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第18話
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「ルカさん、これうちで採れた野菜なんですけどいかが?」
「草ばかり食べさせられて飽きてるんじゃない?私ならそんなウサギみたいな生活させないのに」
「夜は寂しいんじゃない?私でよければ……今夜、どうかしら」
アンナとルカが出会った翌日、案の定村中の女性がルカを見に押しかけてきていた。
午前中はアンナの友人のお年寄りたちが来て、何やら生暖かい目で見られたのだが、午後になり突然若い女性たちが押し寄せてきた。朝の仕事が終わったからだろうか。
女性たちはルカを見るや否や、頬を染めて誘惑し始めた。
物で釣ろうとする者、家庭的であることを語り出す者、肉体を密着させる者……。
女性たちは若いとは言っても、エマより十歳は年上で結婚もしている。子供だっているというのに、隙あらば旦那から乗り換えようとしているのが透けて見えて、エマは吐き気を催しそうになった。
エマはこの手の女性が苦手だ。異性に興味がないエマは彼女たちの話題について行けず、幼いころから仲間外れにされてきた。
最近は高齢者の相手ばかりで、比較的歳の近い女性と関わることはなかった。そのためか昔以上に距離感がつかめず、エマは対応を諦めて少し離れたところから眺めていた。
ルカは女性たちの申し出をやんわりと断り続けていた。もしかしたら、この手の女性には慣れているのかもしれない。傷つける言葉は使わずに、本当に上手いこと躱していた。
そのとき、ルカを取り囲んでいた一人の女性が苛立ったようにエマに近寄ってきた。ルカに相手にされなくて、痺れを切らしたのかもしれない。
エマは反射的に女性と距離を取ろうとするが、壁に凭れていたためそれは叶わなかった。女性は行く手を阻むようにエマの目の前に立ち、なめまわすようにエマのつま先から頭までを観察する。エマは視線の気持ち悪さから逃れるように目を逸らした。
「……こんな女のどこがいいのかしら。絶対あたしの方が女として優れてるのに。あんた、どうやってルカさんを落としたのよ」
女性は顔を歪めてエマを睨みつけた。エマは視線を合わせることなく、ただ時が過ぎるのを待とうとした。
その態度が気に入らなかったのか、女性はエマの胸倉を掴み顔を近づけてきた。
「無視してんじゃないわよこの根暗女!こんな色気も可愛げもないブスが、なんであんないい男と暮らしてんのかって聞いてんの!」
女性は興奮していたが、ルカに聞かれたくないのかそれなりに声を潜めていた。けれど怒鳴られているのと同じくらい強い圧を感じ、エマは不快感に眉をひそめた。
「別に、ルカは患者だから……」
「もうほとんど治ってんでしょ?適当な理由つけてんじゃないわよ。ていうかあんた、自分がもうあたしたちのこと言えないくらいババアだって気づいている?若くて未婚だからもしかしたら……とか思ってるかもしれないけど、絶対あり得ないから」
「そんなこと一言も言ってないでしょ……」
相手の言っていることは支離滅裂で、いくらでも論破できそうな気がした。しかしエマは苦手意識が先行してしまい、上手く言葉を返すことができない。
そもそも相手にしない方が良いのはわかっているが、エマには上手な切り抜け方がわからなかった。
しかもエマのはっきりしない態度が火に油を注いでしまったのか、女性はさらに眉を吊り上げ、エマを壁に思い切り押し付けた。背中を強く打ち付け、エマは痛みに顔を歪ませる。
「態度に出てるのよ!馬鹿にして!あたしたちよりいい男捕まえたからって見下してんじゃないわよ!!」
エマとしては全く見下したつもりはないが、興奮した女性には何を言っても通じないだろう。
