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人間の孤児院 その7
しおりを挟む使っていたバインダーや用具をカバンに入れて、ルカも席を立つ。
「ルカ。ありがとう、助かったよ」
「……」
私が声をかけると、彼は耳を片方だけ寝かせて、しっぽの先だけ、パタパタパタと揺らしている。
返事は返ってこなかった、考え事でもしているのだろうか。私はそれ以上何も言わずに、ルカのそばに寄る。
彼のしっぽの動きを眺めていると、クルッと自分自身に巻き付けるように、しっぽを収納する。なんだこれ可愛いな。
「君は、どうせ居なくなるのに、何がしたいの?」
「……」
どうせ居なくなる……か。うん、その通りだ。良く深く考えないまま、こうしてここにいるが、何がしたいのかと問われれば、正当性のある答えが見つからない。
私にだって分からないのだ、当たり前のように帰らなければ、思ってしまう。その思考から考えを変えることが出来ない。自分の存在意義は何なのか、忘れてはダメだと、声が頭の中でするのだ。
考えようとするとぐにゃりと視界が歪んだ気がして、ビクッと体が震える。
ルカは、私を振り返った。
「……この時間だとみんなは外にいる。俺は帰るから、カイリに伝えておいて」
「わかった……ルカ、今夜お部屋にお邪魔してもいい?」
「……好きにしたら」
いいらしい。
ルカは、私を置いて医務室を出ていく。私も皆のところに向かわなければならないだろう。……外にいるって事は、入ってきた入口を目指せばいいのかな?
医務室を出て、とりあえず皆が向かった方向に歩き出す、玄関口の場所は正確には覚えていない。適当に歩き回って見るが、廊下を二週ぐらいしている気がする。
仕方が無いので、適当に扉を開けて見る、教室のような場所や、大きな寝室、リネン室、食堂、色々回ったのに、誰一人として子供がいない。外にいるらしいので、運動の時間か何かだろう。
「あれ~、えっと」
図書室から、隣の部屋を開けるとまた教室のような場所で、椅子と長テーブルが沢山並んでいる。
前面には黒板が着いており、大きな窓から冬の陽光が差し込んでいた。朝一にお城を出たので、まだ午前中だが、少し肌寒い。
窓の向こうで、大きな犬と、狸が、子供と戯れるように追いかけっこをしていて、子供たちは、おっかなびっくりしながらも楽しそうに走り回っている。
「……」
ここは、素敵な場所だ。
タリスビアの普通の公園や広場でも、こんな光景が見られたら、きっともっと素敵だ。
……。
……マナンルークの屋敷は、この時期大忙しだろう、住み込みの働き手は多くない、大抵が家庭を持っている。冬ごもりの準備は佳境で、みんな仕事に追われていて、約立たずの私は、鍵のかかった部屋で、ただ窓の外を眺めていた。
二階の部屋だったので、少し離れた場所にある、村の広場が見えたのだ。そこには、友達とはしゃぐ子供や、親と立派に冬の準備をする子供たちが見えた。
どちらでも良い、親でも……友達でも、どちらかが居たなら、私はここで一人では無かったのだろう。と、考えていた。
寂しかったのだろうか、よく分からない。
けれど、今は、出口は分からないが外に出ることが出来る。
私は、教室の窓を開けて、行儀は悪いが勝手に外に出た。
窓の位置が高かったので、足が引っかかって、転びそうになると、くんと襟首が掴まれて、体勢を立て直す。
見上げると、先程まで、元気にはしゃぎ回っていたクルスだった。
「……気をつけてくれ」
「ごめんなさい」
まさに目にも見えない速度で反応して、私を助けてくれたらしい、情けなさから謝ると、彼は少し笑って、言う。
「怒ってない、そう落ち込むな」
「……」
ここは……タリスビアは、あの屋敷とは違う場所だ。
わかっていた事なのに、たった今、わかったようなそんな気がした。
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