泉の精の物語〜創生のお婆ちゃん〜

足助右禄

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養育

ディアブレルへ

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次の日、私達は学校を休んで森へと向かう。
そのままディアブレルに行く為、同行を申し出て来たアルベルトとダークエルフの青年、ゾルも一緒だ。
出立前にアルハザーン達も屋敷にやって来ていた。

「ハル様、この度は賊の侵入を許したばかりか襲撃をさせてしまい申し訳ありません……」
「いいのよ。誰も怪我はしていないし、今回の事は私達を狙って起こした襲撃なので、もしかしたら以前の戦いへの報復なのかも知れない」

アルハザーンは謝罪をしに来たのだが、元々の火種は私達だった可能性がある。彼らの謝罪は受け入れて、私達はこれ以上争わなくて済む様にディアブレルと話をつけてくるつもりだ。

「腕の立つ騎士や魔導師を同行させましょう」
「いえ、アルベルトがいれば充分です」

これ以上の同行は返って足枷になりかねない。アルベルトにはウルゼイドの使者としての役割を担ってもらう。

颯太にトコヤミを呼んでもらって皆で
森へと戻る。

カクカミ、メト、ヤトを集めて事情を説明する。

「これから西の魔族の国ディアブレルに行ってきます」
『我らも共に参ります』

カクカミが前に出て言う。
三人は私達が襲撃を受けた事に怒っていた。その迫力にアルベルトとゾルは怯えていた。

「いえ、今回は私と颯太、トコヤミで行きます。他の者は留守番よ」
『ハル様達を狙って来たのでしょう?これはもう戦ですよ。今度こそ彼奴らを滅ぼしてしまいましょう』

メトはそう言うと、立ち上がり怒りの咆哮を上げる。

「気持ちは嬉しいし分かるけど、今回はウルゼイドも関係しているから私達の判断だけで動けないわ。それからそこのダークエルフ、ゾルとも約束をしました」

『しかし解せませんね。このダークエルフを生かしておく事も一族を救う事も。皆殺しで構わないのではありませんか?』
「彼らは卑劣な行為によって私達を襲う様に命じられていたのよ。あなた達が、私を人質に取られたら同じ事をするのではないかしら?」
『……そうですね。失礼しました』

穴から頭を出してゾルを睨みつけていたヤトは、反省したのか穴に引っ込んで頭の先を少しだけ出して言っている。

「あなた達には芽依を守っていて欲しいのよ。この子には怖い思いをさせてしまったから、みんながそばにいてあげて」
『承知しました』

皆、分かってくれた様だ。

「それでは今からディアブレルに行ってきます。トコヤミ、お願いね」
『承知』

トコヤミにはその姿を使って大いに役に立ってもらうつもりだ。

「お母さん……」
「芽依、大丈夫よ。すぐに戻ってくるからね」

芽依を抱き寄せて頭を撫でる。怖い事も心配もすぐに無くなるわ。

「みんなと良い子にして待っていてね」
「うん。お母さんもソータお兄ちゃんも気を付けてね」
「ああ。母さんは僕が護るから心配しないで」
『我には何も言ってはいただけないのですか……?』
「トコヤミ、いつも送ってくれてありがとう。お母さんとソータお兄ちゃんをお願い」
『はい。命に変えてもお守り致します』

トコヤミの頭を小さな手で撫でる芽依。彼は目を細めて気持ち良さそうにしていた。

「それでは行きます。カクカミ、留守を頼みます」
『畏まりました。どうかお気を付けて』

カクカミに乗って出発する。

彼は翼を羽ばたかせて一気に上昇すると西へと飛んでいく。

大森林を抜けて荒野を越えた先にディアブレルはあった。

ウルゼイドよりも更に大きな街に城。あれがかつてのブランザハーンの国、実際に見るのは初めてだ。

『何処に降りますか?』
「城の中庭に降りましょう。攻撃があった場合は反撃して構わないわ」
『御意』

トコヤミは咆哮を上げると低い高度でディアブレルの街の上を通り、城の中庭に着地した。

兵士や騎士が武器を手にやって来るが、トコヤミの迫力に気圧されているのか何もしてこない。

「私は東の大森林の長、泉の精霊のハルです。ここの長に話があって来ました。今すぐここに呼びなさい」

トコヤミの背中から見下ろしながら大きな声で用件を伝えた。
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