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第1章 邂逅
まだ見ぬ世界へ
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ドサッ…ガチャガチャガチャッ!
草地の上に広げられた布の中から幾振りもの鞘入りの剣が姿を現す。
さらに槍や弓、戦斧に戦棍、果ては鋲を打った籠手のようなものまで、あらゆる武器が翡翠の屋根の一隅の空き地に持ち込まれてきたのだった。
「どうぞ、お選びください」
運んできた珠鉄の者たちに促され、静夜はそれらの前に進み出ると、真剣な目で端から端までじっくり眺め渡した。
珠鉄の族の他には宇内と彼方が立ち会いに来ており、その後ろには親しい友人を自称する麗や噂を聞きつけた無関係の野次馬までもが詰めかけている。もちろん久遠も堂々と最前列の宇内の隣に並んで観覧していた。
「どれも我ら珠鉄が誇る一流の職人が精魂込めて製作した一級品です。それゆえ少なからず煌気が宿っておりますので、普通の人間が使っても相当の威力を発揮します」
(何が一番合ってるのか…何が一番扱い慣れてるのか…)
記憶のない静夜は、一点ずつ指で触れたり握ったりしながら自分の心と身体に問いかける。長剣やナイフの類には違和感がなかったが、それ以外はまったくと言っていいほどしっくりとこない。そこで彼は長さも反りも意匠もさまざまな長剣の山をためつすがめつ吟味し、幾振りか実際に抜いてみて、最終的にひと振りの長剣を選んだ。
「これにします」
それは装飾が少なく、ごくごく簡素でありふれた拵の、弯曲のない剣だった。宇内が尋ねた。
「この剣の名は?」
「レーヴンホルトです」
短髪で戦士風の装いをし、いかにも気が強く男勝りな雰囲気の若い女性が答える。
「どうかな、静夜殿」
「この中ではこれが一番合うようです。不思議と手になじむ感じがあります」
静夜は肩と腕を回して鋼の剣身を大きくゆっくり翻し、感触を確かめる。最後に正中線にしっかりと止め、深々と呼吸を整えた。
「…やっぱり素人じゃないわ」
いつものうきうきと楽しげな調子をすっかり忘れて麗がつぶやく。すると宇内が例の戦士風の女性に向け言った。
「曜よ。静夜殿と少し手合わせしてみぬか。彼の力量がどれほどか、稽古の前に試してやって欲しい」
たちまち観衆の間を驚きの波が走り抜けた。曜と呼ばれた女性ーー珠鉄・イヴァネシー・曜は少しだけ考えた後、変わらぬ表情で承諾した。
「わかりました」
再び、さらに大きなざわめきが広がったが、中には静夜を心配する声も聞かれた。
「おいおい…大丈夫なのか?」
「曜は珠鉄の黒鳥兵団で一、二を争う強者だぞ…旅立ちの前に怪我しなきゃいいけど」
開けた草地に抜き身の剣を提げた曜と静夜が対峙した。
「手加減はいらない。全力でかかってこい」
息の詰まるような衆人環視の中、無言の静夜は束の間握りと踏み込みを確かめると、さっと動いた。
ギン!!
目を見開いたときには二振りの刃が十字に交わっている。
飛び散る火花を払ってレーヴンホルトがさらに閃いた。
ギィン!ジャギン!…ザザッ!
