お前のこと、猫ちゃんて呼んだろか!!

ぽんぽこ狸

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猫ちゃん その1

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「……ルカ……?」
 
 途中で二回ほど棚に衝突して、顔と腕が痛いが、どうにかルカの部屋にたどり着く事が出来た。側近達は気を使ってくれたのか、追いかけては来なかった。
 
 いや多分、どこかから見守っているだろうとは、何となく思うけれど、気配は感じない。
 
 部屋のあかりに目をくらませながらも、彼の部屋にそろりと中に入る。
 きちんと扉を閉めて、部屋の中央へ進むがルカの姿は無い。
 
「あれ、……ルカ、居ないの?」
 
 ウロウロして、くまなくルカを探すが、見当たらない。勝手に、他の場所を探すのも気が引けるので、彼が出てくるまで待つしか無いだろう。
 
 そもそも勝手に部屋に入った時点でマナー違反だけど、そこは許して欲しい。どうしても会いたいのだ、今がいい。
 もう深夜と未明の間ぐらいの時間だが、何故かここまで来ると、眠気は飛んでしまって、いつまでも起きていられそうだ。
 
 勝手にソファに腰かけて、部屋を見たわす。さっきから物音一つしないので、もしかして、別の場所に行ったのかな。
 それに、あの猫ちゃんの姿なら、どこでも夜を過ごせるだろう。
 廊下なんかで私に見つからないように丸くなってるかもしれない。
 
 そんな事を考えていると、本棚の下で何かが動いた。
 
 ……まさか、ね。
 あのルカだよ?本物の猫みたいに、本棚の下に隠れてるなんてあるわけ……。
 
 あるわけないと思ったのだが、確認せずにはいられなくなり、何となく近づき、それから、バッと本棚の下を覗き込んだ。
 
 すると暗闇で光る瞳とバッチリ目が合う。
 
「うわぁっ!」
 
 私が驚きの声をあげると、ルカの方も驚いたのか、ガタンと飛び上がったような音がした。
 
「あっ、ごめん驚かせて!大丈夫?」
 
 そんな狭いところで、飛び上がったら大変だろう。申し訳ないことをしてしまった。
 しっかしシュールである、成人男性が、本棚の下で息を潜めてるとか、もうとにかくシュールだ。
 
 まぁ、いいんだけど。というか、良かった。ここに居てくれて。
 
「……その姿だと喋れないか……」
 
 彼が今言えることといったら、ニャンかにゃーんのどちらかだけだろう。あぁ、でもそれなら酷い言葉を言われなくて済むからいいか。いつも、だいたい、喋っているようで、話をしていないのと同じだったから。
 
 私は、私の思っていることを言うだけだ。
 
「ルカ、あのさ、助けに来てくれてありがとう……」
 
 私が話しかけても、ルカは出てくるつもりは無いようだ。そのまま、本棚の前で足を崩して座った。
 行儀悪いけれど、部屋主が隙間から出てこないから、仕方ない。
 
「あとね……まぁ、なんか色々。うん。……私、ルカと結婚したいから、そのつもりで……よろしく」
 
 過去の話を聞いたこと、クルスがもう一度記憶を消してもいいと言ったことは、話さない。
 過去を聞いたのかと言われれば、嘘はつかないけれど、わざわざ言うことは無いだろう。私が、ルカを諦めないと決めたのは、どちらかと言えば、みんなの後押しだ。
 
 押し付けられたわけじゃない、選択肢があって、優しく背中を押された。大丈夫だと。
 だから、私はこうして、大胆なことが出来る。
 
 すると、シャーと威嚇音が帰ってきた。
 
 怒ってるのか、なんなのか。まあ、しかしルカはいつも意味不明なので、怒ってるよ不快だよと示してくれるだけ、いいだろう。
 
「ルカが嫌がっても変えないよ、私。もう決めたし」
 
 しかしまた、口論になるのは嫌だなぁ、出来れば、穏便にいきたい。
 美味しいお魚とかで許してくれないかな。
 
「出来れば仲良くしたいんだけど……無理かな、どうしたらいいか、わかんないや」
 
 あぁ、でも方法はあるか、ルカが、過去に縛られずに、私に接してくれる方法。
 あるにはあるけれど、実行していったら私の命がいくつあっても足りないのだけど、どうしようか。
 




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