お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

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すれ違い その3

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「なんで……そ、そんな事いう、の」
 
 分からない振りをして、そしてほんの少しの、希望を託して言葉にする。ルカは刺すような瞳で、私を見た。
 
 ここに来たばかりの頃の笑っているのに、悪意のある視線。当初と違って言葉だけは、本当に思っている事のように聞こえた。
 
 つまり、私の事が、心底、大嫌いにみえる。
 
「君が嫌いで仕方ないから」
 
 私が思ったことと、ルカの言葉がリンクして、さあっと血の気が引く。
 
 なんで、どうして……分からない。

 こんなに嫌われる事をした覚えがない。ルカなら、話せばわかってくれると思っていた。そもそも、わかるだろう。
 初めからクルスと私が想い人なら、すぐに彼を選んでいたはずだし、昔から田舎の屋敷から出ることが出来なかったと知っているのだ、当然異国の王子と面識などあるはずがない。
 
 どう考えても、今までの行動が矛盾する。だから、ルカだって、本気にするはずないって、百歩譲って疑うかもしれないけど、ちゃんと話せば、わかってくれるって……私が思っていただけだ。
 
 それだけ、の事だったんだ、嫌われることだったんだ。
 ……そんなの。
 
「嫌だ……」
「……ははっ」
「ねぇ、嫌だ。やだ、絶対やだ!そんなの……認め……られない」
 
 考えられないくらい、大きな声が出た。
 
 考えるより先に言葉にする。どうしても、ルカがそうだと言っていても、私が嫌われる事をしたのだと自覚しても、認めたくなかった。
 
「……うるさいんだけど」
 
 私が大きな声をあげるので、苛立ったルカは笑顔を崩して、今度は随分怖い顔をして、私の方へと歩いてくる。
 
 私はその気迫に萎縮して、ソファに出来るだけ体を押し付けて小さくなる。
 
 逃げ出して、しまいたい。私は、馬鹿で無様で、惨めで、この場所から逃げ出したい。一人で舞い上がって、ルカの考えている事を一ミリも知らないで、好きだなんて言って。
 
 なんて間抜けなんだろう。一度、帰ろうか、帰って、お布団の中で気持ちの整理でもしようか。
 どこかダメだったのか、なんでルカがこんなに怒ってるのか考えて、それで……。
 
 でも、そしたら私はもう二度と、ルカに会いに来ないだろう。
 
 私は臆病だから、そのまま逃げちゃうんだろう。諦めるのだろう。
 だったら、それなら、きっとこの後逃げるのなら、どんなに傷ついたっていい。私は、結局諦めきれないのだろう。
 こういうところが、私の一番の欠点なんだろうな。
 
「出てけよ」
「いや」
「……」
 
 低い声が怖くて、ひたすらカーペットを見つめる。
 ふとルカが屈んで、私の座っているソファの背もたれに手をかけた。
 
「誠意を表してるつもりなら、意味ないよ」
「そんなんじゃない」
「じゃあ、何」
「納得行かないだけっ」
「何に」
「……ルカが、私を嫌いだって事!!」
 
 体が近くてドキドキすると言うよりは、肉食獣がすぐそばまで迫ってきているような、恐怖のドキドキだった。
 いつ、その爪で肉を抉られるのか、いつ牙を埋められるのか、怖くて、スカートの裾を握りしめる。
 
「君が裏切ったんだ……いや、そもそも、俺が誤解してた。人間は皆、姑息で醜悪な生き物なんだって知ってたのに」
「そんなの知らない」
「要はさ、君が嘘つきで、誰にでも愛想振りまく屑女って事、俺はわかったから、嫌いなんだけどなんで分からないわけ」
 
 嘘……なんてついていたつもりは無い、言っていなかっただけだ。それに、実際、ルカを裏切るようなこともしてない。本当だ。
 
「私、そんな人間じゃない。ルカだけだ!好きだって言ったもの、家族になりたいって思ったのも!」
 
 私が声を大にして言うと、思い切り右肩を掴まれ、ソファに押し付けられる。
 ミシッと体の奥が軋むような音がして、突然の事に私は顔をあげた。
 
「……くだらない嘘、つかないでくれる。こんなにクルスの魔力を纏っておいて、正直に言いなよ?あいつの物になったんだろ!!」
「っ、う」
「クルスからもさ!君の魔力を感じたよ!あいつの部屋に泊まったの知ってる!!気持ち悪い!本当に、人間は皆そうだ!!」
 
 怒鳴り返されて、耳がキインとした。顔が近くて、目が離せない。肩を抑えられて居るだけなのに、身動きが取れなくて、嘲笑とも取れるような表情に、私は押し負けないように何とか睨み返す。
 
「そんな事!言われても、なんにも無かった!魔力がどうとか分からない。でも、そんな事、簡単にしないよ!」
 
 確かに泊まった、けれど、私は正直そんな事が出来る程、体調が良くなかったのだ。貧血で目眩を起こすし、熱だって出る。私がクルスの部屋に泊まっていた事を知っているのなら、メイド達にでもアンジュにでも体調の事を聞いているはずだ。
 




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