激しく打ち合う力強い動きと軽やかな身さばきに、見守る原礎たちから溜め息と感嘆の声が漏れる。
「…」
しかし、ここまで優勢に見えていた静夜はどういうつもりか、次第に自分で自分の心の奥を探るような顔をして剣戟の手を緩め始める。
静夜の態度の変化をすぐさま感じ取った曜はじりじりと苛立ちを募らせ、我慢できなくなって剣身越しに叱責した。
「おまえ、本当にやる気があるのか!?手加減するなと言ってるだろう!それとも私が女だから舐めてるのか!?」
感情が激して落ち着きを失くしつつある曜とは対照的な、眉ひとつ動かさない涼しげな表情で静夜は答えた。
「無駄な力は使いません。女性だからでもありません。思うさま無制限に力を振るうことはかえって肉体への負荷になります」
曜の剣をかつ受け止め、かつ弾き返し、鮮やかな反撃を打ち込みながら、静夜は息も乱さずささやく。
「相手の力量に応じた最低限の動きで敵を封じ、仕留め、制圧する。野営や連戦が避けられない状況では体力を温存し肉体を疲弊させないことが最も肝要です」
「なっ…!!」
「俺はそれを学びました。…いえ、きっと学んだんだと思います」
曜は愕然とした。それはすなわち曜の実力は今曜が見ているとおりの水準だということだ。動揺した曜の剣は旋風のように襲った静夜の剣にあっさりと叩き落とされ、芝草に転がる。自慢の愛剣を奪われた曜は空っぽになった手をぶら下げて立ち尽くすのみだった。
「…そうか。…やっぱり俺はこうだったんだ」
水を打ったような沈黙と視線の真ん中で、静夜は自分の手をまじまじと見つめながら無心につぶやいた。
「稽古の必要はない」
宇内がしじまを破る判定のひと声を発すると、たちまち拍手喝采と口笛が沸き上がった。
「すげえ!あの曜を負かしちまったぞ!」
「あいつ、ただ者じゃねえな!」
「きゃ~ッ!!静夜ちゃん、素敵よ~ッ!!」
静夜は平然として冷静なたたずまいのまま宇内の方を向いた。
「宇内様。この剣、しばらくお借りしても構いませんか」
「うむ。大切に扱うように」
観衆が興奮して盛り上がる中、ひとり曜だけは顔を真っ赤にして歯を食いしばっている。静夜の実力を量るどころか自分の未熟さを露呈してしまった。これではどちらが試験官かわからないーー生まれて今日まで味わわされたことのない恥辱に、曜の赤銅色の瞳がギラギラと燃え上がった。
「…どこの馬の骨とも知れない人間風情にこの私が負けるなんて…あの男…静夜め、憶えていろ…!!」
彼方は宇内の耳近くにそっと顔を寄せると、誰にも聞こえない小声で尋ねた。
「宇内様、彼はいったい…」
「わからぬ。並の剣士でないことは確かだが…久遠を預けるには申し分ないだろうな」
「…はい」
彼方はそれ以上は何も言わなかった。
依然やまない歓声と騒ぎの中、久遠が静夜に駆け寄る。
「静夜!おまえ、すごいじゃないか!さすが、僕が見込んだだけのことはある」
「ありがとう。思い出したというわけじゃないんだが、身体が剣の扱いを憶えてたみたいで」
「本当に?つくづく不思議な奴だな、おまえって…もしかして傭兵か騎士だったのか?とにかく、頼りにしてるからな」
久遠から賞賛と期待を寄せられると初めて静夜はどこか照れ臭そうに頬を緩めた。
多忙を極めた一日が明け、出発の日の朝を迎えた。
大森林の入り口である大門には、久遠の親しい友人や子供たち、それに風変わりな二人の旅立ちを見届けようという大勢の原礎たちが集まっていた。
二人ともとっくに旅支度を整え、すぐにでも出発できる状態だったが、久遠が別れを惜しむ友人や子供たちから引っ張りだこになっているおかげでずるずるとなし崩し的に延びていた。
「久ぅ兄、たびにでちゃうってほんと?」
「もうあえないの?」
「うん…少しの間な。でもいつかきっと戻ってくるから、それまでいい子にしてるんだぞ」
「やぁ!久ぅ兄、たびにでちゃやだ!」
さっきから腰にしがみついたまま離れようとしない周を見下ろした久遠はどうしようもなく胸が苦しくなり、後ろ髪を引かれる思いでしゃがみ込むとその小さな身体をぎゅっと抱きしめた。
