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リアード王国

助言

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マサキさんのステータスを見せてもらう。

名前 マサキ 性別 男
種族 人間 年齢 72歳
職業 なし
レベル 82
筋力  255
耐久力 255
敏捷性 255
知力  255
魅力  255
幸運  255

生命力 2853560
精神力 2534600
気力  2764380

ギフト
なし
技能
なし
アーツ
なし
魔法
なし

レベルはウルちゃんと同じ、ステータスが全部255…。ステータス限界突破の効果かな?生命力、精神力、気力は流石としか言いようがない。
問題はその次、ギフト、技能、アーツ、魔法が一つもない。

「これが呪いの一旦だよ。スキル無しは意外と大変だ。」
「私は元々魔術師だったからもっと大変よ。」

どうやらネネさんもマサキさん同様の状態らしい。

「私は自業自得といった所だ。」

ハナさんのステータスは信じられない事にオール1だった。生命力までも…。

「転んだだけで死にそう。」

ソラちゃんが呟く。

「うむ。本当にしょうもない事で死にかねない身体をしている。これも私の呪いの影響なのだが。」
「俺は魔王をもっと違った形で救うことが出来たんじゃないかと後悔した。後悔した上で、勇者である事を辞めようと思った。救ってきた全ての人がそうだった訳ではないが、勇者を私利私欲に使おうとする者は多かったから。人類共通の敵が居なくなった時、次は人同士で醜い争いが起こるのだろうと確信していた。権力者達の言われるままに戦ってハナを追い詰めてしまった。…ルーティアには悪いが、俺を死んだ事にしてくれと頼んだんだ。」
「出会った頃は我儘な子供だったルーちゃんだけど、マサキと私の想いを汲んでくれて後の全てを引き受けてくれたの。」

そんな事があったんだね。それにしても世界を救った勇者の話を全然聞かない気がする。エリストで読んだ本にもルーティアさんの事しか書かれていなかったし。

「死んだ者には興味が無いんだろうね。でもそれでいいんだ。俺は誰からも忘れられたかった。ネネとハナと3人で生きていくと決めたんだ。」

マサキさんはハナちゃんの髪を撫でながら、愛娘に優しい眼差しを向けている。

「私の所為で歪な家族になってしまったが、私も2人の為に精一杯生きようと決めた。」

ハナちゃんは柔らかく笑うと私達の方を真っ直ぐ見つめながら言う。

「一つだけ助言をさせてほしい。大勢が巨悪だと言うものにも、そうなってしまったきっかけがあった筈なんだ。力による解決のみが全てではないと知っておいてほしい。」
「魔王はまた生まれるだろう。誰かが魔王を救ってやれたら俺達みたいな過ちが起こらずに済むかもしれない。もしも君たちがその立場になったのならば、俺達の言葉を思い出して、できる事をやってくれると嬉しい。」

マサキさんは申し訳なさそうな私達に言う。
私達は勇者ではないけど、もし私達で何かできる事があるのならやってみようと思う。

「さあさあ、折角お客さんが来てくれたのだから腕によりをかけて御馳走するわよ。」

パンパンと手を叩いて明るい声で言うネネさん。

「おう!さっき森で熊を仕留めてきたから鍋にするか!」

マサキさんも出会った時の明るい口調でそう言うと、外に出て行く。

「それまでは私が持て成そう。」

ハナちゃんが部屋に案内してくれる。フラフラと足元が覚束ない様子がハラハラする。
転んだだけで死んじゃうかも知れないのはちょっと怖い…。

「ハナちゃんにアクセサリを作ろうと思うんだけど、いいかな?」
「いいと思います。」
「このままじゃ心配だし、作ってあげなよ。」

ユキさんとリオさんは賛成の言葉を返してくれて、ソラちゃんは首肯してくれた。
インベントリの中で細工技能でアクセサリを作成する。ペンダントにして、チェーンとペンダントトップを別々のアクセサリとして作成してみた。

チェーンの付与には生命力+500を2つ、ペンダントトップには精神力と気力をそれぞれ+500ずつのボーナスをつけた。ついでに情報偽装も付けておく。

「出来ました。」
「早っ…。」

リオさんに呆れられたけど、気を取り直してハナちゃんにペンダントをプレゼントする。

「これを…私に…?」
「うん。身につけていればうっかり死ぬ様な事は無くなると思うから。」

そう言いながら首に掛けてあげる。

「こんな高価な物は貰えない。」
「気にしないで。今適当に作っただけだから。それにこれがあればお父さんとお母さんも安心できるよ。」
「む…そうか。ありがとう。心から礼を言おう。」

マサキさんとネネさんの事を考えたのだろう、ハナちゃんは素直に受け取ってくれた。

「嫌じゃなければ魔王の話を聞かせて欲しいんだけど。」
「勿論いいとも。」

リオさんが聞くとハナさんは快い返事をしてくれた。

ハナさんは転生前はハーフデビルという種族だったらしい。
同じ種族だけが住む村で暮らしていたのだけど、ある日人間がやって来て邪悪な種族を殲滅すると言い攻撃を始めた。
自警団や若者達を中心に抵抗はしたものの圧倒的な戦力差の前に為す術なく、戦闘は虐殺へと変わっていった。

「私達は誰に迷惑をかけるでもなく静かに暮らしていた。私達が何をしたというのだ。人間達は私たちを人とは思わぬ様な非道な行いをした。老人から幼子まで、命を弄び無残に殺していった。若い女性はもっと悲惨だ。兵士達の玩具にされて殺された。当時12だった私も例外ではなく、兵士の慰み者にされながら目の前で両親を、兄弟を、友人を殺されていったのだ。」

絶望と恐怖と怒りの感情がドロドロに混ざり合い、身体を支配して行くのを感じた。熱を帯び、やがてそれが爆発すると、辺り一体何も残っていなかった。この時ハナちゃんは身体の変質を感じていた。ハーフデビルには頭部に小さなツノがあるのだけどそれが大きくなっていて、背中にはコウモリの翼の様なものが、身体そのものも大きく成長していたそう。

「トリガーになっていたのは負の感情かしら?」
「恐らくそうなんだろう。それ以外に考えられない。」

リオさんの呟きに答えるハナちゃん。

「酷い話です。そんな行い、絶対許せません。」

ユキさんは涙を浮かべながら奥歯を噛み締める。

「あの場にそう思える者が大勢居れば未来は変わっていたかも知れない。同じ過ちを繰り返してはならない。」

ハナちゃんはユキさんの肩に手を置き優しく語りかけた。
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