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セックスしないと出られない部屋にノンケ球児2人詰め込んでみました〜4日目〜
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目が覚めた瞬間、
また、あの嫌な感覚が、背中にぴたっと貼りついていた。
アンダーシャツ。
「っ……またかよ……」
低く、ため息混じりの声が漏れる。
寝る前、俺たちはたしかに全裸だった。
シャツも、ソックスも、スパイクも、ぜんぶ脱いだ。
なのに、起きたときには、またこの格好。
アンダーシャツに、ロングソックス、そしてスパイク。
上半身と足元まで“いつもの練習のスタイル”なのに、肝心の下半身、パンツだけはやっぱり消えていた。
「っうわ……」
胸元を触った瞬間、指先が止まった。
アンダーの、脇の内側。そこに、乾いたゴワつきがあった。
それは、精液だ。
昨日、俺が拭いたやつ。
間違いなく、あの白いやつが、薄く染みて、パリパリになって、また体にくっついてる。
「……はぁ!? 気持ちわり……!」
飛び起きて、即座にシャツを脱ぐ。
康平も同じように起きてて、
「毎日毎日、なんやねん……」ってぼやきながら、自分のシャツを引きちぎるように脱いだ。
ふたりとも、ベッドの横で肩をすくめたまま、無言になる。
上半身裸で、下はなにも履いてなくて、スパイクとソックスだけ履いてる状態。
「……なんかもう、恥ずかしいとかないな」
「ほんまな……」
朝っぱらから、2本のチンコが、ぴょこぴょこと無防備にぶら下がってる。
しかもそのどちらも、まだ少し萎えきってなくて、微妙に膨れ上がったまま。
朝勃ちってやつだ。寝起きだし、仕方ない。
「……なぁ、勇人、揺らすな揺らすな、チンコ、ぶーらぶーら、揺れとるから」
「揺らしてねーから。歩いてるだけで、勝手に揺れてんだよ。どうしようもないだろ」
「いやいや、ほな、揺れとるってことやん。ぶらーん、ぶらーん、てなってるやん」
「てめぇが見なきゃいいだろ……」
羞恥を通り越した、軽口の叩き合い。
一通り言い合った後、思う。
マジで、なんなんだよ、この部屋は。
純白の壁、天井、床。
ドアもない。窓もない。
継ぎ目らしい継ぎ目が、どこにもない。
まるで“最初からこんな形の箱”の中に押し込まれてるみたいだった。
「なぁ、ほんま、変やと思わへん?」
「どこから?」
「全部や。まずな、ドアも窓もない。壁も、何もかも。そんで、天井も、全部、真っ白。なんなんやろな。この空間」
「……うん」
「で、毎朝なんでか、スパイクとシャツとソックスだけは着せられとる。でもパンツは一回も戻ってこーへん」
「……うん」
「犯人、てか……誰かが入ってきとる?俺らが寝てる間に着せにきてるってことやんな……?」
「……でも、着せる意味ってなんだよ」
「さぁ?なんなんやろな。でも一個、犯人?の目的はハッキリしとるよな」
「目的?」
康平が、ぼそっと言った。
「……俺らに、セックスさせるっていう」
「……じゃあ、なんのために、セックス?」
「……さぁ?それこそ、わけわからへん」
康平は頭をポリポリ掻きながら、ベッドの方へ目をやる。
「あと、不思議なんはな。毎朝、俺らが着てるこのユニとかスパイクは“汚れたやつ”やのに、ベッドのシーツだけは、ずっとピッカピカやねん。
汚れとか汗とかついたままのくせに、なんでか、全然汚れてへん。……洗われてる?いや……」
「……ほんとだ……」
ベッドの上を触ってみる。
サラッとしてる。匂いもしない。
昨日までの粘っこい感触が、なにも残ってない。
「普通、どっかしら汚れてるやろ、俺ら、スパイク履いたまま寝とるんやから」
改めてシーツを凝視する。天井や、壁同様の、純白。土汚れ一つとしてない。
康平が、ぽつりと呟いた。
「これ、ほんまに、現実なんかな?」
「……俺も、思ってた。なんか……全部が変すぎる」
ふたりして、壁を見つめた。
真っ白。
どこまでも白。
目が滑る。輪郭がない。
