お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

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人間の孤児院 その3

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 孤児院は、教会の裏手にある併設の修道院を抜けて、高い塀の向こう側にあった。塀に付いている扉には、鍵がついており、しっかりと施錠されている。

 塀の中に入ると、教会とは完全に区切られている施設だということが分かる。
 教会と似たような作りのこじんまりとした建物で、無駄のないシンプルなデザインだ。
 
 あまり周りを見る暇もなく、建物中へとはいる。
 来客用の部屋ではなく、医務室へと通された。そこには、数人の子供たちと一緒に、見慣れた獣人がいた。
 
「えっ、ルカ?」
「……」
 
 私が驚いて声を上げている間に、クルスは、質素だが清潔なベットに、ディーテを寝かせる。
 ルカは驚いているのか、なんなのか、反応を示さず、ディーテと私達を見比べて、耳をパタッと動かした。
 
「ルカ様!今日、いらっしゃる予定の貴族様がお倒れになってしまい、急きょっ、ごほっっ、っ、こ、こちらっに」
 
 カイリはまた、咳き込んでしまい、その場にいた子供たちが、彼の方へパタパタと駆け寄り背中をさする。
 
「いいよ、カイリ、見ればわかる。クルス、その子はどうしたの」
「さぁ、俺には分からない。急に倒れたとしか言いようがないな」
「わかった、少し、魔法をかけてみるよ」
「あぁ、頼む」
 
 ルカは、クルスにニコと笑って、それからベットのそばにある丸椅子に座り、ディーテの頭に触れた。
 
 ……と、とりあえずは……大丈夫かな?

 焦っていた気持ちが少しずつ落ち着いてくる。そう言えば、司祭に特に挨拶もせず出てきてしまったが、大丈夫だろうか。
 まぁ、過ぎたことを考えても仕方がない、帰りに寄って、非礼を詫びよう。改めて周りを確認するとアンジュが所在なさげに、きょろきょろとしている。
 
「……アンジュ、大丈夫?……びっくりしたね」
「も、問題ありません……わたくしも治癒魔法は使えますのに……お役に立てませんでしたわ」
「治癒魔法使えるんだ、すごいね」
「修練を積めば、できるものですから……」
 
 そうなんだ、是非ともこれからも頑張って欲しい。言葉は気丈だが、落ち込んでいるように思えたので、それ以上は声を掛けるのはやめておく。
 
 クルスも緊張が溶けたようで、ふぅと息をついて壁に寄りかかった。
 
 突然のことに驚いてしまったが、ディーテには、申し訳ない事をしてしまった。私が無理に連れてきてしまったから、こんな事になったのだろう。
 
 ……人の傷を軽く見ては、いけないな。

 青ざめた顔色のまま眠るディーテを見て、罪悪感が生まれる。ちゃんと謝って、彼が起きたら今日は引き上げよう。今度、一人で来たっていいのだから。
 
 ディーテを見つめていると、何となく視線を感じ、そちらを見ると、子供たちと目が合った。
 
 人間だ、質素な修道着に身を包んで、不安げに私たちの方を見ている。
 女の子も、男の子もいるし、耳だけが獣の形をしている子もいる。
 
 私と視線が合うと、子供たちはカイリの背後に隠れるように移動してわちゃわちゃと抱きしめあっている。
 
 ……怖がられてる?

 あ、そうか、知らない獣人がこんなにいたら、びっくりするだろう、突然来たのだから当たり前だ。
 
「カイリ、ディーテが目覚めたら呼んでください、外で待っていますね」
「あ、いえ、そのような事は」
 
 気を利かせたつもりだったが、身分的にそうもいかないらしい、するとルカが、ふとこちらを向いて、慌てるカイリに言う。
 
「レーナなら、対応出来るでしょ、誰かに呼んでこさせればいい」
「……わかりました、ルカ様。ミラ、レーナを呼んでこられますか?」
「うん!うん、行けるよっ」
「ありがとうございます。……皆様、申し訳ございません、すぐに別の者が到着しますので、少々お待ち頂けますか?」
「えぇ、大丈夫です」
 
 良かった、何とかなりそうだ。
 小さな、ミラと呼ばれた女の子は、私たちとすれ違う時に頭を下げて医務室を出ていく。随分と礼儀正しい子だ。
 
 しばらくすると女性がミラに連れられてやってきて私達はそのまま、ディーテを置いて応接室へと案内された。
 
 
 
 
 
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