「ごめんな、周…僕がいない間に頑張ってトマトひとりで食べれるようになったら、いっぱい一緒にいてやるから」
号泣したり駄々をこねたりと収拾のつかない子供たちの輪の外では、麗がハンカチを握りしめ涙を振り絞っている。
「久遠ちゃん、本当に気をつけて…静夜ちゃんと仲良くするのよ。それから、つらくなったらいつでも帰ってきていいんだからねッ…!」
「麗さんは大人なんだからそんな泣かないでよ…」
「ほら、みんな、静夜様にもさようならしましょう」
「静兄、ばいばい」
「またね」
静夜は未来と子供たちに優しく手を振り返した。人間遊園地としてひととき大好評を博した彼も、久遠の根強い人気には遥かに及ばないのだった。
だが静夜の指には日月が結んでくれた白詰草の可愛らしい指輪がはめられていた。もちろん久遠とのお揃いである。
「四季さん、翡翠の屋根の僕たちの家、よろしくお願いします」
「任せて。久遠くんの留守の間は私がきちんとお手入れして管理しておくから」
まだたくさんの人に囲まれて挨拶攻めに遭っている久遠の様子を静夜が眺めていると、ゆっくりと側に近づいてくる者がいた。
「静夜くん。二人で少し話をしたいんだけど、いいかな」
「彼方さん。…はい」
彼方は誰もいない美しい橅の木立の下に静夜を連れていった。
静夜は彼方が切り出すのを黙って待ったが、彼がなかなか話し始めず目も合わせようとしないので、訝しんで自分から尋ねた。
「お話というのは?」
「…うん」
ようやく腹を括ったのか、彼方は短く吐息をつくと、のろのろと静夜に向き直った。整ってはいるが、もともと血色が薄くあまり表情が豊かではない彼の顔は、疲れからなのかいっそう冴えなかった。
「せっかくの新たな門出の日に辛気臭くて申し訳ない。…実は君に、どうしてもお願いしたいことがあって」
「何でしょうか。どうぞ何でもおっしゃってください」
「ありがとう。お願いとは…その…久遠のことなんだが」
久遠の名前を言いづらそうに口にすると彼方はまた静夜から目をそらした。そして低く慎重な声音で続けた。
「幼い頃に宇内様や先輩方に連れられて少し外出した経験はあるが、あの子が自分の意思でここを出て長旅をするのは今回が初めてだ。単純にそれだけでも不安なんだが、私はそれ以上に、久遠自身のことが心配でならない」
「…どういうことですか?」
「私は永遠と久遠が生まれたときから彼を見てきて、彼がどんな子かよく知っている。永遠は性格的に少し難しいところがあって私にはあまり懐いてくれなかったが、久遠はとても甘えん坊で、人懐こくて、しょっちゅう私にまとわりついてくれてね。私のことを親しみを込めて彼兄などと呼んでくれるのも、彼だけだ」
静夜はとっさにうつむいた。愛する友人たちから久遠がどれほど大切にされているか、この数日間だけで何度も感じ取っている。彼を長旅に引きずり出す端緒を作った自分のことを、彼方を始めとする多くの人々に対してすまないと思う気持ちはやはり拭えなかった。
静夜の顔色から彼の罪悪感が手に取るようにわかると、彼方は固かった表情をわずかに和らげた。
「君ももう気づいているだろう。…私のこの脚」
彼方は自分の左脚に触れる。静夜はそれを見てうなずく。
「若い頃に訳あって大怪我をしてね。なんとか歩けるようになるまで回復はしたが、皆と同じようには歩けない。好きなときに自由に移動することができない身だから、森の外には出られず、ずっと宇内様の側仕えをしている」
「…ご苦労、お察しします」
静夜の精一杯の気遣いに対して彼方は薄く微笑んだ。
「皆は腫れ物に触るように遠慮がちに私に接して、離れればもう他人事か忘れるかだった。だが、久遠だけは違っていた。久遠は私を見つけるといつも全力で走ってきて、彼兄、脚は大丈夫、大丈夫、と小さな手で一生懸命さすってくれた。恥ずかしさも臆面もなく、周りの者が、私自身まで困惑してしまうくらいに。それが彼の優しさの表し方だった」