この中で、“現実”を感じるものは、自分の肌の汗と、息と、ぴくぴく動くちんこくらいだった。
**
白い壁。白い天井。白い床。
何回ぐるぐる回ったか、もう数えてない。
たぶん、康平とふたりで、今日だけで20周以上は歩きまわってる。
それでも、なにも、変わらない。
どこにも継ぎ目はない。
ドアも、窓も、通気口すら、ない。
ベッドも、棚も、トイレも、まるで“埋め込まれている”みたいに、完璧にこの部屋の一部として存在している。
「……」
戻って、棚から菓子パンを取る。
昨日と同じ、ミルク蒸しパン。
康平も、手慣れた動きでチョココロネを手に取った。
「……なぁ」
俺が言うと、康平はパンを口にくわえたまま、
「ん?」と目だけこっちを向けた。
「菓子パン、減ってないよな」
「……ああ」
「昨日食った分、補充されてる。ゴミも、なくなってるし」
棚の下には、俺たちが昨日まで積んでた空袋が、一つもなかった。
ベッドの横に丸めたはずの、使い終わったアンダーシャツも、いつの間にか消えてる。
「……ずっとおっても、飢えて死ぬとかはなさそうやな」
菓子パンをかじりながら、しばらく無言になる。
食感は、もう完全に舌に馴染んでしまってる。
甘さも、飽きるとかの次元じゃなくて、ただ“毎日あるもの”って感じになってた。
「……多分さ」
俺が小さくつぶやいた。
「あと、二回寝て起きたら、大会なんだよな」
「……せやな。俺の体内時計が狂ってへんかったら」
康平は水を飲んで、ベッドに腰を下ろす。
俺も、なんとなく隣に座った。
背中が、ひんやりしたシーツに触れる。
「出たいよな、大会」
「……せやなぁ。せっかく掴んだんや。レギュラーの座」
「掴んだっていうか、おこぼれっていうか?」
「……」
康平は少しだけ口をつぐんだ。
だけど、しばらくして、肩を落として言った。
「……せやな。正直、今年レギュラーなるとは思ってなかったわ」
二遊間の正レギュラー。
一学年上。去年からずっと不動だった、あの二人。
県内でも有名なコンビで、動きもコンビネーションも、完璧だった。
“ゴールデンコンビ”って、解説者にまで呼ばれてたくらい。
それが、先月。
交通事故。部活の帰り、バイクに巻き込まれて、2人とも骨折。
一瞬で、チームの中枢が空席になった。
そして、その代わりに選ばれたのが、俺と康平だった。
「……俺もだよ。マジで、なるとは思ってなかった」
「うん……」
「こうやって、レギュラーになってからだよな。お前と話すようになったの」
「それも、業務上っていうか。プレイのことだけやろ?」
「……そっか。そうだっけ」
同じ部活でも、全員が仲良いわけじゃない。
マンモス校で、学年30人超えの野球部。
俺みたいなタイプと、康平みたいなチャラい奴が繋がる機会なんて、そりゃない。
「ここ入ってからの方が、色んなこと、喋っとるな、勇人とは」
「……そうだな」
言われてみれば、そうだった。
康平に彼女がいるとか、セックス経験あるとか、
そういう話、ここに来るまで一度も聞いたことなかった。
それなのに、今はもう、息遣いも、ちんこのサイズも、お互い全部知ってしまってる。
「なぁ、勇人」
康平の声が、少しだけ熱を帯びてた。
「俺ら、大会、出なあかんよな?絶対」
「……うん。絶対、出たい。出ないと……」
この言葉だけは、素直に出てきた。
あの先輩たち。
あの完璧だった二遊間。
技術も、メンタルも、人格も。全部、尊敬できる大先輩たち。
その人たちが、俺たちに言ったんだ。
「頼むな」って。
「俺たちのぶんまで、やってくれ」って。
あの顔が、頭に焼きついてる。
「先輩だけやない」
康平が、膝を抱えて言った。
「チームメイト。監督。地域の人ら。親。みんなに支えられて、ここまで来たんや」
「そう、だな。みんなが、時間とお金を使ってくれて、今の俺たちがある。それは、間違いない」
「でな、俺、それと……彼女にも言うてもうたし」
「何を?」
「“絶対ホームラン打つから、見に来てな”って。めっちゃ言い切ってもうた。自信満々で。だから、こんなわけわからん部屋で、何もできずに終わるとか……そんなん、無理や」