祖母が生きていたときは、こういった相手からは祖母が守ってくれた。祖母は若者からは「魔女」と恐れられ、姿を現すだけで逃げる者がいたほどだ。
どうしたものか。エマが考えている間も、女性の暴言は続いている。
「大体医者を気取るなら、あの腕も治してあげなさいよ!まともな医者が診たら治ってたでしょうに、こんな藪医者に当たって可哀想!」
女性の言葉に、エマの心は刃物で貫かれたような衝撃を受けた。
失った腕を生やすことは不可能だろう。女性の言葉は無知の極みと言っていい。
しかし本当にそうなのか、エマは自信をもって不可能だとは言えなかった。なぜならこの辺境の村には、最新の医療技術が入ってこないからだ。
都会なら普通に治せたのかもしれない。治癒魔法ももしかしたら、半分人間であるルカには効いたかもしれない。
そもそもエマは医者ではない。薬の調合が専門であり、傷や病を正確に診断することに関しては、都会の医者より知識が劣っている。田舎には診断する専門家がいないから、体の不調全般を診ているに過ぎない。
エマは何も言い返せなかった。そうかもしれないと、エマ自身も思ってしまったのだ。
女性は落ち込んだ様子のエマに満足したのか、勝ち誇った顔でエマの胸元から手を離した。
エマは下がった視線を上げることができず、踵を返す女性の足元を眺める。
「ひっ!」
息を詰めるような女性の声に驚き、エマは顔を上げた。
女性の目の前には、逆光の中、黒い靄をまとい女性を見下ろすルカの姿があった。
金の瞳が鋭く光り、捕食者のように女性を睨みつける。その姿はまるで、想像で語られる魔王のようだった。
ルカは女性に向かって、黒い靄をまとった左腕を伸ばす。女性が恐怖で固まっているのが、背中からも伝わってきた。
エマはルカが女性を殺してしまうのではないかと思った。それに今、ルカは間違いなく魔族の姿をしている。正体がばれてはまずい。
エマは女性を庇おうと、女性を押しのけてルカの前に立った。
ルカの手がエマの頭に近づく。エマは頭を握りつぶされることを覚悟して、硬く目を閉じた。
しかし、エマの頭に触れたルカの手は、優しくエマの頭を撫でた。
エマが目を開けると、薄茶色の瞳をしたルカが微笑んでいる。魔王のような恐ろしさはどこにもなかった。
「エマ、大丈夫か?怪我はないか?」
ルカの問いに、エマは小さく首を縦に振る。するとルカはエマの背中に腕を回し、そのままエマを抱きしめた。
「ちょ、ルカ!?」
エマは突然のことに驚きの声を上げた。しかもこんなことをされたら、女性たちからのやっかみが増長してしまう。
そう思いルカの腕から抜け出そうとするが、その力は思いのほか強く、藻掻いてもびくともしなかった。
ルカは安心したように、ほっと息をついた。
「よかった。エマが傷つけられたら、気が狂ってしまうところだった」
本当は壁に打ち付けられた背中がまだ痛むが、それを言ったら今度こそルカは女性を殺してしまう気がして、エマは何も言わなかった。後でこっそり薬を塗ろう。
ルカはそっと腕を解き、先ほどエマに罵声を浴びせた女性に視線を向けた。女性は怯えたように縮こまり、急ぎ足で他の女性たちの元へ駆けていく。
他の女性たちは、何が起きたかわからないと言うような表情をしていた。ルカは女性たちに目を向ける。
「ここは薬を求める方が来るところです。健康な方はお帰りいただけますか?」
ルカは口元こそ微笑んでいたが、目は全く笑っていない。その顔はどう見ても「帰れ」と言っていた
女性たちにも伝わったのだろう。皆逃げるようにそそくさと出て行った。
扉が勢いよく閉まり、取り付けた枝がカラカラと音を立てる。その音が収まると、家の中は静寂に包まれた。
「……ルカ?」
まだルカが怒っているような気がして、エマは恐る恐る声を掛けた。
