お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

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人間の孤児院 その6

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「ごめん、ごめんなさい。僕、カイリに酷いことをして、まだ、孤児院にいるだなんて、思っても見なかった……」
「……酷い事とは、腕の話ですか、っ、それとも、私を置いて、孤児院に来なくなったことでしょうか?」
 
 ここに置いて……って、それだとまるで、ディーテが来るのが当たり前のように聞こえる。
 
 ……もしかすると、孤児院から引き取る予定だった……のかな。引き取るというか、召抱えるというか、人間の孤児院だ、もちろん聖職者になる者やこの孤児院を引っ張っていく、孤児以外の人間が必要にもなるけれど、大半が、孤児ではなくなり引き取られて出ていくはずだ。
 
 マナンルークの孤児院では、女児は嫁に貰われて行ったり、男児は働き手として、屋敷に仕えるものや一般の家庭を持ったりも出来るはずだ。

 けれど、タリスビアでは、人間というだけで一般職につくのは、難しいだろう。憶測でしかないけど、人間に理解のある貴族の館に引き取られているのかもしれない。
 下町で人間が暮らすよりもよっぽど安全だと思う。
 
 それでもって、カイリの言い方的にディーテは、カイリを引き取ることが決まっていたのに、すっぽかした……んじゃ。
 
「りょ、両方」
「そうですか」
 
 ディーテ、それは、さすがに恨みを買うと思う。カイリも生活がかかっているのに、急に怪我させられて、音信不通になったら怒るだろう。
 
 え、えぇ……どうしよう。カイリが怒るのも納得できるし、だからと言って、ディーテだって、悪気があったわけじゃないという事は知っている。
 この、酷く気まずい空間をどうしてくれよう。
 
「今更、それだけですか、私が許すと思いましたか」
「……っ、ごめん」
「謝罪などいりません」
 
 思ったより、溝は深そうだ。私は、ただ眺めている事しか出来ない。事情はわかっても、本人たちのことに口出しする事は出来ないし、緊迫した状況に、私はだくだく汗をかいて、どうしよっかなと当たりを見渡した。
 子供たちもルカも、用事が終わったらしく、こちらを心配そうに見守っている。
 ルカに関しては、いつもと変わらない表情だけど。
 
「貴方様が、来なくなってどれほど私がっ、苦労したか、考えもしなかったのでしょう?」
「……、うん、考えて、いなかった」
「破談になった、時の私の気持ちなど、どうでも良かったのでしょう?今更、っ、今更!突然、こんな」
 
 カイリの方も混乱しているようで、言葉を続けて行くうちに、感情的になっていく。ディーテは、追い詰められたように瞳に涙を貯める。
 
 そろそろ止めた方がいいのだろうか、私がディーテの手を引くと、彼は、私の存在を思い出して、こちらを向く。それと同じタイミングで、ルカが、明後日の方向を向いたまま、カイリに声をかけた。
 
「ねぇ、カイリ。……興奮すると咳がでるよ」
「……っ、は、はい。心得ております」
「ならいいけど。……はぁ、迎えが来たんだから、素直に喜びなよ、人間って、本当に面倒だよね」
「っ、ルカ様っ、私は!」
「心に決めている主がいるからって、今まで散々、引き取り話を断ったのは、君でしょ」
「ぁ、っ、……それは」
 
 おお!ルカ!ナイス助け舟!

 カイリはバツが悪そうに、視線を下げる。混乱していて、未だに状況を掴めていないディーテの代わりに、カイリに話しかける。
 
「カイリ、本当ですか?」
「……ロイネ様」
「ディーテを待っていたのですか」
 
 ディーテは、私とカイリを交互に見て、落ち着かないように私の手を握り返す。
 
 情けのない人だ。こういう時は、どんと構えておかないと、カイリに立つ瀬がないじゃないの。まったく。
 
 カイリは、私の問いかけに完全に勢いを失って、観念したように、少し笑った。
 
「そうです。…………あれからずっとお待ちしていました。ディーテ様」
「……ほ、本当に?」
「えぇ、嘘など付きません」
「僕なんか、僕は、君に怪我を、させたし、自分勝手な理由で、君を」
「昔から臆病な方でしたから、理由は想像が付きました。……今なら、私が貴方の手を引くことだってできます」
「僕が、怖くないの?」
「驚いた事はあっても、怖いと思ったことはありません」
 
 私がディーテの手をパッと離すと、久しぶりの親友との再会を喜ぶように、二人は、抱きしめあった。
 
 ちゃんと力加減出来ているらしく、カイリが倒れるようなことはない。
 ただちょっと苦しそうではあるが。
 
「カイ!カイ、ごめん、本当にごめん」
「許しません。どれだけ待ったと思っているのですか」
「うん、う゛んっ」
 
 ディーテは、またもぼろぼろと泣きながら抱きしめて、そのまま抱き上げた。少し体格差はあるが、成人頃の男性をこうも簡単に持ち上げるとは、見上げた筋力だ。
 
「変わりませんね、ディーテ様。結局、私を、召し上げてくださるのですか?」
「うん、僕、人間のお嫁さんを貰うんだ。君には色々とお世話になると思う!お嫁さんの従者もこの孤児院から探すよ」
「左様ですか、貴方様もう結婚だなんて、信じられませんね」
 
 ディーテは、すっかりトラウマを克服したらしい。人間が怖いという話をすっ飛ばして、もうタリスビアに来る嫁さんのことを考えている。

 ……なんだかな、もっと早く孤児院に来てあげて欲しかったよディーテ。カイリだって心細かっただろうに。というかカイリはあっさり許しすぎじゃないだろうか。
 
 まぁ……いいか、結果が全てだ。
 
「ロイネ様!カイと一緒に施設を案内しますよ」
「はいはい、泣いたり笑ったり、忙しいですねディーテは」
 
 私も席を立つ、なんとか丸く収まって良かった。カイリを抱えたまま、さきにディーテが医務室を出ていく。すると、子供たちもパタパタとそれについて行った。
 





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