俺は、それを聞きながら、心のどこかにあった“まだ出なくてもいい理由”が、ひとつずつ潰されていくのを感じてた。
絶対、出なきゃいけない。
そのためには……。
「……なぁ、今日さ」
ぽつりと俺が言ったのは、ベッドの上で、康平と並んで座ってるときだった。
「交代で起きとこうぜ。多分だけどさ、俺らが寝てる時間に、部屋には誰か入ってる。絶対」
昨日からずっと考えてたことだ。
毎晩、着せられる服。消えているパンツ。綺麗なままのシーツ。
寝てる間に“誰かが何かしている”のは間違い無いと思う。
康平は少しだけ顔をしかめて、それから首を横に振った。
「……それも、2日目に俺、考えてんけどな。多分、無理やと思うで」
「え?」
「起きてたら、そもそも、誰も入ってこんやろ?」
「……」
「それに……いや……」
康平は少しだけ考え込む仕草を見せた。
何かを言いかけて、でも、口に出す前に首を振った。
そして、ゆっくりと立ち上がる。
白い部屋に、彼の影がうっすら伸びた。
康平は、俺の前に仁王立ちになった。
長身の下、ぶらさがった小ぶりなちんこが、ぶらぶらと揺れている。
「……なぁ、勇人」
声が、やけに低かった。
「もう、覚悟決めるべきやと、俺は思う」
そう言った瞬間だった。
ふいに、手が伸びてきた。
そして、俺のちんこが、握られた。
「……ぁっ……」
びくん、と体が跳ねる。
握ったその手に、躊躇はなかった。
ぬくもりと、男のごつごつした感触が、
むき出しのそこに、ぐっと食い込んでくる。
「……なぁ、俺に、アナル処女、捧げてくれへん?」
耳を疑った。
冗談じゃなかった。
康平は、マジの顔してた。
いつもの軽口じゃない。
本気で、まっすぐに言ってきた。
「いやいやいや、無理無理無理無理!!」
反射的に言い返して、手を払いのけた。
「お前がケツ出せよ!つーか、チンコ、離せ!」
「はは、せやろな~。そうなるわな~」
康平はすっと手を離して、
何事もなかったようにベッドへ倒れ込んだ。
ニカッと、いつも通りの調子で笑って言う。
「だから、じゃんけんで決めよや。それで、恨みっこなしや。公平やろ。康平だけに」
「……おもんな……」
それでもその提案は、頭に残った。
「じゃ、さっさとやろか。最初は──」
「いやいやいや、まだ……やれることが……」
思わず口にした。
「やれることって?部屋は何十回も見て回った。毎晩服着せてくるやつが来るまで起きとくん? それは、望み薄やと思うけどなぁ」
康平の口調は柔らかいけど、そこには疲れがにじんでた。
俺も……疲れてた。
何も変わらない部屋。
削られていく時間。
「でも、わかんねーだろ……!」
それでも、何かにすがりたかった。
「そもそもや」
康平が、まっすぐ俺を見て言った。
「これが“現実”やとして、毎晩服きせられて、スパイクはかされて、起きひんとか……ある?」
「…………」
「俺の“仮定”言うわ。多分、水か、菓子パンか、なんかに……強い睡眠薬でも入れられてるんやろ。
やとして、ずっと起きとくのも無理やろな。どーせ寝落ちするわ」
その言葉には、反論できなかった。
仮に、起きていても、相手が入ってこなかったら意味がない。
もしくは、起きてる俺たちごと、強制的に眠らされる可能性だってある。
理屈が通ってるかどうかは、もはや問題じゃない。
「……でも……」
「わかった、わかった」
康平は、ひとつ息を吐いて、笑った。
「とりあえず、じゃんけんしよ。そのあと、頑張って起きとく。もし寝落ちしてもうたら、もう腹括るしかないやろ」
「腹括るっていうのは……」
「わかるやろ。じゃんけんの結果に従う。買った方が男役、負けた方が女役」
「……」
「どうせ、タイムリミットは明日なんや」
そう、明日。
明日、ここから出られなければ。
もう、俺たちは大会に出ることはできない。
「……わかったよ」
康平の目を、俺はまっすぐ見た。
ふざけてるようで、真剣な目だった。
康平が拳を出す。
「ほな……最初はグー、じゃんけん──」