しかし予想に反し、振り向いたルカは穏やかな笑みを浮かべていた。
「何を言われたんだ?随分落ち込んでいただろう」
ルカは子供に話しかけるように、優しい声でそう聞いてきた。しかしエマは、それに答えることでルカが先ほどの女性を殺しに行くのではないかと怖くなった。
エマが答えないことを察したのだろう。ルカは小さくため息をついた。
「本当は聞こえていたんだがな」
「えっ」
ルカの答えにエマは慌てた。その様子に、ルカが「ふふっ」と小さく笑う。
「安心しろ。彼女たちには何もしない」
エマは安心してほっと息をついた。ルカを見ようとして顔を上げると、ルカの影がエマに覆いかぶさり、エマは再びルカの腕にすっぽりと抱きしめられた。
「えっ、ちょっと、なに、どうしたの?」
「……エマ、私は本当にエマに感謝している。だから、あまり自分を卑下しないでくれ」
ルカを押し返そうとしたエマの手が止まる。ルカは腕を離すことなく話を続けた。
「現実的な話をすると、都会の優秀な医者でも失った腕を治すことはできない。半分魔族である私には治癒魔法も効かない。今のところ、この腕を治す術はないんだ。普通の医者なら諦める。だが、エマは治そうとしてくれているんだろう?」
「……気づいてたんだ。あたしが、腕を治す方法を探してること」
ルカは小さくうなずいた。
「正直なところ、私は腕が治らなくても構わない。だが、治そうとしてくれるエマのその気持ちが、私にはたまらなく嬉しい。誇りに思ってくれ。エマは私にとって、どんな医者よりも優秀で、患者に寄り添ってくれる優しい人だ」
ルカの腕に力がこもる。その言葉が嘘ではないことが伝わってくるようだった。
エマは柄にもなく泣きそうだった。今まで自分のことを肯定してくれたのは、失ってしまった家族だけだった。
ルカの優しさに甘えるのは、離れがたくなってしまいそうで怖かった。けれど、今だけは。
エマはルカの背中に両手を回し、その胸に顔を押しつけるようにして、そっと目を閉じる。
全身を包む温かさに、心の壁が溶かされていくような心地がした。
「草ばかり食べさせられて飽きてるんじゃない?私ならそんなウサギみたいな生活させないのに」
「夜は寂しいんじゃない?私でよければ……今夜、どうかしら」
アンナとルカが出会った翌日、案の定村中の女性がルカを見に押しかけてきていた。
午前中はアンナの友人のお年寄りたちが来て、何やら生暖かい目で見られたのだが、午後になり突然若い女性たちが押し寄せてきた。朝の仕事が終わったからだろうか。
女性たちはルカを見るや否や、頬を染めて誘惑し始めた。
物で釣ろうとする者、家庭的であることを語り出す者、肉体を密着させる者……。
女性たちは若いとは言っても、エマより十歳は年上で結婚もしている。子供だっているというのに、隙あらば旦那から乗り換えようとしているのが透けて見えて、エマは吐き気を催しそうになった。
エマはこの手の女性が苦手だ。異性に興味がないエマは彼女たちの話題について行けず、幼いころから仲間外れにされてきた。
最近は高齢者の相手ばかりで、比較的歳の近い女性と関わることはなかった。そのためか昔以上に距離感がつかめず、エマは対応を諦めて少し離れたところから眺めていた。
ルカは女性たちの申し出をやんわりと断り続けていた。もしかしたら、この手の女性には慣れているのかもしれない。傷つける言葉は使わずに、本当に上手いこと躱していた。
そのとき、ルカを取り囲んでいた一人の女性が苛立ったようにエマに近寄ってきた。ルカに相手にされなくて、痺れを切らしたのかもしれない。
エマは反射的に女性と距離を取ろうとするが、壁に凭れていたためそれは叶わなかった。女性は行く手を阻むようにエマの目の前に立ち、なめまわすようにエマのつま先から頭までを観察する。エマは視線の気持ち悪さから逃れるように目を逸らした。
