お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

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主張 その4

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 ギルバートは大人で、クリスティナ様も私よりも沢山の事を考えられる人だ、経験も知識も叶わない、でも、間違えることはある。どんなに有能な人間でも、周りが見えなくなるということはあるのだ。
 
 その時に、誰かが止めてくれなければ、ならないだろう。姉様は、国で一番偉いのだから、腹心であるギルバートぐらいしか意見なんてできない。
 
「貴方こそ、自分の責務を考えてください!私を連れ戻してどうなりますか!私は必ずタリスビアに戻りたいと望むでしょう、逃亡して、暴言を吐いて自害するかもしれません、そんな事になったら姉様の精神はどうなりますか」
 
 まともな判断が出来ないほど、私を連れ帰ることに執着し、これからも尚、私を人形のように愛し続けたいと願う姉様の思いは、歪んでいる。
 
 問題を対処していっても、根本の解決が出来なければ、いつかは、姉様の命が危険に晒される。
 
「姉様を護るのが貴方の仕事でしょう!忠誠を誓っているんでしょうっ!だったら、何をするべきかギルバートは考えるべきです!!」
 
 精一杯、頭を回したつもりだ。
 ここにいないクリスティナ様の思惑を私が変えることは出来ない、ならば、ギルバート本人に私を連れて帰る事を考え直させるしかない。
 
 彼が意見をいう間もなく、私は声を張り上げる。
 
「帰って姉様を説得してください!私も手紙を出します!姉様が寂しく無いように、言葉を尽くしますから!」
「……」
 
 息が切れて、ここまで言ったのに、ギルバートはなんの反応も示さない、大きく表情を変えずに、少し眉を潜めた。
 
 ……だ、ダメか。……この人、本当は中身が無いんじゃなかろうか。もしくは私の見当違いで、ギルバートは本当に姉様の全部を肯定しているかのどちらかだ。
 
「……姫殿下は、勘違いをなさっていますよ」
 
 先程より少し気弱な声だった。
 彼は初めて私から視線を逸らし、適当に空を見つめる。
 
「姫殿下が思われるような、愛情ではないんです。クリスティナ様の思いは」
 
 あ……成功していたらしい。
 今話しているのは、ちゃんとギルバートだろう。
 
「クリスティナ様は、寂しさから姫殿下を呼び戻そうとなさっているのではありません」
「では、どうして」
「……依存しているのですよ、貴方様に」
 
 ……何となく、依存していると言われると、妙な感じだ。あまりピンと来ない。
 クリスティナ様は、少し贔屓目で見ても、私のことをペットぐらいに可愛がっているかなという程度だったと思うのだが、彼女が私に依存?
 
「必ず自分を害さないと、信用している相手が貴方様だけだったんです。唯一の血縁であり、人間関係、教育課程、全てを把握している、貴方様以外、クリスティナ様は信用を置けないのです。貴方様が居なければ、クリスティナ様は平常を保っていられません」
 
 初耳だ、常に従者に囲まれて、沢山の人と、朗らかに接していたから、てっきり私の事を愛玩動物だと思っているのだと勘違いしていた。
 
「そして、クリスティナ様が、マナンルークで地位を望む理由は貴方様です、彼女は貴方様と共に生活するために、王座を取りました。……この事実を知ってもなお、貴方様は帰らないと仰るのですか」
「……」
「いえ……仰るのでしょうね」
 
 もちろん、帰らないと言おうとしたが、ギルバートの声に遮られてしまった。
 彼は困ったように、口角だけ上げて笑う。この人にも感情というものがあったらしい、いつも一歩引いた所から、自分の一切感情を出さずにこちらを見ていたので、不思議な気分だ。
 
「貴方様は昔から、誰に教えられたわけでもなく、頑固でしたからね。血は争えないという事でしょうか」
 
 クリスティナ様も相当な頑固者らしい。まぁ、似たもの同士なのだろう。
 
 思わず笑みがこぼれる。
 
「そうかも知れません」
「……私は、貴方様が、こうして健在である事が確認できて満足です。……話は以上です。不躾な真似をして、申し訳ありませんでした」
「大丈夫です。私も知れてよかった」
 
 彼は、深々と頭を下げた。本当は、もう少し色々と話をしたい事はある、昔のこととか、姉様の事とかでも、この状況は、他人に知られてはまずい。
 
 話が終わったのなら、速やかに城から出てもらわなければ。
 
「では、失礼致します。……至急マナンルークに戻り、クリスティナ様にどうにか説明をせねばなりませんから」
「はい……が、頑張ってください……ね」
「えぇ、力の限り尽力致しますが、私の首が飛ぶか、クリスティナ様が納得するか、五分五分でしょうね」
「あ、はは、……あ、あぁ、そうでした。信用出来る相手が必要だと言っていましたよね」
「えぇ、言いましたが」
「クルスの事覚えていますか?彼なら、姉様も信用出来ると思いますよ。そのうちお婿に行くはずですから、仲良くしてください」
「誰の、婿に行くのですか」
「もちろん、姉様ですよ?」
 
 私がそういうと、ギルバートは、一瞬ぽかんとして、それから眉をひそめ、思考を巡らせる。
 
 あ!そうか、まだ、公表されていない事なのに、何故私は言ってしまったのだろう。
 仕方ない、今日の私はよく頑張った、もう普段ならぐっすりの時間帯だ、緊張が解けて、既に欠伸が出そうだ。
 
「今のは、内密でお願いします、まだ決定事項じゃないので」
「……分かりました。しかし、彼ですか、あ、あぁ、国が混乱しますね」
「確かに、まぁでも、大丈夫ですよ。クルス強いから」
 
 仕方ないというように私が笑うと、ギルバートは分かりやすく頭を抱えた。どうやら悩み事をふやしてしまったようだ。
 
 すると、扉の外からガタッと物音が響く、合図をしてくれと言ってないと思うが、そろそろ、終われと言うことだろうか。




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