その瞬間だった。
視界の端が、じわりと滲んだ。
膝が、ふわっと抜けた。
耳鳴りが、遠くから響いてきて。
また、あの嫌な感覚が、背中にぴたっと貼りついていた。
アンダーシャツ。
「っ……またかよ……」
低く、ため息混じりの声が漏れる。
寝る前、俺たちはたしかに全裸だった。
シャツも、ソックスも、スパイクも、ぜんぶ脱いだ。
なのに、起きたときには、またこの格好。
アンダーシャツに、ロングソックス、そしてスパイク。
上半身と足元まで“いつもの練習のスタイル”なのに、肝心の下半身、パンツだけはやっぱり消えていた。
「っうわ……」
胸元を触った瞬間、指先が止まった。
アンダーの、脇の内側。そこに、乾いたゴワつきがあった。
それは、精液だ。
昨日、俺が拭いたやつ。
間違いなく、あの白いやつが、薄く染みて、パリパリになって、また体にくっついてる。
「……はぁ!? 気持ちわり……!」
飛び起きて、即座にシャツを脱ぐ。
康平も同じように起きてて、
「毎日毎日、なんやねん……」ってぼやきながら、自分のシャツを引きちぎるように脱いだ。
ふたりとも、ベッドの横で肩をすくめたまま、無言になる。
上半身裸で、下はなにも履いてなくて、スパイクとソックスだけ履いてる状態。
「……なんかもう、恥ずかしいとかないな」
「ほんまな……」
朝っぱらから、2本のチンコが、ぴょこぴょこと無防備にぶら下がってる。
しかもそのどちらも、まだ少し萎えきってなくて、微妙に膨れ上がったまま。
朝勃ちってやつだ。寝起きだし、仕方ない。
「……なぁ、勇人、揺らすな揺らすな、チンコ、ぶーらぶーら、揺れとるから」
「揺らしてねーから。歩いてるだけで、勝手に揺れてんだよ。どうしようもないだろ」
「いやいや、ほな、揺れとるってことやん。ぶらーん、ぶらーん、てなってるやん」
「てめぇが見なきゃいいだろ……」
羞恥を通り越した、軽口の叩き合い。
一通り言い合った後、思う。
マジで、なんなんだよ、この部屋は。
純白の壁、天井、床。
ドアもない。窓もない。
継ぎ目らしい継ぎ目が、どこにもない。
まるで“最初からこんな形の箱”の中に押し込まれてるみたいだった。
「なぁ、ほんま、変やと思わへん?」
「どこから?」
「全部や。まずな、ドアも窓もない。壁も、何もかも。そんで、天井も、全部、真っ白。なんなんやろな。この空間」
「……うん」
「で、毎朝なんでか、スパイクとシャツとソックスだけは着せられとる。でもパンツは一回も戻ってこーへん」
「……うん」
「犯人、てか……誰かが入ってきとる?俺らが寝てる間に着せにきてるってことやんな……?」
「……でも、着せる意味ってなんだよ」
「さぁ?なんなんやろな。でも一個、犯人?の目的はハッキリしとるよな」
「目的?」
康平が、ぼそっと言った。
「……俺らに、セックスさせるっていう」
「……じゃあ、なんのために、セックス?」
「……さぁ?それこそ、わけわからへん」
康平は頭をポリポリ掻きながら、ベッドの方へ目をやる。
「あと、不思議なんはな。毎朝、俺らが着てるこのユニとかスパイクは“汚れたやつ”やのに、ベッドのシーツだけは、ずっとピッカピカやねん。
汚れとか汗とかついたままのくせに、なんでか、全然汚れてへん。……洗われてる?いや……」
「……ほんとだ……」
ベッドの上を触ってみる。
サラッとしてる。匂いもしない。
昨日までの粘っこい感触が、なにも残ってない。
「普通、どっかしら汚れてるやろ、俺ら、スパイク履いたまま寝とるんやから」
改めてシーツを凝視する。天井や、壁同様の、純白。土汚れ一つとしてない。
康平が、ぽつりと呟いた。
「これ、ほんまに、現実なんかな?」
「……俺も、思ってた。なんか……全部が変すぎる」
ふたりして、壁を見つめた。
真っ白。
どこまでも白。
目が滑る。輪郭がない。
この中で、“現実”を感じるものは、自分の肌の汗と、息と、ぴくぴく動くちんこくらいだった。
**
白い壁。白い天井。白い床。
何回ぐるぐる回ったか、もう数えてない。
たぶん、康平とふたりで、今日だけで20周以上は歩きまわってる。
