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手仕事の授業 その2
しおりを挟むお、遅かった!
箱は砕けて、中身がバラバラとこぼれ落ちる。
もしかするとと思っていたが、まさか本当に大破するとは!
隣にいたカイリがビクッと反応して、ディーテの体に傷が出来ていないかと心配している。
大丈夫だろう、針は皮の袋の中に入っているから、刺さることはない。
「……ロイネさま?」
ディーテは、ぱちぱちと瞬きをして、自分の手元を見る。どうやら自分のせいで壊してしまったと思っているらしい。
彼の瞳がうるっと揺らいだ。
「……仕方ないですね、獣人の魔力に耐えきれなかったのでしょう。ディーテは悪くないですよ」
「良かった、ほら、ロイネ様もこう言っている事ですし、私がディーテ様に作りますから」
私が慰めると、カイリも散らかった裁縫道具を片付けながらそう言う、ディーテはすぐに目をこすって、魔法で手早く落ちた物をテーブルに戻した。
おお、ディーテが魔法を使っているところ初めて見たな!
「ロイネ様、ごめんなさい、道具を壊してしまって」
「いいえ、大丈夫ですよ、今日は見学しててくださいね、今度また挑戦しましょう」
「はい」
私たちのやり取りに、少し様子を伺っていた子供達だったが会話を区切って、私も魔力を込めとると集中力は戻ったようで、数十分ほど、その作業を続けた。
そこからは、人間の子供達と私は順調に整作は進んだ。
作業に魔力を乗せる、相手を思い浮かべるという事を同時に行う事に躓く子が多かったが、相手の顔を見ながらやるという方法で克服した。
刺繍自体も器用な子が多く、多少の歪みや、間違いはあれど、贈り物になる範疇だ。
それから、子供達は総じて魔力の扱いが上手いような気がする。
屋敷の使用人たちが言っていた事だが手仕事は、初めてなら出来れば優秀、むしろできなくて当然ぐらいの話だった。
それが、ここに居る子供達は全員、ただの刺繍になってしまうことは無かった。全員、魔力をしっかりと編み込んで、完成すると、魔力が消える。
……こ、こんなものなんだろうか。
私も教わった時は、できなくて、それから何度か練習をして出来るようになったのだけど……。
そういえば、人間以外が混じっている者には、どれほど器用でも出来ないらしいという事もわかった。
半獣人の子供達は、やはり人間よりも魔力が強いせいか、道具の方がダメになってしまう。
獣人は魔力を込める時点で、失敗したし、魔力が多すぎてもできないのだろう。
頭の中で情報を整理していると、私の刺繍も、いつの間にか完成間近だ。
仕上げに、ミラの事を考える。
とにかく、可愛いよね。藍色の髪をおさげにしていて、小さな野花のような素朴な可愛らしさがある。
あんな子が一生懸命仕えてくれたら、気の進まない仕事もやる気が出そうだ。
まぁ、どうせ、これを渡したら、家に来ない?と言ってるのと同意義だ。年頃になるまで待って、本人が希望してくれたら、来てもらう形がいいだろう。
アンジュの事もあるし、今から養うには、小さすぎる。
私の立場も安定していた方がミラも安心する筈だ。
将来、うちにおいで、守って育てて、一緒に生活しよう、それまで健康で、健やかに育ちますように。
私がそう願いを込めると、また、ジリッと聖痕が痛んだ。
手仕事をするのに邪魔だったので手袋は外している、焦げるような痛みに、思わず手の甲を確認すると、なんか少し光っている。
不気味、そして不快!
イラつきから少し手を早く動かした。
なんでこんなに痛いかなぁ、こっちは気分よく、手仕事をしているって言うのにさ。
痛みから、少し呼吸が浅くなった。
……聖痕が出てから、手仕事をするのは初めてだ、今までとは違うという事を嫌でも理解出来た。そしてこれからは、普通がコレになるのだ。慣れないといけないだろう。
しかし腹立つなぁ、これ。
なにか効果でもあるんだろうか、いや、あるか、あるんだろうな。……ミラに渡して大丈夫だろうか。
しかし、原材料は、タリスビア製の布と糸と私の魔力のみである。妙な反応が起こるとも考えにくい。
悪い事だけは怒らないように、彼女の幸せを願って、縫い終える。
「はぁ……治ったな」
一息つくと、痛みは嘘のように消えていて、聖痕の痛みが手仕事のせいだと確信する。
パタパタと右手を振っているとルイーザがパッと顔をあげる。ちらほらと完成したらしき子たちがそわそわし出す。
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