お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

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ルカの部屋 その2

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「エクトル、下がっていいよ。一応、ソレとは婚約関係にあるから、不都合もないでしょ」
「かしこまりました」
 
 冷たい目線で私を見ていたエクトルに、ルカが声をかけて、彼は下がっていく。
 二人きりの方がありがたい、彼は少し苦手だ、最初の印象もあるし、会うのは二回目だ、馴染みのない獣人がいるとソワソワしてしまうから。
 
 あ、でもそう言えば彼、エクトルは、アンジュのお兄様だったっけ。外見は似ているけれど、中身はどうなんだろう。アンジュは、主張の強いタイプだったが、彼はどうなんだろうか。
 
 右足を庇ってひょこひょこと移動していると、ルカはじっと私を見た。
 
 彼の部屋は、私より広いし、趣味なのか本が多い、やはり装飾の豪華な物は少ないけれど、高級感のある部屋だ。先程まで執務をしていたのか、テーブルには、ペンや書類が置いてある。
 
 私の栞は……見当たらないかな。
 使っているのであれば、本の間だろうし、捨てられている可能性もある。
 
「わざわざクルスを使って俺に怪我を治させるなんて、何様なの、君は」
「……ごめん、言ってもらうつもりはなかった」
「あぁ、勝手にやられた事だから、自分は悪くないって?正当化したいのか、気持ち悪いな」
 
 相当ご立腹な様子だ。
 ソファーに乱暴に倒れ込んで、肘掛けにほほづえをつく。普段の暴言とは違い、何となく本心から言っている言葉のように聞こえる。
 
 確かに、感じが悪かったな、私。
 
「……本当にごめんなさい。治して貰わなくても大丈夫……クルスには、私がこう言ったことちゃんと伝えておくから気にしないで」
 
 今日は、話をしに来ただけだ。どうせ捻挫だから、部屋に戻ったら包帯でも巻いて、しばらく安静にすれば治るだろう。
 
「……」
 
 ルカは私を試すようにまたじっと見て、視線を逸らす、いつもの、何か色々な感情が混ざって、何を思っているのか分からない彼よりは、不機嫌だと顔に出ていた方が安心する。
 
「座れば」
「うん」
 
 ひとりがけのソファーに座って、改めてルカに向き直る。
 
 何の話に来たのだっけ……そうだ、なぜルカは、家族と居ることが無いのか、だ。
 それが聞きたかった。それから、人間に詳しい理由。あと、聞けるのなら薬をくれた事も、気になるし、なんでいつも暴言ばかりなのかも。
 
 ……改めて、話ができるタイミングになると、知りたいことが山積みだった。けど、どれもこれも、簡単に聞いていい事なのか分からなくて、口に出すのを躊躇してしまう。
 
 ……いつもなら、スパッと聞けるのに、言葉が出てこない。
 
 あー、……どうしよう。
 
「わざわざ会いにくる意味が分からない」
 
 私が話すことを考えているうちに、ルカがぽつりと言った。
 
 私にだって、分からない。好感をもてることを一つもされていないと言うのに、むしろ会ったところでひどい言葉を言われるだけなのに、知りたいと思うのは、どうしてだろう。
 
「被虐趣味でもあるんじゃないの?俺は、君を見ても嫌悪感しかわかないけど」
「そうかもね」
 
 いつからそんな趣味に目覚めたのだろうね。私。
 肯定すると、ピンとお耳がたって、それから威嚇するように、耳が伏せる。
 
「気色悪い。俺が普通の獣人だったら、手を出してた」
「!……ふふ、痛そう」
 
 素直な反応が返ってくるのが面白くて、つい笑ってしまう。だっていつもならこの人、こんな会話すらしない、私が傷ついた反応をする以外をすると、考えるのだ。どうしようかなと考えて、また暴言を吐く。
 
 今は、心底そう思っているのかな?気分が悪くなっているところ申し訳ないけれど、それでも嬉しい。
 あ、今の私、物凄く変態みたいだな。
 
「ねぇ、ルカ、なんでいつも酷いことばかり言うの?」
「……それ、どういう質問?君が人間だから以外の答えがあると思ってるの」
 
 人間だから……か。わざわざ、私個人にだけ言っている事では無い……のかな?
 
「じゃあ私が人間ではなかったら、ルカは優しかった?」
「それを聞いてなんの意味があるの?君が人間だって事には変わりないでしょ」
 
 答えない……か、ポジティブに解釈するなら、獣人だったら優しかったって事かな。
 でもルカは、人間である私に、酷いことを言うけれど……殺そうとしたりしない。死ねとも言われたことは無い。
 
 いや、普通、死ねって言われなくても暴言は、許せないことのはずなんだけど……結局何が聞きたかったんだっけな。
 
「じゃあ私───
「うるさい」
 
 ルカは、私の言葉を遮るように怖い声で言った。
 私の質問に耐えかねたのか、彼は立ち上がって、それから本棚にむかい。置いてある、木箱を手に取った。
 突然の行動に、少し身構える。



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