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特別編3:異世界
交渉
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冒険者ギルドに掛け合うのは早い方が良いけど、私達は山賊の討伐から寝ないで動き続けていたからもう限界。
今日は孤児院の空いている部屋で寝かせてもらう事にした。
食料は全て孤児院に作った食料庫に納めて自由に使える様にしておいたので、あとはリムちゃんとアニエスさんとシャーナさんにお任せして私達は《洗浄》を掛けてベッドで眠る事に。
パルクアートンの毛はとても柔らかくて暖かい。横になったらすぐに眠ってしまった。
ーーーー
次の日、リムちゃんの作った朝食をいただいてから冒険者ギルドに行く事にする。念の為アンネさんは孤児院でお留守番だ。
ギルドに着くとシャーナさんが受け付けの人に話をしてギルドマスターとの面会を取り付けてくれた。
ギルドの2階にあるマスターの執務室に案内され、中に入ると白髪のお爺ちゃんが立派な机に書類を広げて書き物をしていた。
「アニエスや、昨日は大変だったな。お客人も、うちの者が迷惑を掛けて掛けて申し訳なかった」
ペンを置いてこちらを見るとゆっくりと喋り出す。
「面倒を起こして申し訳ありませんでした」
「よいよい。お主は何も悪くないのだからな」
優しい眼差しでアニエスさんを見て頷くお爺ちゃん。
「申し遅れた。儂はレギュイラ冒険者ギルドのマスターをしておるサージという」
「初めまして」
それぞれ名を名乗る。
「それで、代官の遣いが何用かね?」
サージさんがシャーナさんに向ける視線は冷たい。
「そう邪険にしないでくださいよ。今日はお願いがあって来たのです」
「代官の頼みなら聞く気はないぞ?」
「お願いがあるのは私達の方なんです」
アニエスさんが前に出て話をする。
「言ってみなさい」
「実は──」
アニエスさんは自分が留守の時にサトライヒ商会に孤児院の子が連れて行かれそうになった事、運営しているの教会が孤児を売却している事を説明する。
「今は領主様の権限をお借りして教会に孤児の売却を停止させているけど、いつまで効力があるか分からないわ」
シャーナさんがアニエスさんの話を引き継いで説明する。
「無断で権限を使ったのか?」
「こうするしか止める手立てが無かったのよ。勿論書状は出してある。代官にも働きかけようとしたけど、彼は代官と繋がっていた」
怒りを押し殺して話すシャーナさん。
「代官の手先だと思っていたが、芯はしっかりしておるようだな。話は大体分かった。孤児院の運営を冒険者ギルドでやれないかと言う事だな?」
「はい」
サージさんは腕を組んで目を閉じる。
沈黙したまま時間が経過していく。
やっぱりダメかと思い始めた頃、サージさんが目を開けて言った。
「よし、何とかしよう」
「本当に何とかなるの?」
「それを思案しておったのだ。司祭は孤児院をタダでは手放さないだろうが、勝算はある」
サージさんは何をする気なんだろう?
「聞き入れないのなら潰すまでだ」
…何か物騒な事を言ってる。
「代官に目をつけられるよ?」
「男爵の遣いが来れば代官をクビにしてくれるんだろう?」
「多分ね。上手くいかなくても恨まないでよ?」
「分かっとるわい」
シャーナさんも代官の癒着を許す気は無いみたい。
「アニエス、儂が司祭と話をつけるのに少し時間が掛かるだろうから、その間は孤児院を頼めるかね?」
「はい」
「手荒な真似をしてくるならこっちも力で解決するよ」
「そちらのお嬢さんは威勢がいいな」
ほのかさんを見て笑うサージさん。
威勢だけじゃなくて本当にやっちゃうからね。私もだけど。
「くれぐれも怪我をせんようにな」
執務室を出てそのまま孤児院へと帰る。
「うまくいって良かったね」
「はい」
「私達は孤児院にいればいいだけだね」
孤児院に帰ると子供達とアンネさんが出迎えてくれる。
「おかえり」
「ただいま。何か変わったことはありませんでしたか?」
「何も無かったよ」
昨日のアンネさんの脅しが効いたのかな。
「孤児院に手を出さなくなったのは良いけど、多分他に手を出しているんじゃないかな」
「それってどう言うことですか?」
「前にも話したけどこの街には孤児が多いんだよ。孤児院の受け入れ人数が足らなくて小さなグループを作って自分達で何とか生活してるんだ」
シャーナさんが説明してくれた。
この街は港だけに船乗りが多く、海難事故で帰らぬ人も多い。母親がいればまだ何とかなるけど、両親を失った子供達は身内に引き取られるか、それも駄目なら自分で生きていくしかない。
身寄りのない幼い子供は仕事にも就けず街の隅に追いやられる。
こうして孤児が増えていくそう。
「孤児院の収容人数は増えたし、助けてあげませんか?」
「管理する大人が居ないけどどうするの?」
シャーナさんが聞いてくる。
「リムちゃん位の子を教育してみんなの面倒を見られるように出来ないかな?」
ほのかさんの提案に私も賛成だよ。
でも管理者をどうするかよりも今は孤児達をここで保護することが優先だと思う。
「確かに、サトライヒ商会は孤児を捕まえて奴隷にしているからね。保護を優先するべきかも」
