42 / 139
遊猟会 その5
しおりを挟む最初のガチガチに緊張した雰囲気も何とかなった、このまま流れで、進行してしまおうと思ったが、最初の問題に立ち返ることになった。
「……ところで遊猟会って何をやるのですか」
私が知らなければ、どちらにせよ進まないので素直に疑問を口にした。
誰かしら答えてくれるかなと思って問いかけると、ピコッとお耳を反応させてアンジュがスっと手を上げる。
「はい、アンジュ!」
「僭越ながら、ご説明させていただきますわ」
私の疑問に、反応をしてくれたことに安堵しつつも、アンジュを指名する。
アンジュはえへんと、胸を張って、ハキハキと説明を開始する。
「遊猟会は、それぞれ森へ入り、獣を狩ってくる遊びをする会ですの!戻ってくるまでの時間や狩った獲物を披露して、競い、そして獲物を皆で分け合い親睦を深めるのですわっ」
名前の通りの予測していた遊戯だ。しかし、別々に森に入るとは思っていなかった。そして競い合うということも想定外だ。
それだと、言っておかないといけない事がいくつかあるかな。
「ありがとう、アンジュ」
「とんでもございません!当然の事を下までですわっ」
「ええと、気分を害さないで欲しいのだけど、私、いくつかできないことがあるの」
「人ゆえと言うことでしょうか?」
「えぇ、そうです。先に言っておこうと思いまして」
カミーユが反応してくれて、私は、少しノーラの方を見て、視線を交わす。ノーラにもちゃんと説明して置かなければ、また、行き違いが生まれるかもしれない。
「狩りに私は参加できません。身体能力が皆より、低いので、一人で森に入ると怪我します」
「わかりました。ノーラはロイネ様の分まで頑張ってきます」
「ふふ、期待してます!それからもうひとつ、お肉の生食が苦手なので、私のお料理に関しては別で調理したものでも構いませんか?」
「わかりました」
よしっ、この二つを言っておけば、行き違いは起こらないだろう。
あとは、皆がどんな風に、獣を狩ってくるかが疑問だけれど、それはここで待っていればいい。
どんな狩りだったかを話す事も、遊猟会の食事の定番の話題かもしれないし、楽しみにしておこう。
「……それでは、参りますか」
「ええ、そうですわね」
「腕がなります」
三人はうふふと笑って立ち上がる。その姿は本当に楽しそうで、私も混ざりたい気持ちになるが、仕方ない。今度クルスにでも、一緒に森に連れて行ってもらおう。
それぞれ、ぱっと獣の姿になる、多分、女の子二人は、コヨーテとライオンだと思われるが、カミーユだけは相変わらず、なんの動物だか分からない。
獣人が獣になった姿は通常の獣よりも大きい、魔力に関係があるのだろうけれど、まさに食物連鎖の頂点と言った感じだ。
かっこいいなぁ。
体が大きいため一歩も大きく、ノーラが私を振り返ってウォン!と一声かけた。
手を振って、返すと、彼女たちは体のバネを使って豪快に走り、森の中へ消えていく。
……三人とも……なんというか、興奮していたのか、あっという間に狩りに行ってしまったが……ディーテの事を置いて行ってしまった事に気がついているだろうか。
ディーテは何か言いたげに、膝の上で拳を握って、相変わらず耳を伏せている。
どうしたのだろう。お腹でも痛いのだろうか、もしくは、彼らにハンデをくれてやったのさ!って感じだろうか?
声をかけようとかと思っていると、彼の方から口を開いた。
「……ロイネ様」
「はい、なんですか」
「ぼ、ぼきゅは、か、狩りが得意ではない、です。ので、よろしければっ」
盛大に噛んでいるが、何とか私と目を合わせて、眉を下げて笑う。
先程から怯え通しで、不憫なディーテだったが、ちゃんと自己主張ができるらしい。
「共に、木の実でも探しに森の散策などっいかがでしょうか!」
「いいですよ、行きましょうか」
椅子から立ち上がりながら、メイドの二人に視線を送ると、そばに寄ってきてくれる。私も狩りが終わるまでは暇なので、こう言った心遣いはありがたい。
目的がなんでも、森に入れるのは、楽しみだ、私が同意するとディーテもほっとして、席を立つ。
彼の隣を歩くと、ぽわぽわしている、こげ茶の丸っこいしっぽが視界に入る。可愛い。
「……ッ、その、遊猟会で従者は狩場へ付き添わない決まりですから……ロイネ様」
「……そうなのですか?」
ディーテは、ものすごく言いにくそうに、背後の二人を見やった。つい先程、間違っている事があったら言ってねとは言ったが、どうしよう。さすがに、二人きりで森の中に入るのはどうだろうか。
「奥深くは、入りません、獣もいませんから」
「……」
それは、うん、いいんだけれど。
……正直、従者もなしで、ディーテと二人きりと言うのが、アウトな気がするんだが、メイドの二人が異を唱え無いということは、本当に狩場へは、従者は入らない決まりになっているのだろう。
どうしようかな。せっかく誘ってくれたけど……お断りしようか。
ちらっと、ディーテを見上げると、眉間に皺を寄せて薄ら汗をかき、必死の形相で、私をじいっと見つめていた。
……ん?なんか異常に必死だな。どうしたディーテ。なんか企んでる?こ、怖いんだけれど。……何か二人きりでないと言えない事でもあるのかな……。
あー、ダメだ。
そんなこと考えたら、ここで引き返す事は出来ない。
「わかりました。メイドの二人に声が聞こえる範囲までであれば、お供します」
「っ……あ、ありがとうございます」
冒険するのは良いけれど、大事があっては困るので、大声で助けを呼べる範疇にしてもらうことにした。
ディーテはまるで命を繋がれたかように、はあっと深く呼吸をして、瞳に涙を滲ませて俯く。
1
あなたにおすすめの小説
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
契約結婚の相手が優しすぎて困ります
みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる