お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

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人間の孤児院 その2

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 両手を男性と繋ぎ、女の子が一人後ろからついてくるという妙な編成で、歩くこと数分。
 目指していた、教会に到着する。
 
 この教会は、城下町の一等地にある。規模は、ちょっとしたお城ぐらいだ。重厚感のある佇まいに、煌びやかという程でもないが、時間をかけて作られたであろう繊細な彫刻のある柱が何本も使われている。
 大きな正門は、馬車で乗り付けられるようになっており、その横にこじんまりとした徒歩用の入口がある。
 
 内部は繋がっているのだけれど、馬車でここに来るのは、貴族や上流階級の市民だろう。
 徒歩用の入口は、周囲の住民が日常的に、祈るために使われていると想像出来る。
 
 今日は、休日。それもプライベートでここへ来たのだ。私たちは、一般市民の邪魔にならないようにさっさと教会の中に進んでいく。
 
 一応、プライベートといえ、連絡はしてある。急にお邪魔したら孤児院側も慌ててしまうだろうから。
 中へ入るとより一層、静粛な雰囲気に、少し緊張する。
 
 入るとすぐに、修道女が恭しい態度で要件を伺い、祭司へと取り次ぎ、軽く挨拶を済ませる。司祭は、案内の者を呼ぶようにと、修道女に伝えた。
 
 ここにいるのは皆、獣人だ。話によると人間の孤児院はこの、教会の敷地の中にあると聞いている。
 直接そちらへ行くのは、失礼にあたるかもしれないので、まずは正門の礼拝堂の方へと来たのだ。
 
 司祭は、挨拶が済んでからも、私の事を流し目で見ている。どういう感情を向けられているのか分からないが、人間に対するあからさまな敵意じゃない。それに、もしかしたら私の背後でガクガクと震えている、ディーテを心配しているだけの可能性もある。
 
 ディーテは顔面蒼白だ、歯をカチカチ言わせて、服の裾をぎゅうと握っている。
 今、話を振ったら、驚きで倒れてしまいそうだ。
 
「……アンジュは、ここに人間の用の孤児院があること知っていましたか?」
「いえ、存じ上げませんでしたわ。そもそも、人間自体、マナンルークからの使節団以外で目にしたことは、ありませんでしたの」
「そっか……クルスは?」
「知ってたぞ、それに、人間や半獣人の孤児院の設立者はルカだろう、話は聞いていた」
 
 ……ん?ンン??いま、なんて?

 聞き返そうとすると、ドタドタと走る音が近づいて来る。バタンと祭壇の隣にある、聖職者用の扉が開いて、タリスビアに来て久しく見ていない、人間の男性が、飛び出してきた。
 
「司祭様っ、たい、っはぁ、大変!……申し訳ございません!っ、ごほっお、おまたせいたしっごほっ、こほっ、はっ」
「……良い、落ち着きなさい、カイリ」
「はっはい。っぐ、……ごほっ、はっ」
 
 随分と弱々しい男性だ、髪が長く、それをひとつに結っていて、顔色が悪く隈が酷い。
 体調が悪そうだけど、大丈夫だろうか。
 
 彼は、ぜー、ぜー、と呼吸を繰り返し、苦しそうに胸元を抑えて、息を整える。

 それから、やっとの思いで、呼吸を落ち着かせて、私達の方へ向き直ると、突然、心底驚いたような表情で固まった。
 
「……デ、ディーテ、さま?」
「っ、は、……」
 
 どうやら、ディーテのトラウマの張本人が突然登場してしまったらしい。慌ててディーテを振り返ると、彼は目眩を起こして、綺麗に後ろに倒れ込んだ。
 バタンと大きな音が響いて、ディーテは完全に気を失ってしまう。
 
「ディーテ!」
 
 私がディーテに駆け寄ると、同時に、向かいにいたカイリという男性も、駆け寄ってくる。
 とにかく、体を揺すってみるが起きる気配がない。
 
 ど、どどど、どうしよう!私の責任だ。彼をここまで連れてきたのは私だ。まさかぶっ倒れるとは思っていなかった。尋常ではない怯え具合だと思っていたが、これ程とは。
 
 っ、……。
 
 ……ちょっとまて……落ち着け、私。
 
 少し間を置いて深呼吸をする。ディーテの手首に指を添えて脈を確認する。大丈夫、だ。頭を打っている可能性はあるけれど、彼に重い持病か何かなければ、このまま大事になることはないだろう。
 どこかで休ませた方がいい。
 
 私と同じように焦って、触れていいものかもわからずに、慌てているカイリに声をかける。
 
「カイリ、あの、どこか休める場所はありますか?」
「っ、はいっ、あ!ちょうど、今日は、治癒の得意な方が孤児院にいらしています、きっと見てくれるはずです、っごほ」
「わかりました、すぐに行きましょう」
 
 お医者様がいるとは好都合だ、けれど、どうやって運ぼう、か。私では持ち上げられないし、ふとクルスを見上げると、私の気持ちを察してくれたのか、屈んでディーテの手を掴む。
 
「俺が運ぼう」
「!っありがと、クルス」
 
 クルスは、ディーテを軽くひょいっと持ち上げて、そのまま肩に担いだ。随分、ワイルドな持ち方だが、文句は言ってられない。驚きで固まっているアンジュにも声をかけて、案内をするカイリの後ろを早足で追いかけた。
 
 



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