「……こんな女のどこがいいのかしら。絶対あたしの方が女として優れてるのに。あんた、どうやってルカさんを落としたのよ」
女性は顔を歪めてエマを睨みつけた。エマは視線を合わせることなく、ただ時が過ぎるのを待とうとした。
その態度が気に入らなかったのか、女性はエマの胸倉を掴み顔を近づけてきた。
「無視してんじゃないわよこの根暗女!こんな色気も可愛げもないブスが、なんであんないい男と暮らしてんのかって聞いてんの!」
女性は興奮していたが、ルカに聞かれたくないのかそれなりに声を潜めていた。けれど怒鳴られているのと同じくらい強い圧を感じ、エマは不快感に眉をひそめた。
「別に、ルカは患者だから……」
「もうほとんど治ってんでしょ?適当な理由つけてんじゃないわよ。ていうかあんた、自分がもうあたしたちのこと言えないくらいババアだって気づいている?若くて未婚だからもしかしたら……とか思ってるかもしれないけど、絶対あり得ないから」
「そんなこと一言も言ってないでしょ……」
相手の言っていることは支離滅裂で、いくらでも論破できそうな気がした。しかしエマは苦手意識が先行してしまい、上手く言葉を返すことができない。
そもそも相手にしない方が良いのはわかっているが、エマには上手な切り抜け方がわからなかった。
しかもエマのはっきりしない態度が火に油を注いでしまったのか、女性はさらに眉を吊り上げ、エマを壁に思い切り押し付けた。背中を強く打ち付け、エマは痛みに顔を歪ませる。
「態度に出てるのよ!馬鹿にして!あたしたちよりいい男捕まえたからって見下してんじゃないわよ!!」
エマとしては全く見下したつもりはないが、興奮した女性には何を言っても通じないだろう。
祖母が生きていたときは、こういった相手からは祖母が守ってくれた。祖母は若者からは「魔女」と恐れられ、姿を現すだけで逃げる者がいたほどだ。
どうしたものか。エマが考えている間も、女性の暴言は続いている。
「大体医者を気取るなら、あの腕も治してあげなさいよ!まともな医者が診たら治ってたでしょうに、こんな藪医者に当たって可哀想!」
女性の言葉に、エマの心は刃物で貫かれたような衝撃を受けた。
失った腕を生やすことは不可能だろう。女性の言葉は無知の極みと言っていい。
しかし本当にそうなのか、エマは自信をもって不可能だとは言えなかった。なぜならこの辺境の村には、最新の医療技術が入ってこないからだ。
都会なら普通に治せたのかもしれない。治癒魔法ももしかしたら、半分人間であるルカには効いたかもしれない。
そもそもエマは医者ではない。薬の調合が専門であり、傷や病を正確に診断することに関しては、都会の医者より知識が劣っている。田舎には診断する専門家がいないから、体の不調全般を診ているに過ぎない。
エマは何も言い返せなかった。そうかもしれないと、エマ自身も思ってしまったのだ。
女性は落ち込んだ様子のエマに満足したのか、勝ち誇った顔でエマの胸元から手を離した。
エマは下がった視線を上げることができず、踵を返す女性の足元を眺める。
「ひっ!」
息を詰めるような女性の声に驚き、エマは顔を上げた。
女性の目の前には、逆光の中、黒い靄をまとい女性を見下ろすルカの姿があった。
金の瞳が鋭く光り、捕食者のように女性を睨みつける。その姿はまるで、想像で語られる魔王のようだった。
ルカは女性に向かって、黒い靄をまとった左腕を伸ばす。女性が恐怖で固まっているのが、背中からも伝わってきた。
エマはルカが女性を殺してしまうのではないかと思った。それに今、ルカは間違いなく魔族の姿をしている。正体がばれてはまずい。
エマは女性を庇おうと、女性を押しのけてルカの前に立った。
