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その後 その2
しおりを挟む「……お前達、随分仲の良いこと」
「ユスティネ、口にするでは無い」
「よいでは無いですか、エグバート。将来は義兄弟か、夫婦なのですから、悪いことではありません」
「しかしの、まだ、歳若いのだ。言われたくないこともあろう」
「そういうものですか」
……確かに。
言われてみるとクルスとは距離が近い。ダンスの練習もまれに付き合ってくれるし、獣化した姿だと、ハグ(?)だってする。
私は、別に変な羞恥心は感じないし、正直、クルスは、癒し枠である。優しくて、ふわふわであり、もふもふだから。
「父上、俺、今日は下がります」
私は、そう思っていても、どうやらクルスは違うのか、顔を背けて、書類を集め、席をたつ。
……両親に冷静に分析されたのが恥ずかしかったのかな?
「ほれ言ったことか、ユスティネ」
「まぁ、可愛らしい反応ですこと。クルス、就寝の挨拶ぐらいなさい」
「っ……」
声をかけられたクルスは、不機嫌な表情のまま、犬の姿になって、お義母さまに体を擦り付けるように、擦りよる。それから「わふ」と不機嫌に鳴いて、私のスカートを軽く噛んで引く。
目線で行くぞと言っているような気がして、私は先に行く彼について行こうとする。
「ロイネ!待ちなさい」
「はい?」
「ほら、お前も」
お義母さまは、すっと両手を広げて、しっぽを揺らした。どうやら就寝の挨拶とは、ハグの事だったらしい。
んふふ!なるほどクルスは素直にハグ出来なかったらしい。そういう所は、私も少し可愛いと思う。
お義母さまの胸に飛び込むと、暖かい人の温もりに、今日一日の疲れが吹っ飛ぶような心地だ。
「お義母さま、お義父さまも。おやすみなさい」
「ええ、おやすみロイネ」
「よく休みなさい」
二人に挨拶をして、クルスの方へと行くと、右足を庇って歩く私を焦れったく感じたのか、彼は人の姿に戻って、おもむろに私を抱き上げた。
お義母さま達の方は振り返らずに、早足で部屋から出る。
……ありがたいな。歩くのは、そろそろ辛くなっていたし。
今日は、この部屋に来るのに、メイドの二人は連れてきていない、ディーテに孤児院の件をお願いする手続きをしてもらっているのだ。
「遊猟会で、はしゃぎすぎたのか?」
「……そんなところ」
「そうか……治癒系の魔法は、俺は得意ではない」
「そうなんだ」
てっきり獣人は、万能に魔法が使えるのかと思っていたが個人差もあるのか。
このまま部屋まで送ってくれるつもりだろうか、何となく目を瞑って頭をクルスの肩にあずける。
「ルカに治してもらえ、人間の事はあいつが一番詳しい」
「……それはさ、なんでなの?」
「どういう意味だ」
「なんでルカは……ルカだけ、人をよく知ってるの」
「さぁな、俺は知らないぞ。何故か距離を取られているからな」
「クルスはルカと仲悪いの」
「仲良くしたいさ、俺も、母上も、父上も」
……思い返すとルカが、家族と共に過ごしている所を見たことがない。私でさえ、お義母さまやお義父さまと話をしたり、一緒にお茶を飲む時間があるのに、ルカは一人でいる事ばかりだ。
クルスの言い方的に、ルカは、王族の中で孤立している存在なのかもしれない。こんなに、暖かい家族なのに、どうして一人でいるのだろうか。
赤の他人である私でさえ、娘だと言ってくれるような優しい人達なのに……。
「クルス、ルカの部屋ってどこ」
「何だ、急に」
「ちょっと会ってくる」
知りたいと思っている。
ルカの事。
この疑問は、見当違いではないような気がした。ルカが人間に詳しいことと家族と仲良くしないことそれが、何かしら関係があるのじゃないかと思う。
まぁ、ただ単純に、わかり易く見える違和感がこの二つと言うだけで、私がそれを勝手に繋げて考えているだけ……かも、しれないけれど……。
ついでに、足を治してくれとでも頼んでみようか。
熱が下がってから、ルカには一度もあっていない、せっかく栞だって渡してあるのだ、急に部屋を訪問したら、使っているところが見られるかもしれない。
眠たいけれど、まだ、夜の早い時間だ、ここで眠っては、睡眠の習慣が狂ってしまうし、良いチャンスかもしれない。
「お前は……あいつに寄り添う、つもりか」
「寄り添う?」
「お前の選択で結婚相手を選ぶ事、父上から聞いている。あいつを選ぶのか」
耳元で少し、暗い声がする。その言い方だと、まるでやめて欲しいかのように聞こえてしまう。
そんなはずは、無いのに。
クルスは、私に選ばれてはダメなはずだ。だって、そこまで聞いているか分からないけれど、私と結婚さえしなければ、クルスは念願叶って、マナンルークに婿にいくのだから、それが一番望ましいはずだ。
「うーん、どうだろ。わからないけど、クルスもその方がいいでしょ」
「……わからない」
「え?」
「中途半端だな……俺は。……ルカは、お前のことを良く思っていないだろう。お前は……」
クルスの言いたいことがわからずに、首を傾げる。
わからないことは無いだろう。
クルスは、選ばれたく無い、それでいい。あまりに人の感情が複雑だと、選ぶだとか、知るだとか、難しすぎるのだ。
それに……クルスがもし、それでも良いと思っていたとしても……何故か気になるのだ。ルカが。
これは、どういう感情だろう。……また、好奇心だろうか。
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