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近衛騎士の悩み (本編お休み)

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貴族家に男子として生まれても継ぐ爵位がなければ、早い内からその先を視野に入れるように言われる。文官になるにも、一人娘を持つ貴族家へ婿入りするにも優秀でなければならない。若しくは鍛えに鍛えまくって騎士になるか。

ただ貴族家に生まれたのなら、同じ騎士でも近衛騎士を目指すのが当然のこと。ステータスも報酬も良いのだから。
選ばれた者だけが成れる騎士、それが近衛騎士だ。

その近衛騎士第二部隊の副長である、パーシバル・ルウェリンは困っていた。他の隊員からそれとなく弟へ意見するよう頼まれたのだ。しかし、弟は数日前から王配。パーシバルが『何仕出かして迷惑を掛けているんだ』と怒れる相手ではなくなってしまった。否、意見か。
そう、意見。皆、気を利かせてそうは言ってくれているが…。寧ろ怒れることの方が良かったとはこの時のパーシバルは知らない。

「はあー」
パーシバルは深いため息を一つ吐き出した。
「仲が良いんだから、湯殿でやるくらいいいだろう」
序に相談された隊員には言えなかった反論も吐き出した。

王女と王配三人が湯殿へ向かう時間に護衛をしていた者全員が口を揃えて言うのだ。
『漏れ聞こえてくる声が艶めかし過ぎて、困る』と。それに何をやっているかも分かってしまう言葉が飛び交っているとも。国としては四人がどこでも仲良く過ごしてくれる方が良い。慶事が早くにやって来る可能性が高まるのだから。
それに皆経験の一つや二つあるんだから、何を今更と言ってやりたい。

まあ頼まれたからといって、引き受けたわけではないとパーシバルは考え直した。明日の日中はたまたまブラッドリーの護衛担当。公務は国王陛下との面談のみ。一対一ではなく、全員でと聞いている。だから、もしもルイスが話し掛けてきたら、皆からの言葉を少しくらい伝えてあげればいいと思ったのだった。いくら兄弟でも、こちらから王配であるルイスへは話しかけることは出来ないのだから。

と、昨日は思っていた。
しかし意見をしてくれた全員へ謝りたい。酷過ぎる、というか本当に艶めかし過ぎる。あの王女殿下がそんなことを言うとは。
しかも、あの三人はそんなことを国王陛下の唯一の娘である王女殿下にさせているとはけしからん。だけど、三人は王配だから、けしからんなんて口が裂けても言えない。
そして切実な問題。全員が口を揃えて言っていた、『その後の業務に支障が出る』は本当だった。これは隊長にお願いして、湯殿での護衛後は休憩が取れるようにしないと治まらない。一緒に控えているメイドに今すぐお願いしたいくらいだ。彼女たちは殿下達の為のメイドであることは分かっているが、本当にお願いしたい。

しかしまだ護衛は続く。治まりが悪くとも。否、王女殿下のタオルに包れただけでルイスに横抱きされている姿のせいで更に落ち着かない。あの声の主のその姿は目のやり場に困る。本当は護衛対象として見続けなくてはならないのに。
男色の護衛ならば、ジュリアンのあの水気を含んだ髪が首筋に纏わりつく姿にやられるだろうし。

パーシバルは決心した。近衛騎士としての任務を遂行する為に湯殿特別ルールを隊長へ申し入れようと。馬鹿な弟が原因でもあるのだから、親である団長を使ってでもそうしなければならないと誓ったのだった。

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