ルカの手がエマの頭に近づく。エマは頭を握りつぶされることを覚悟して、硬く目を閉じた。
しかし、エマの頭に触れたルカの手は、優しくエマの頭を撫でた。
エマが目を開けると、薄茶色の瞳をしたルカが微笑んでいる。魔王のような恐ろしさはどこにもなかった。
「エマ、大丈夫か?怪我はないか?」
ルカの問いに、エマは小さく首を縦に振る。するとルカはエマの背中に腕を回し、そのままエマを抱きしめた。
「ちょ、ルカ!?」
エマは突然のことに驚きの声を上げた。しかもこんなことをされたら、女性たちからのやっかみが増長してしまう。
そう思いルカの腕から抜け出そうとするが、その力は思いのほか強く、藻掻いてもびくともしなかった。
ルカは安心したように、ほっと息をついた。
「よかった。エマが傷つけられたら、気が狂ってしまうところだった」
本当は壁に打ち付けられた背中がまだ痛むが、それを言ったら今度こそルカは女性を殺してしまう気がして、エマは何も言わなかった。後でこっそり薬を塗ろう。
ルカはそっと腕を解き、先ほどエマに罵声を浴びせた女性に視線を向けた。女性は怯えたように縮こまり、急ぎ足で他の女性たちの元へ駆けていく。
他の女性たちは、何が起きたかわからないと言うような表情をしていた。ルカは女性たちに目を向ける。
「ここは薬を求める方が来るところです。健康な方はお帰りいただけますか?」
ルカは口元こそ微笑んでいたが、目は全く笑っていない。その顔はどう見ても「帰れ」と言っていた
女性たちにも伝わったのだろう。皆逃げるようにそそくさと出て行った。
扉が勢いよく閉まり、取り付けた枝がカラカラと音を立てる。その音が収まると、家の中は静寂に包まれた。
「……ルカ?」
まだルカが怒っているような気がして、エマは恐る恐る声を掛けた。
しかし予想に反し、振り向いたルカは穏やかな笑みを浮かべていた。
「何を言われたんだ?随分落ち込んでいただろう」
ルカは子供に話しかけるように、優しい声でそう聞いてきた。しかしエマは、それに答えることでルカが先ほどの女性を殺しに行くのではないかと怖くなった。
エマが答えないことを察したのだろう。ルカは小さくため息をついた。
「本当は聞こえていたんだがな」
「えっ」
ルカの答えにエマは慌てた。その様子に、ルカが「ふふっ」と小さく笑う。
「安心しろ。彼女たちには何もしない」
エマは安心してほっと息をついた。ルカを見ようとして顔を上げると、ルカの影がエマに覆いかぶさり、エマは再びルカの腕にすっぽりと抱きしめられた。
「えっ、ちょっと、なに、どうしたの?」
「……エマ、私は本当にエマに感謝している。だから、あまり自分を卑下しないでくれ」
ルカを押し返そうとしたエマの手が止まる。ルカは腕を離すことなく話を続けた。
「現実的な話をすると、都会の優秀な医者でも失った腕を治すことはできない。半分魔族である私には治癒魔法も効かない。今のところ、この腕を治す術はないんだ。普通の医者なら諦める。だが、エマは治そうとしてくれているんだろう?」
「……気づいてたんだ。あたしが、腕を治す方法を探してること」
ルカは小さくうなずいた。
「正直なところ、私は腕が治らなくても構わない。だが、治そうとしてくれるエマのその気持ちが、私にはたまらなく嬉しい。誇りに思ってくれ。エマは私にとって、どんな医者よりも優秀で、患者に寄り添ってくれる優しい人だ」
ルカの腕に力がこもる。その言葉が嘘ではないことが伝わってくるようだった。
エマは柄にもなく泣きそうだった。今まで自分のことを肯定してくれたのは、失ってしまった家族だけだった。
ルカの優しさに甘えるのは、離れがたくなってしまいそうで怖かった。けれど、今だけは。
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