【本編完結】死んだあとに運命だと言われても、

社菘

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第12章

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イヴァンのおかげでレティネ教会はほとんど再建した。

そしてこの国のオメガ保護法も変わったのだ。

まずロードメリア出身のオメガには出生時にオメガ出生書の届出が義務化された。

そして発情期が来た期間から番が見つかるまでの間、抑制剤を無償で提供することになった。ただこれはオメガだけではなく、アルファへの抑制剤も同様に平民以下の家庭で生まれたアルファには無償提供が義務付けられることとなった。こちらももちろん、医師の診断書が必要だ。

もちろんそれは出生届だけではなく、きちんとした医師の診断も必要になる。役人だけではなく医師も各所に配置するようにして、虚偽の報告ができないように対策をした。

オメガは生まれた瞬間から見た目で分かるけれど、偽装しようと思えばできる。

なので診断をする医師には最初に暗示魔法を解除する魔法をかけてもらい、オメガの見分けをしてもらうようにしているのだ。

金銭的に困っているオメガの家庭には一定期間の補助金を出すことにすると、わざとオメガを他国に奴隷として売る貧困層の家庭も少なくなったという。

オメガ売買に関してはジルベールが担当してくれて、徹底的に密輸の取り締まりを行った。

そして抑制剤の無料化や補助金についての財源は、レイシスやアルバートが奔走してくれて実現したのだ。

街の各所に役人を配置して出生書を提出できるようになっており、王宮としてもオメガの数を把握できるようになった。

そして前よりも不明のオメガが少なくなったのは、他にも体制が整ったからである。

レティネ教会に簡易的な学校を設置して、オメガの将来の就職先支援などにも力を入れるようになったからだ。

イヴァンに仕えるノエルのように貴族のオメガの侍従になったり、レティネ教会の聖職者や教職者、保護した子供を育てる養育者になったりとさまざまである。

今のところはイヴァンやノエルのように成人したオメガが多くないので聖職者や教職者は王宮から派遣した人間でまかなっているが、もうすぐ成人を迎える子もいてその後は教会に残って働きたいと言ってくれているのだ。

そして、赤ん坊だったイオリアも順調に育っており、ファントムにさらわれる影はない。

あと5、6年ほどするとウィンターが言っていた『運命の番』とイオリアが出会うので、注意深く見守っていかないといけないのだ。

もしかしたらウィンターがもしまだ潜んでいるかもしれない『ファントム』の教団員に、イオリアが運命の番と出会う話をしているかもしれない。

だから出会う前にあの子がさらわれる危険性もある。

そうならないように、ノエルはイヴァンだけではなくイオリアの見守りもしているのだ。

「おはようございます、イヴァン殿下。朝食をお持ちしました」
「ああ、おはようノエル。さっきエイルが挨拶に来てくれたよ。あの子は私より早起きだな」
「それはすみません……!レイシス様の仕事を見に行きたいんだと言っていて、俺は薬師のところへ寄ってきたので入れ違いでしたね」
「ノエルに似て愛嬌があって可愛らしいな、エイルは。しっかりしたところはレイ似だから将来は二人でノエルを過保護に守るだろうな」
「本当にそうなったら恥ずかしいです……」
「ふふ、いいじゃないか。私もそんなふうに優しい子がほしいよ」

ノエルが持ってきた朝食を食べながら小さく笑うイヴァンの姿に胸がぎゅっと締め付けられた。

別にイヴァンとジルベールは不仲ではないしどちらかといえばラブラブだけれど、お互いに日々忙しいからか子供を作るタイミングを計っているのだろう。

「ノエルに頼みがあるんだ」
「頼みですか?」
「ノエルは私の先輩になるから、色々と聞きたくて」
「先輩って……1歳しか変わりませんよ」
「年齢もだけど、人生の先輩として」
「え?」

何か悩んでることがあるのかと思って俯いたイヴァンを見たけれど、よく見たら彼は柔らかく微笑んでいた。

「………多分、妊娠、したんだ」
「……っ!」
「まだジルには言ってない。なんとなく、そう感じるだけで気のせいかもしれないけど……秘密裏に医者を呼んでくれないか?」
「わ、分かりました」
「ふふ、ノエル……まだ確定じゃないんだから、泣かないで」
「ふ、う……すみませ…っ。でも、う、嬉しくて……!」

この時代に戻ってきたとき、もちろん今度は自分が死なないように頑張ろうと思ったけれど、この国の希望であるイヴァンが幸せに生きてほしかった。

結婚や子供が全てではないけれど、大好きな人と結婚をしたイヴァンには可愛い宝物が増えてほしかったのだ。

だから『もしかしたら』かもしれないけれど、その可能性だけでも嬉しかった。

「ノエルは本当に優しいな。心を許せる兄弟がいるようで嬉しいよ、いつも」

泣いているノエルを引き寄せ、笑いながらイヴァンは頭を優しく撫でてくれた。

その後、誰にも見つからないようにイヴァンの部屋に医師を呼び、妊娠しているかどうか診断してもらった。

「おめでとうございます、殿下。ご懐妊です」

医師の言葉をノエルとイヴァンで5回ほど聞きなおした。

あまりにも信じられなくて、嬉しくて。

でも5回とも医師は「ご懐妊ですよ」と嬉しそうに言ってくれたのだ。

「殿下……」
「の、のえる……」
「お、お、おめでとうございます……っ!」
「ああ……っ、ありがとう」

今度は正真正銘、二人で大泣きしながら抱き合った。

幸せの形は子供だけじゃないけれど、新しい命は確実に宝なのである。

それがオメガでもそうじゃなくても自分の体の中に宿った命は尊くて、これからの未来を担う大切な宝物なのだ。

「これからは偏食せずに、赤ちゃんのためにちゃんと食べてくださいね、殿下……!」
「……あはっ!もう、ノエル!ふふ、でも、君の言う通りきちんと食べるようにするよ」

自分の妊娠が分かったときも嬉しかったけれど、イヴァンの報告も今までの人生で感じたことがないほど、とても嬉しかった。


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