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遊猟会 その5

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 最初のガチガチに緊張した雰囲気も何とかなった、このまま流れで、進行してしまおうと思ったが、最初の問題に立ち返ることになった。
 
「……ところで遊猟会って何をやるのですか」
 
 私が知らなければ、どちらにせよ進まないので素直に疑問を口にした。
 誰かしら答えてくれるかなと思って問いかけると、ピコッとお耳を反応させてアンジュがスっと手を上げる。
 
「はい、アンジュ!」
「僭越ながら、ご説明させていただきますわ」
 
 私の疑問に、反応をしてくれたことに安堵しつつも、アンジュを指名する。
 アンジュはえへんと、胸を張って、ハキハキと説明を開始する。
 
「遊猟会は、それぞれ森へ入り、獣を狩ってくる遊びをする会ですの!戻ってくるまでの時間や狩った獲物を披露して、競い、そして獲物を皆で分け合い親睦を深めるのですわっ」
 
 名前の通りの予測していた遊戯だ。しかし、別々に森に入るとは思っていなかった。そして競い合うということも想定外だ。
 
 それだと、言っておかないといけない事がいくつかあるかな。
 
「ありがとう、アンジュ」
「とんでもございません!当然の事を下までですわっ」
「ええと、気分を害さないで欲しいのだけど、私、いくつかできないことがあるの」
「人ゆえと言うことでしょうか?」
「えぇ、そうです。先に言っておこうと思いまして」
 
 カミーユが反応してくれて、私は、少しノーラの方を見て、視線を交わす。ノーラにもちゃんと説明して置かなければ、また、行き違いが生まれるかもしれない。
 
「狩りに私は参加できません。身体能力が皆より、低いので、一人で森に入ると怪我します」
「わかりました。ノーラはロイネ様の分まで頑張ってきます」
「ふふ、期待してます!それからもうひとつ、お肉の生食が苦手なので、私のお料理に関しては別で調理したものでも構いませんか?」
「わかりました」
 
 よしっ、この二つを言っておけば、行き違いは起こらないだろう。
 あとは、皆がどんな風に、獣を狩ってくるかが疑問だけれど、それはここで待っていればいい。
 どんな狩りだったかを話す事も、遊猟会の食事の定番の話題かもしれないし、楽しみにしておこう。
 
「……それでは、参りますか」
「ええ、そうですわね」
「腕がなります」
 
 三人はうふふと笑って立ち上がる。その姿は本当に楽しそうで、私も混ざりたい気持ちになるが、仕方ない。今度クルスにでも、一緒に森に連れて行ってもらおう。
 
 それぞれ、ぱっと獣の姿になる、多分、女の子二人は、コヨーテとライオンだと思われるが、カミーユだけは相変わらず、なんの動物だか分からない。
 
 獣人が獣になった姿は通常の獣よりも大きい、魔力に関係があるのだろうけれど、まさに食物連鎖の頂点と言った感じだ。
 
 かっこいいなぁ。

 体が大きいため一歩も大きく、ノーラが私を振り返ってウォン!と一声かけた。
 
 手を振って、返すと、彼女たちは体のバネを使って豪快に走り、森の中へ消えていく。

 ……三人とも……なんというか、興奮していたのか、あっという間に狩りに行ってしまったが……ディーテの事を置いて行ってしまった事に気がついているだろうか。
 
 ディーテは何か言いたげに、膝の上で拳を握って、相変わらず耳を伏せている。
 どうしたのだろう。お腹でも痛いのだろうか、もしくは、彼らにハンデをくれてやったのさ!って感じだろうか?
 
 声をかけようとかと思っていると、彼の方から口を開いた。
 
「……ロイネ様」
「はい、なんですか」
「ぼ、ぼきゅは、か、狩りが得意ではない、です。ので、よろしければっ」
 
 盛大に噛んでいるが、何とか私と目を合わせて、眉を下げて笑う。
 先程から怯え通しで、不憫なディーテだったが、ちゃんと自己主張ができるらしい。
 
「共に、木の実でも探しに森の散策などっいかがでしょうか!」
「いいですよ、行きましょうか」
 
 椅子から立ち上がりながら、メイドの二人に視線を送ると、そばに寄ってきてくれる。私も狩りが終わるまでは暇なので、こう言った心遣いはありがたい。

 目的がなんでも、森に入れるのは、楽しみだ、私が同意するとディーテもほっとして、席を立つ。
 彼の隣を歩くと、ぽわぽわしている、こげ茶の丸っこいしっぽが視界に入る。可愛い。
 
「……ッ、その、遊猟会で従者は狩場へ付き添わない決まりですから……ロイネ様」
「……そうなのですか?」
 
 ディーテは、ものすごく言いにくそうに、背後の二人を見やった。つい先程、間違っている事があったら言ってねとは言ったが、どうしよう。さすがに、二人きりで森の中に入るのはどうだろうか。
 
「奥深くは、入りません、獣もいませんから」
「……」
 
 それは、うん、いいんだけれど。

 ……正直、従者もなしで、ディーテと二人きりと言うのが、アウトな気がするんだが、メイドの二人が異を唱え無いということは、本当に狩場へは、従者は入らない決まりになっているのだろう。
 
 どうしようかな。せっかく誘ってくれたけど……お断りしようか。
 
 ちらっと、ディーテを見上げると、眉間に皺を寄せて薄ら汗をかき、必死の形相で、私をじいっと見つめていた。
 
 ……ん?なんか異常に必死だな。どうしたディーテ。なんか企んでる?こ、怖いんだけれど。……何か二人きりでないと言えない事でもあるのかな……。
 
 あー、ダメだ。
 
 そんなこと考えたら、ここで引き返す事は出来ない。
 
「わかりました。メイドの二人に声が聞こえる範囲までであれば、お供します」
「っ……あ、ありがとうございます」
 
 冒険するのは良いけれど、大事があっては困るので、大声で助けを呼べる範疇にしてもらうことにした。
 
 ディーテはまるで命を繋がれたかように、はあっと深く呼吸をして、瞳に涙を滲ませて俯く。
 




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