「目に浮かぶような気がします」
「その後…久遠が八歳の頃だ。彼はあるとき私のところに来ると、やっと浮葉の術が…瑞葉の子供が習得する初歩中の初歩の、草や葉を大きくしてそれに乗って空中を移動するという術なのだが…それが使えるようになったから、遠くに行けない私を乗せてあの湖の向こう岸の白樺の森まで連れていってあげる、と。術を覚えたら一番に私を乗せたかったらしい」
懐かしい古い逸話を語る彼方の頬には終生消えないぬくもりが宿っているように見えた。
「宣言どおり久遠は私を大きく広げた葉に乗せて湖の対岸の白樺林に連れていってくれた。眼下に広がる湖も、空を渡る心地良い風も、白樺林の美観も、何もかもが初めての体験だった。私たちは誰もおらず音もしない白樺の森を二人だけで散策して楽しんだ。だが生まれつき煌気の弱い久遠は帰り道の分の力までうっかり使い果たしてしまい、疲れ切って白樺の木の下で眠ってしまった。そこで私はしかたなく久遠を背中に負ぶってなんとか自分の脚で歩いて戻った。家に着いたときはもう夕方で、目が覚めた久遠はびっくりして私に迷惑をかけたと大泣きし、その上永遠にひどく叱られて大変だったが、今となってはいい思い出だ」
彼方はかすかに首を横に振ると、片眼鏡の奥から感情の今にもあふれんばかりの瞳で静夜を見つめた。
「久遠は本当に優しい子なんだ。だがその分脆く危うい面もある。あの子は自分に無力感や挫折感を抱いている分、他者の苦しみや不幸にも敏感だ。久遠が川に流されてきた人間を助けたと聞いたとき、私は少しも不思議に思わなかった。見つけたのが久遠でなければ君は見向きもされず川を下って今頃は海の藻屑だろう。助けたいのに助けられない永遠や同胞たちに寄せる思いが彼を動かしたんだと私は思っている」
静夜は出会ってからこれまでの久遠を思い出した。久遠はいつでも自分より他者を優先し、他者に尽くしていた。親と離れて暮らす子供たち、優秀であるがゆえに厳格で孤独な姉、そして記憶を失った自分。寂しさや喪失が空けた虚ろを埋めようと寄り添うことで久遠は自分自身の形を保ってきたのかもしれない。それが自分の居場所、生きる意義なのだと。
「本当は私が一緒に行ってやりたいが、この脚だから私はついていくことはできない。だから私の代わりにどうか久遠を守ってやって欲しい…それが私から君へのたったひとつのお願いだ」
静夜は少し考え込んだ。冷淡だろうかとも思ったが、自分の態度を偽らず、あえて率直な言葉を口にした。
「あなたと違って俺はまだ久遠と出会ったばかりで、彼のことをあなたほどは知りません。これから起こるかもしれないさまざまな状況の中で、彼がどんな行動をし、どんな決断をするかも、また俺がそれを理解したり止めたりできるかも正直わかりません。すべては久遠自身の意思によるものですから。…ですが」
少しずつ目を見張る彼方に、静夜は凛然と告げた。
「久遠は絶対に死んではいけない。死なせはしません。必ず俺が側についています」
彼方は満足を得、その代わりに何かを諦めたようにそっと目を伏せた。
「頼む。…私はここで君たちの無事と、君の記憶が戻ることを祈って待つことにするよ。それから…今した話は久遠には内緒にしておいて欲しい」
「わかりました」
静夜がうなずいたとき、ちょうど久遠が二人を捜しにやってきた。
「静夜、彼兄、こんなとこにいたんだ。二人だけで何話してたの?」
「なんでもない。ただの旅の心得というか注意事項だよ。そうだよね、静夜くん」
「はい。俺はいろいろ忘れてしまってますから」
「ええー、ほんと?なんか怪しいなあ…まいっか。そろそろ出発だぞ、静夜」
そして三人は宇内や皆のところに戻った。
「久遠、わかっているな。おまえはまだ半人前ゆえ、絶対に無理はせぬこと。煌礎水の泉のある道筋をたどること。何かあればすぐに近くにいる同胞たちに助力を求めるか、我々に知らせをよこすこと。よいか?」
「はい」
「静夜殿。記憶がないままの旅は不安かもしれぬが、どうか久遠をよろしく頼む。いつか記憶を取り戻して本当の君に戻ったら、君自身のことをたくさん教えてくれ。幸運を祈る」
「はい。手厚い庇護と寛大な処遇に、心から感謝します」
二人はうなずき合い、鞄を背負った。
「さあ、出発だ!」
久遠は涙も見せず、胸を張って大きく一歩を踏み出す。そのすぐ後ろには、長い脚のゆったりとした歩調で静夜が続く。
「それじゃ、いってきます!」
「いってきます」
二人は鈴生りになって見送る原礎たちに手を振りながら森を抜けて街道に出る道を歩いていった。
宇内と並んでいた彼方が物憂げな表情でささやいた。
「本当によろしかったのですか、宇内様。…久遠を手放して」
「不安がないわけではないが、先読みのしすぎも可能性を狭めてしまって良くない。今までわがままを言ったことがなかった久遠があれほど熱望したのだ。叶えてやりたいと思うのが親心だろう」
「それは…そうですが…」
「こういうのは何と言ったかな…ああ、そうだ」
宇内は珍しく目尻を下げて柔らかく微笑んだ。
「可愛い子には旅をさせよ、だ」
草地の上に広げられた布の中から幾振りもの鞘入りの剣が姿を現す。
さらに槍や弓、戦斧に戦棍、果ては鋲を打った籠手のようなものまで、あらゆる武器が翡翠の屋根の一隅の空き地に持ち込まれてきたのだった。
「どうぞ、お選びください」
運んできた珠鉄の者たちに促され、静夜はそれらの前に進み出ると、真剣な目で端から端までじっくり眺め渡した。
珠鉄の族の他には宇内と彼方が立ち会いに来ており、その後ろには親しい友人を自称する麗や噂を聞きつけた無関係の野次馬までもが詰めかけている。もちろん久遠も堂々と最前列の宇内の隣に並んで観覧していた。
「どれも我ら珠鉄が誇る一流の職人が精魂込めて製作した一級品です。それゆえ少なからず煌気が宿っておりますので、普通の人間が使っても相当の威力を発揮します」
(何が一番合ってるのか…何が一番扱い慣れてるのか…)
記憶のない静夜は、一点ずつ指で触れたり握ったりしながら自分の心と身体に問いかける。長剣やナイフの類には違和感がなかったが、それ以外はまったくと言っていいほどしっくりとこない。そこで彼は長さも反りも意匠もさまざまな長剣の山をためつすがめつ吟味し、幾振りか実際に抜いてみて、最終的にひと振りの長剣を選んだ。
「これにします」
それは装飾が少なく、ごくごく簡素でありふれた拵の、弯曲のない剣だった。宇内が尋ねた。
「この剣の名は?」
「レーヴンホルトです」
短髪で戦士風の装いをし、いかにも気が強く男勝りな雰囲気の若い女性が答える。
「どうかな、静夜殿」
「この中ではこれが一番合うようです。不思議と手になじむ感じがあります」
静夜は肩と腕を回して鋼の剣身を大きくゆっくり翻し、感触を確かめる。最後に正中線にしっかりと止め、深々と呼吸を整えた。
「…やっぱり素人じゃないわ」
いつものうきうきと楽しげな調子をすっかり忘れて麗がつぶやく。すると宇内が例の戦士風の女性に向け言った。
「曜よ。静夜殿と少し手合わせしてみぬか。彼の力量がどれほどか、稽古の前に試してやって欲しい」
たちまち観衆の間を驚きの波が走り抜けた。曜と呼ばれた女性ーー珠鉄・イヴァネシー・曜は少しだけ考えた後、変わらぬ表情で承諾した。
「わかりました」
再び、さらに大きなざわめきが広がったが、中には静夜を心配する声も聞かれた。
「おいおい…大丈夫なのか?」
「曜は珠鉄の黒鳥兵団で一、二を争う強者だぞ…旅立ちの前に怪我しなきゃいいけど」
開けた草地に抜き身の剣を提げた曜と静夜が対峙した。
「手加減はいらない。全力でかかってこい」
息の詰まるような衆人環視の中、無言の静夜は束の間握りと踏み込みを確かめると、さっと動いた。
ギン!!
目を見開いたときには二振りの刃が十字に交わっている。
飛び散る火花を払ってレーヴンホルトがさらに閃いた。
ギィン!ジャギン!…ザザッ!