それでも、なにも、変わらない。
どこにも継ぎ目はない。
ドアも、窓も、通気口すら、ない。
ベッドも、棚も、トイレも、まるで“埋め込まれている”みたいに、完璧にこの部屋の一部として存在している。
「……」
戻って、棚から菓子パンを取る。
昨日と同じ、ミルク蒸しパン。
康平も、手慣れた動きでチョココロネを手に取った。
「……なぁ」
俺が言うと、康平はパンを口にくわえたまま、
「ん?」と目だけこっちを向けた。
「菓子パン、減ってないよな」
「……ああ」
「昨日食った分、補充されてる。ゴミも、なくなってるし」
棚の下には、俺たちが昨日まで積んでた空袋が、一つもなかった。
ベッドの横に丸めたはずの、使い終わったアンダーシャツも、いつの間にか消えてる。
「……ずっとおっても、飢えて死ぬとかはなさそうやな」
菓子パンをかじりながら、しばらく無言になる。
食感は、もう完全に舌に馴染んでしまってる。
甘さも、飽きるとかの次元じゃなくて、ただ“毎日あるもの”って感じになってた。
「……多分さ」
俺が小さくつぶやいた。
「あと、二回寝て起きたら、大会なんだよな」
「……せやな。俺の体内時計が狂ってへんかったら」
康平は水を飲んで、ベッドに腰を下ろす。
俺も、なんとなく隣に座った。
背中が、ひんやりしたシーツに触れる。
「出たいよな、大会」
「……せやなぁ。せっかく掴んだんや。レギュラーの座」
「掴んだっていうか、おこぼれっていうか?」
「……」
康平は少しだけ口をつぐんだ。
だけど、しばらくして、肩を落として言った。
「……せやな。正直、今年レギュラーなるとは思ってなかったわ」
二遊間の正レギュラー。
一学年上。去年からずっと不動だった、あの二人。
県内でも有名なコンビで、動きもコンビネーションも、完璧だった。
“ゴールデンコンビ”って、解説者にまで呼ばれてたくらい。
それが、先月。
交通事故。部活の帰り、バイクに巻き込まれて、2人とも骨折。
一瞬で、チームの中枢が空席になった。
そして、その代わりに選ばれたのが、俺と康平だった。
「……俺もだよ。マジで、なるとは思ってなかった」
「うん……」
「こうやって、レギュラーになってからだよな。お前と話すようになったの」
「それも、業務上っていうか。プレイのことだけやろ?」
「……そっか。そうだっけ」
同じ部活でも、全員が仲良いわけじゃない。
マンモス校で、学年30人超えの野球部。
俺みたいなタイプと、康平みたいなチャラい奴が繋がる機会なんて、そりゃない。
「ここ入ってからの方が、色んなこと、喋っとるな、勇人とは」
「……そうだな」
言われてみれば、そうだった。
康平に彼女がいるとか、セックス経験あるとか、
そういう話、ここに来るまで一度も聞いたことなかった。
それなのに、今はもう、息遣いも、ちんこのサイズも、お互い全部知ってしまってる。
「なぁ、勇人」
康平の声が、少しだけ熱を帯びてた。
「俺ら、大会、出なあかんよな?絶対」
「……うん。絶対、出たい。出ないと……」
この言葉だけは、素直に出てきた。
あの先輩たち。
あの完璧だった二遊間。
技術も、メンタルも、人格も。全部、尊敬できる大先輩たち。
その人たちが、俺たちに言ったんだ。
「頼むな」って。
「俺たちのぶんまで、やってくれ」って。
あの顔が、頭に焼きついてる。
「先輩だけやない」
康平が、膝を抱えて言った。
「チームメイト。監督。地域の人ら。親。みんなに支えられて、ここまで来たんや」
「そう、だな。みんなが、時間とお金を使ってくれて、今の俺たちがある。それは、間違いない」
「でな、俺、それと……彼女にも言うてもうたし」
「何を?」
「“絶対ホームラン打つから、見に来てな”って。めっちゃ言い切ってもうた。自信満々で。だから、こんなわけわからん部屋で、何もできずに終わるとか……そんなん、無理や」
俺は、それを聞きながら、心のどこかにあった“まだ出なくてもいい理由”が、ひとつずつ潰されていくのを感じてた。
絶対、出なきゃいけない。
そのためには……。
