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王都

妖精

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ミスリルメダルをについては帰ってから考えるとして、取り敢えず次の階層に行く階段を見つけよう。

「なんかモンスターの湧き少なくね?」
「これなら次の階層に行っても大丈夫かもよ?」
「でも、こういう時って何かの予兆かも知れないって先輩が言ってたじゃん。」
「そうだったな。今日は帰ろうか!」
「「賛成!」」

3人の若い冒険者が通りかかった。
何かの予兆…。

「多分さっきのアレのせいじゃないでしょうか?」
「だ、だよね…。」

何か悪い事しちゃったな。

暫く進むと下に降りる階段を見つけた。

そのまま2人と1匹で下に降りていく。
2階層目も森だった。エリアの端は岩壁で出来ていて階段の終点はそこだった。

「この階層はどんな魔物が出るかな?」
「楽しみですね。」

暫く進んだけど魔物は現れない。
途中で冒険者ともすれ違った。

「なんか今日は少ないね。」
「気味悪りぃし帰ろうぜ。」
「だね。」

結構迷惑掛けちゃったのかな…。

人気も魔物の気配もない所で、それは起こった。

突然周りの木が動き出して道を塞ぐ。蔦等が絡まり合い、木々の間を塞いでいく。
直径にして10メートル位の広場になっている所に閉じ込められてしまった。

「この階層の罠かな?」
「このダンジョンにはこの様な罠があるとは聞いていませんね。」

昨日の宴会の時に聞いた情報を思い出してみる。…確かにこのダンジョンは罠とかは無くて、階層も少ないから入りやすいと聞いている。

『お前達だな!ミスリルを馬鹿みたいにドロップさせたのは!!』

どこからか声が聞こえる。

「誰ですか?」

『このダンジョンの主だ!よくもやってくれたな!お陰で色々メチャクチャだ!』

怒ってる…。

「ええと…ごめんなさい。ミスリルはお返しします。」

何処にいるかは分からないけど取り敢えず頭を下げて謝っておく。

『えっ…?返してくれるの?』
「はい。ちょっと実験していただけなので。本当にごめんなさい。」
『あ、いや…返してくれるんなら別にいいよ。』

そういいながら現れたのは手のひらに乗る位の妖精さんだった。想像していたのと違う所は、羽が竜のそれだった所かな。

「可愛い…。」

ユキさんが手を伸ばすと、その上にちょこんと着地する。

『あたしはドラゴンフェアリーっていうんだ。このダンジョンの主をやってる。』
「初めまして、ミナです。」
「ユキといいます。」

聞けば、ダンジョンはリソースといわれる一種のポイントで運営されていて、それが無くなると魔物が出せなくなったり、最悪階層自体が維持できなくなったりするらしい。

『いやービックリしたよ。1階層でレアドロップが大量に出て、リソースが空になっちゃうんだからさ。もうダメかと思ったよ。』

リソースが0になった場合、動けるのはダンジョンマスターのみ。そうなったら最後は大量にリソースを奪った張本人と直接対決をするのが決まりらしい。

『ところでさ、ミナって本当に人間?』

酷っ…。

「人間ですよ!」
『だってさ、あんな事出来るんだもん。人間じゃあり得ないって。』

「確かにとんでもない能力を持っていますが、人間で間違いありませんよ。」
「竜妖精よ。無礼な事を言うものではありません。ミナ様はこの私を倒したお方。普通の人間と同じに見るのは無礼です。」
『なにこの猫?スゴいエラそうなんだけど。』

ウルちゃんは飛び上がるとユキさんの手のひらの上にいたフェアリーさんを叩き落とす。
そのまま地面に押さえつける。

「なんだコンニャロー!やるかー!!」

ジタバタともがきながら抵抗している。

…猫が妖精と戯れている。
じゃなくて。

『へぇー。ウルディザスターねぇ。ただの猫にしか見えないけどー。』

ウルちゃんは私が抱えている。フェアリーさんには一応回復魔法をかけておいた。

「なんかごめんなさい。で、ミスリルを返そうと思うんですけど、ここに出していいですか?」
『うん。いいよ。半分も返してくれれば大丈夫。あとは持っていって。』
「はい。」

18万枚のミスリルメダルを取り出す。
フェアリーさんが手をかざすとメダルは地面に沈んでいく。

『あのさ…。』
「どうしました?」
『あたしに名前付けてくれない?』
「え、私が?」
『うん。名前が欲しいんだよ。』

迷惑掛けちゃったし、それくらいなら…。
妖精さんだから可愛い名前がいいかなぁ?
うーん…。
樹海の迷宮、植物、木、花…

「フィオレなんてどうかな?」
『フィオレ!スゴくいい!!』

クルクルと回りながら名前を繰り返し口にしている。

『ありがとう!今日からあたしはフィオレ!よろしくね!マスター!』
「へ?マスター??」

『名前をつけてくれたんだもん。今日からミナがあたしのマスターだよ!』

えぇ…ちょっと無理矢理じゃないかな?
ノスフェランさんといい、ダンジョンマスターってみんなこうなのかな?

「まあ、実害はありませんしいいんじゃないですか?」
「そうだけど…。」
「欲しいものがあったらいつでも言ってね!なんならダンジョンコアのアクセス権も譲渡するよー?」

そんな簡単に…。

「フィオレさんが管理していてください。ここに来る人は初心者が多いからやり過ぎない様にしてもらえると嬉しいかな。」

『りょーかい!あたしに任せておいて!』

よく分からない内にダンジョンマスターのマスターになってしまった。
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