激しく打ち合う力強い動きと軽やかな身さばきに、見守る原礎たちから溜め息と感嘆の声が漏れる。
「…」
しかし、ここまで優勢に見えていた静夜はどういうつもりか、次第に自分で自分の心の奥を探るような顔をして剣戟の手を緩め始める。
静夜の態度の変化をすぐさま感じ取った曜はじりじりと苛立ちを募らせ、我慢できなくなって剣身越しに叱責した。
「おまえ、本当にやる気があるのか!?手加減するなと言ってるだろう!それとも私が女だから舐めてるのか!?」
感情が激して落ち着きを失くしつつある曜とは対照的な、眉ひとつ動かさない涼しげな表情で静夜は答えた。
「無駄な力は使いません。女性だからでもありません。思うさま無制限に力を振るうことはかえって肉体への負荷になります」
曜の剣をかつ受け止め、かつ弾き返し、鮮やかな反撃を打ち込みながら、静夜は息も乱さずささやく。
「相手の力量に応じた最低限の動きで敵を封じ、仕留め、制圧する。野営や連戦が避けられない状況では体力を温存し肉体を疲弊させないことが最も肝要です」
「なっ…!!」
「俺はそれを学びました。…いえ、きっと学んだんだと思います」
曜は愕然とした。それはすなわち曜の実力は今曜が見ているとおりの水準だということだ。動揺した曜の剣は旋風のように襲った静夜の剣にあっさりと叩き落とされ、芝草に転がる。自慢の愛剣を奪われた曜は空っぽになった手をぶら下げて立ち尽くすのみだった。
「…そうか。…やっぱり俺はこうだったんだ」
水を打ったような沈黙と視線の真ん中で、静夜は自分の手をまじまじと見つめながら無心につぶやいた。
「稽古の必要はない」
宇内がしじまを破る判定のひと声を発すると、たちまち拍手喝采と口笛が沸き上がった。
「すげえ!あの曜を負かしちまったぞ!」
「あいつ、ただ者じゃねえな!」
「きゃ~ッ!!静夜ちゃん、素敵よ~ッ!!」
静夜は平然として冷静なたたずまいのまま宇内の方を向いた。
「宇内様。この剣、しばらくお借りしても構いませんか」
「うむ。大切に扱うように」
観衆が興奮して盛り上がる中、ひとり曜だけは顔を真っ赤にして歯を食いしばっている。静夜の実力を量るどころか自分の未熟さを露呈してしまった。これではどちらが試験官かわからないーー生まれて今日まで味わわされたことのない恥辱に、曜の赤銅色の瞳がギラギラと燃え上がった。
「…どこの馬の骨とも知れない人間風情にこの私が負けるなんて…あの男…静夜め、憶えていろ…!!」
彼方は宇内の耳近くにそっと顔を寄せると、誰にも聞こえない小声で尋ねた。
「宇内様、彼はいったい…」
「わからぬ。並の剣士でないことは確かだが…久遠を預けるには申し分ないだろうな」
「…はい」
彼方はそれ以上は何も言わなかった。
依然やまない歓声と騒ぎの中、久遠が静夜に駆け寄る。
「静夜!おまえ、すごいじゃないか!さすが、僕が見込んだだけのことはある」
「ありがとう。思い出したというわけじゃないんだが、身体が剣の扱いを憶えてたみたいで」
「本当に?つくづく不思議な奴だな、おまえって…もしかして傭兵か騎士だったのか?とにかく、頼りにしてるからな」
久遠から賞賛と期待を寄せられると初めて静夜はどこか照れ臭そうに頬を緩めた。
多忙を極めた一日が明け、出発の日の朝を迎えた。
大森林の入り口である大門には、久遠の親しい友人や子供たち、それに風変わりな二人の旅立ちを見届けようという大勢の原礎たちが集まっていた。
二人ともとっくに旅支度を整え、すぐにでも出発できる状態だったが、久遠が別れを惜しむ友人や子供たちから引っ張りだこになっているおかげでずるずるとなし崩し的に延びていた。
「久ぅ兄、たびにでちゃうってほんと?」
「もうあえないの?」
「うん…少しの間な。でもいつかきっと戻ってくるから、それまでいい子にしてるんだぞ」
「やぁ!久ぅ兄、たびにでちゃやだ!」
さっきから腰にしがみついたまま離れようとしない周を見下ろした久遠はどうしようもなく胸が苦しくなり、後ろ髪を引かれる思いでしゃがみ込むとその小さな身体をぎゅっと抱きしめた。
「ごめんな、周…僕がいない間に頑張ってトマトひとりで食べれるようになったら、いっぱい一緒にいてやるから」
号泣したり駄々をこねたりと収拾のつかない子供たちの輪の外では、麗がハンカチを握りしめ涙を振り絞っている。
