様が圧力を纏わないまま、ノーラ達と接してるから」
「うーん……それってダメなことなの?」
「ダメ、ダメに決まってるです。お前相手に圧力を出す必要も無いって侮辱です!だからノーラは怒って」
 
 なるほど、言われて見れば、納得の理由だ。獣人同士の社交だとそれがスタンダードなのだろう。
 だからと言って圧力を出せるわけでは無い、どうにか、理解してもらうしかない。
 
「そっか、ほかの三人が怒らなかったのは、なんで?」
「私は、遊猟会が決定した時に、少々話を伺がっておりました」
 
 ふと気になって、振り返ると、カミーユは気まずそうに笑いながら言った。
 次にディーテに視線を向けると、椅子に戻ってきたらしく、身をかがめて、ボソリと呟く。
 
「僕は、少し事情があって知ってました……」
「わたくしは、エクトルお兄様から、人間は圧力を出さないと伺ってました!」
 
 それぞれ、下調べから事前情報、色々、加味していたらしい。
 そして、人間にあまり馴染みの無い、ノーラがキレたと。
 
「申し訳ございません、ロイネ様、私が説明しておくべきでした」
「いいえ、大丈夫です。カミーユ」
 
 今度からは、知らない人と社交をする時は、根回しをして置くか一言添えた方がいいだろう。
 周りの意見を聞いてノーラは、皆を一周見回して、それから、私を見る。
 
「ノーラ、不快な思いをさせてしまってごめんなさい」
「っ、あ、……いえ、こ、こっちこそ、ノーラこそ……ごめんなさい」
「はいっ」
 
 そう言って謝る姿は、先程の気迫はまるで無く、彼女は失敗としてしまったと、へたっと耳を提げて、うるっと瞳に涙を浮かべる。
 
 あぁー……可愛い。いや、その。耳の動きというか、うん。
 
 ……そう言えば、もうひとつ気になったことがあった。
 
「あのそれと、どうして私が触れた時、ノーラのことが好きなのかと聞いたの?」
「あ、っ……いっ言えません!」
 
 些細な疑問だったので口にしたのだが、ノーラは追い打ちをかけられたとばかりにビクッと反応して、プルプルと震える。
 
 その奥にいるアンジュに視線を向けると、彼女も目が合ってビクッとしてから、困ったように口を開いた。
 
「他人といる時に、わざと圧力を出さないのは、侮辱……ですが。その、……っ、獣人同士で圧力を一切出さないまま触れ合うのは、夜伽のときだけで、ですの」
「……へ、夜伽」
 
 よとぎ、と言うのは、あれだろうか、成熟した男女が行う……っ……。
 
 そんな意味だとは知らずに、ノーラに触れて勘違いさせたのか私っ!人間の社交ではただの握手なので全然セーフだが、獣人の方では完全にアウトだったらしい。
 き、気をつけよう。
 
 今、男性がいる方へ顔が向けられないっ。
 
「ご、ごめんね!ノーラっ」
 
 羞恥で、いても経ってもいられずに、顔をおおった。
 
「……」
 
 気まずい……こんな素敵な、秋晴れの気持ちいい昼時に話すことじゃないよ!
 な、何か空気を変えられるものはないだろうか。
 ちらっと、カミーユの方を盗み見ると、彼も、なんと反応したらいいか分からないようで、斜め下に目線を逸らして、私の羞恥心が伝染したのか頬を染めていた。
 
 そ、そうだよねぇ!誰だってはずかしいよね!大人っぽい人だと思っていたが、年相応な感性もあるらしい。
 
 うん、そうだっ。ここは身分の一番高い私が進行しなければ!

 幸いもうこれ以上の失敗は無いと思えて緊張がほぐれてきた。
 
 よ、よしっ。やるぞー!
 
「ま、まぁ、私っ、見ての通り、とても常識に疎いのよ。だから……その、今日共に過ごして、非常識だと思うことがあったら、遠慮なく教えてくださいね!みんなっ」
「は、はいっ」
「わ、わかりました!」
 
 口々に返事が返ってくる。
 導入はこんなものでいいだろう、いよいよ、遊猟会を始めるべきだ。お腹も空いてきたしね。
 
「それでは、遊猟会!始めましょ!楽しんでいきましょう!」
 
 にっこりと微笑む、まだまだ、会は始まったばかりだ。こんなところでつまずいて居られない。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

処理中です...