「……なぁ、今日さ」
ぽつりと俺が言ったのは、ベッドの上で、康平と並んで座ってるときだった。
「交代で起きとこうぜ。多分だけどさ、俺らが寝てる時間に、部屋には誰か入ってる。絶対」
昨日からずっと考えてたことだ。
毎晩、着せられる服。消えているパンツ。綺麗なままのシーツ。
寝てる間に“誰かが何かしている”のは間違い無いと思う。
康平は少しだけ顔をしかめて、それから首を横に振った。
「……それも、2日目に俺、考えてんけどな。多分、無理やと思うで」
「え?」
「起きてたら、そもそも、誰も入ってこんやろ?」
「……」
「それに……いや……」
康平は少しだけ考え込む仕草を見せた。
何かを言いかけて、でも、口に出す前に首を振った。
そして、ゆっくりと立ち上がる。
白い部屋に、彼の影がうっすら伸びた。
康平は、俺の前に仁王立ちになった。
長身の下、ぶらさがった小ぶりなちんこが、ぶらぶらと揺れている。
「……なぁ、勇人」
声が、やけに低かった。
「もう、覚悟決めるべきやと、俺は思う」
そう言った瞬間だった。
ふいに、手が伸びてきた。
そして、俺のちんこが、握られた。
「……ぁっ……」
びくん、と体が跳ねる。
握ったその手に、躊躇はなかった。
ぬくもりと、男のごつごつした感触が、
むき出しのそこに、ぐっと食い込んでくる。
「……なぁ、俺に、アナル処女、捧げてくれへん?」
耳を疑った。
冗談じゃなかった。
康平は、マジの顔してた。
いつもの軽口じゃない。
本気で、まっすぐに言ってきた。
「いやいやいや、無理無理無理無理!!」
反射的に言い返して、手を払いのけた。
「お前がケツ出せよ!つーか、チンコ、離せ!」
「はは、せやろな~。そうなるわな~」
康平はすっと手を離して、
何事もなかったようにベッドへ倒れ込んだ。
ニカッと、いつも通りの調子で笑って言う。
「だから、じゃんけんで決めよや。それで、恨みっこなしや。公平やろ。康平だけに」
「……おもんな……」
それでもその提案は、頭に残った。
「じゃ、さっさとやろか。最初は──」
「いやいやいや、まだ……やれることが……」
思わず口にした。
「やれることって?部屋は何十回も見て回った。毎晩服着せてくるやつが来るまで起きとくん? それは、望み薄やと思うけどなぁ」
康平の口調は柔らかいけど、そこには疲れがにじんでた。
俺も……疲れてた。
何も変わらない部屋。
削られていく時間。
「でも、わかんねーだろ……!」
それでも、何かにすがりたかった。
「そもそもや」
康平が、まっすぐ俺を見て言った。
「これが“現実”やとして、毎晩服きせられて、スパイクはかされて、起きひんとか……ある?」
「…………」
「俺の“仮定”言うわ。多分、水か、菓子パンか、なんかに……強い睡眠薬でも入れられてるんやろ。
やとして、ずっと起きとくのも無理やろな。どーせ寝落ちするわ」
その言葉には、反論できなかった。
仮に、起きていても、相手が入ってこなかったら意味がない。
もしくは、起きてる俺たちごと、強制的に眠らされる可能性だってある。
理屈が通ってるかどうかは、もはや問題じゃない。
「……でも……」
「わかった、わかった」
康平は、ひとつ息を吐いて、笑った。
「とりあえず、じゃんけんしよ。そのあと、頑張って起きとく。もし寝落ちしてもうたら、もう腹括るしかないやろ」
「腹括るっていうのは……」
「わかるやろ。じゃんけんの結果に従う。買った方が男役、負けた方が女役」
「……」
「どうせ、タイムリミットは明日なんや」
そう、明日。
明日、ここから出られなければ。
もう、俺たちは大会に出ることはできない。
「……わかったよ」
康平の目を、俺はまっすぐ見た。
ふざけてるようで、真剣な目だった。
康平が拳を出す。
「ほな……最初はグー、じゃんけん──」
その瞬間だった。
視界の端が、じわりと滲んだ。
膝が、ふわっと抜けた。
耳鳴りが、遠くから響いてきて。
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