「久遠ちゃん、本当に気をつけて…静夜ちゃんと仲良くするのよ。それから、つらくなったらいつでも帰ってきていいんだからねッ…!」
「麗さんは大人なんだからそんな泣かないでよ…」
「ほら、みんな、静夜様にもさようならしましょう」
「静兄、ばいばい」
「またね」
静夜は未来と子供たちに優しく手を振り返した。人間遊園地としてひととき大好評を博した彼も、久遠の根強い人気には遥かに及ばないのだった。
だが静夜の指には日月が結んでくれた白詰草の可愛らしい指輪がはめられていた。もちろん久遠とのお揃いである。
「四季さん、翡翠の屋根の僕たちの家、よろしくお願いします」
「任せて。久遠くんの留守の間は私がきちんとお手入れして管理しておくから」
まだたくさんの人に囲まれて挨拶攻めに遭っている久遠の様子を静夜が眺めていると、ゆっくりと側に近づいてくる者がいた。
「静夜くん。二人で少し話をしたいんだけど、いいかな」
「彼方さん。…はい」
彼方は誰もいない美しい橅の木立の下に静夜を連れていった。
静夜は彼方が切り出すのを黙って待ったが、彼がなかなか話し始めず目も合わせようとしないので、訝しんで自分から尋ねた。
「お話というのは?」
「…うん」
ようやく腹を括ったのか、彼方は短く吐息をつくと、のろのろと静夜に向き直った。整ってはいるが、もともと血色が薄くあまり表情が豊かではない彼の顔は、疲れからなのかいっそう冴えなかった。
「せっかくの新たな門出の日に辛気臭くて申し訳ない。…実は君に、どうしてもお願いしたいことがあって」
「何でしょうか。どうぞ何でもおっしゃってください」
「ありがとう。お願いとは…その…久遠のことなんだが」
久遠の名前を言いづらそうに口にすると彼方はまた静夜から目をそらした。そして低く慎重な声音で続けた。
「幼い頃に宇内様や先輩方に連れられて少し外出した経験はあるが、あの子が自分の意思でここを出て長旅をするのは今回が初めてだ。単純にそれだけでも不安なんだが、私はそれ以上に、久遠自身のことが心配でならない」
「…どういうことですか?」
「私は永遠と久遠が生まれたときから彼を見てきて、彼がどんな子かよく知っている。永遠は性格的に少し難しいところがあって私にはあまり懐いてくれなかったが、久遠はとても甘えん坊で、人懐こくて、しょっちゅう私にまとわりついてくれてね。私のことを親しみを込めて彼兄などと呼んでくれるのも、彼だけだ」
静夜はとっさにうつむいた。愛する友人たちから久遠がどれほど大切にされているか、この数日間だけで何度も感じ取っている。彼を長旅に引きずり出す端緒を作った自分のことを、彼方を始めとする多くの人々に対してすまないと思う気持ちはやはり拭えなかった。
静夜の顔色から彼の罪悪感が手に取るようにわかると、彼方は固かった表情をわずかに和らげた。
「君ももう気づいているだろう。…私のこの脚」
彼方は自分の左脚に触れる。静夜はそれを見てうなずく。
「若い頃に訳あって大怪我をしてね。なんとか歩けるようになるまで回復はしたが、皆と同じようには歩けない。好きなときに自由に移動することができない身だから、森の外には出られず、ずっと宇内様の側仕えをしている」
「…ご苦労、お察しします」
静夜の精一杯の気遣いに対して彼方は薄く微笑んだ。
「皆は腫れ物に触るように遠慮がちに私に接して、離れればもう他人事か忘れるかだった。だが、久遠だけは違っていた。久遠は私を見つけるといつも全力で走ってきて、彼兄、脚は大丈夫、大丈夫、と小さな手で一生懸命さすってくれた。恥ずかしさも臆面もなく、周りの者が、私自身まで困惑してしまうくらいに。それが彼の優しさの表し方だった」
「目に浮かぶような気がします」
「その後…久遠が八歳の頃だ。彼はあるとき私のところに来ると、やっと浮葉の術が…瑞葉の子供が習得する初歩中の初歩の、草や葉を大きくしてそれに乗って空中を移動するという術なのだが…それが使えるようになったから、遠くに行けない私を乗せてあの湖の向こう岸の白樺の森まで連れていってあげる、と。術を覚えたら一番に私を乗せたかったらしい」
懐かしい古い逸話を語る彼方の頬には終生消えないぬくもりが宿っているように見えた。