シャーナさんの案内で孤児達の所に行く事にした。
今日は孤児院の空いている部屋で寝かせてもらう事にした。
食料は全て孤児院に作った食料庫に納めて自由に使える様にしておいたので、あとはリムちゃんとアニエスさんとシャーナさんにお任せして私達は《洗浄》を掛けてベッドで眠る事に。
パルクアートンの毛はとても柔らかくて暖かい。横になったらすぐに眠ってしまった。
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次の日、リムちゃんの作った朝食をいただいてから冒険者ギルドに行く事にする。念の為アンネさんは孤児院でお留守番だ。
ギルドに着くとシャーナさんが受け付けの人に話をしてギルドマスターとの面会を取り付けてくれた。
ギルドの2階にあるマスターの執務室に案内され、中に入ると白髪のお爺ちゃんが立派な机に書類を広げて書き物をしていた。
「アニエスや、昨日は大変だったな。お客人も、うちの者が迷惑を掛けて掛けて申し訳なかった」
ペンを置いてこちらを見るとゆっくりと喋り出す。
「面倒を起こして申し訳ありませんでした」
「よいよい。お主は何も悪くないのだからな」
優しい眼差しでアニエスさんを見て頷くお爺ちゃん。
「申し遅れた。儂はレギュイラ冒険者ギルドのマスターをしておるサージという」
「初めまして」
それぞれ名を名乗る。
「それで、代官の遣いが何用かね?」
サージさんがシャーナさんに向ける視線は冷たい。
「そう邪険にしないでくださいよ。今日はお願いがあって来たのです」
「代官の頼みなら聞く気はないぞ?」
「お願いがあるのは私達の方なんです」
アニエスさんが前に出て話をする。
「言ってみなさい」
「実は──」
アニエスさんは自分が留守の時にサトライヒ商会に孤児院の子が連れて行かれそうになった事、運営しているの教会が孤児を売却している事を説明する。
「今は領主様の権限をお借りして教会に孤児の売却を停止させているけど、いつまで効力があるか分からないわ」
シャーナさんがアニエスさんの話を引き継いで説明する。
「無断で権限を使ったのか?」
「こうするしか止める手立てが無かったのよ。勿論書状は出してある。代官にも働きかけようとしたけど、彼は代官と繋がっていた」
怒りを押し殺して話すシャーナさん。
「代官の手先だと思っていたが、芯はしっかりしておるようだな。話は大体分かった。孤児院の運営を冒険者ギルドでやれないかと言う事だな?」
「はい」
サージさんは腕を組んで目を閉じる。
沈黙したまま時間が経過していく。
やっぱりダメかと思い始めた頃、サージさんが目を開けて言った。
「よし、何とかしよう」
「本当に何とかなるの?」
「それを思案しておったのだ。司祭は孤児院をタダでは手放さないだろうが、勝算はある」
サージさんは何をする気なんだろう?
「聞き入れないのなら潰すまでだ」
…何か物騒な事を言ってる。
「代官に目をつけられるよ?」
「男爵の遣いが来れば代官をクビにしてくれるんだろう?」
「多分ね。上手くいかなくても恨まないでよ?」
「分かっとるわい」
シャーナさんも代官の癒着を許す気は無いみたい。
「アニエス、儂が司祭と話をつけるのに少し時間が掛かるだろうから、その間は孤児院を頼めるかね?」
「はい」
「手荒な真似をしてくるならこっちも力で解決するよ」
「そちらのお嬢さんは威勢がいいな」
ほのかさんを見て笑うサージさん。
威勢だけじゃなくて本当にやっちゃうからね。私もだけど。
「くれぐれも怪我をせんようにな」
執務室を出てそのまま孤児院へと帰る。
「うまくいって良かったね」
「はい」
「私達は孤児院にいればいいだけだね」
孤児院に帰ると子供達とアンネさんが出迎えてくれる。
「おかえり」
「ただいま。何か変わったことはありませんでしたか?」
「何も無かったよ」
昨日のアンネさんの脅しが効いたのかな。
「孤児院に手を出さなくなったのは良いけど、多分他に手を出しているんじゃないかな」
「それってどう言うことですか?」
「前にも話したけどこの街には孤児が多いんだよ。孤児院の受け入れ人数が足らなくて小さなグループを作って自分達で何とか生活してるんだ」
シャーナさんが説明してくれた。
この街は港だけに船乗りが多く、海難事故で帰らぬ人も多い。母親がいればまだ何とかなるけど、両親を失った子供達は身内に引き取られるか、それも駄目なら自分で生きていくしかない。
身寄りのない幼い子供は仕事にも就けず街の隅に追いやられる。
こうして孤児が増えていくそう。
「孤児院の収容人数は増えたし、助けてあげませんか?」
「管理する大人が居ないけどどうするの?」
シャーナさんが聞いてくる。
「リムちゃん位の子を教育してみんなの面倒を見られるように出来ないかな?」
ほのかさんの提案に私も賛成だよ。
でも管理者をどうするかよりも今は孤児達をここで保護することが優先だと思う。
「確かに、サトライヒ商会は孤児を捕まえて奴隷にしているからね。保護を優先するべきかも」
シャーナさんの案内で孤児達の所に行く事にした。
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