「宣言どおり久遠は私を大きく広げた葉に乗せて湖の対岸の白樺林に連れていってくれた。眼下に広がる湖も、空を渡る心地良い風も、白樺林の美観も、何もかもが初めての体験だった。私たちは誰もおらず音もしない白樺の森を二人だけで散策して楽しんだ。だが生まれつき煌気の弱い久遠は帰り道の分の力までうっかり使い果たしてしまい、疲れ切って白樺の木の下で眠ってしまった。そこで私はしかたなく久遠を背中に負ぶってなんとか自分の脚で歩いて戻った。家に着いたときはもう夕方で、目が覚めた久遠はびっくりして私に迷惑をかけたと大泣きし、その上永遠にひどく叱られて大変だったが、今となってはいい思い出だ」
彼方はかすかに首を横に振ると、片眼鏡の奥から感情の今にもあふれんばかりの瞳で静夜を見つめた。
「久遠は本当に優しい子なんだ。だがその分脆く危うい面もある。あの子は自分に無力感や挫折感を抱いている分、他者の苦しみや不幸にも敏感だ。久遠が川に流されてきた人間を助けたと聞いたとき、私は少しも不思議に思わなかった。見つけたのが久遠でなければ君は見向きもされず川を下って今頃は海の藻屑だろう。助けたいのに助けられない永遠や同胞たちに寄せる思いが彼を動かしたんだと私は思っている」
静夜は出会ってからこれまでの久遠を思い出した。久遠はいつでも自分より他者を優先し、他者に尽くしていた。親と離れて暮らす子供たち、優秀であるがゆえに厳格で孤独な姉、そして記憶を失った自分。寂しさや喪失が空けた虚ろを埋めようと寄り添うことで久遠は自分自身の形を保ってきたのかもしれない。それが自分の居場所、生きる意義なのだと。
「本当は私が一緒に行ってやりたいが、この脚だから私はついていくことはできない。だから私の代わりにどうか久遠を守ってやって欲しい…それが私から君へのたったひとつのお願いだ」
静夜は少し考え込んだ。冷淡だろうかとも思ったが、自分の態度を偽らず、あえて率直な言葉を口にした。
「あなたと違って俺はまだ久遠と出会ったばかりで、彼のことをあなたほどは知りません。これから起こるかもしれないさまざまな状況の中で、彼がどんな行動をし、どんな決断をするかも、また俺がそれを理解したり止めたりできるかも正直わかりません。すべては久遠自身の意思によるものですから。…ですが」
少しずつ目を見張る彼方に、静夜は凛然と告げた。
「久遠は絶対に死んではいけない。死なせはしません。必ず俺が側についています」
彼方は満足を得、その代わりに何かを諦めたようにそっと目を伏せた。
「頼む。…私はここで君たちの無事と、君の記憶が戻ることを祈って待つことにするよ。それから…今した話は久遠には内緒にしておいて欲しい」
「わかりました」
静夜がうなずいたとき、ちょうど久遠が二人を捜しにやってきた。
「静夜、彼兄、こんなとこにいたんだ。二人だけで何話してたの?」
「なんでもない。ただの旅の心得というか注意事項だよ。そうだよね、静夜くん」
「はい。俺はいろいろ忘れてしまってますから」
「ええー、ほんと?なんか怪しいなあ…まいっか。そろそろ出発だぞ、静夜」
そして三人は宇内や皆のところに戻った。
「久遠、わかっているな。おまえはまだ半人前ゆえ、絶対に無理はせぬこと。煌礎水の泉のある道筋をたどること。何かあればすぐに近くにいる同胞たちに助力を求めるか、我々に知らせをよこすこと。よいか?」
「はい」
「静夜殿。記憶がないままの旅は不安かもしれぬが、どうか久遠をよろしく頼む。いつか記憶を取り戻して本当の君に戻ったら、君自身のことをたくさん教えてくれ。幸運を祈る」
「はい。手厚い庇護と寛大な処遇に、心から感謝します」
二人はうなずき合い、鞄を背負った。
「さあ、出発だ!」
久遠は涙も見せず、胸を張って大きく一歩を踏み出す。そのすぐ後ろには、長い脚のゆったりとした歩調で静夜が続く。
「それじゃ、いってきます!」
「いってきます」
二人は鈴生りになって見送る原礎たちに手を振りながら森を抜けて街道に出る道を歩いていった。
宇内と並んでいた彼方が物憂げな表情でささやいた。
「本当によろしかったのですか、宇内様。…久遠を手放して」
「不安がないわけではないが、先読みのしすぎも可能性を狭めてしまって良くない。今までわがままを言ったことがなかった久遠があれほど熱望したのだ。叶えてやりたいと思うのが親心だろう」
「それは…そうですが…」
「こういうのは何と言ったかな…ああ、そうだ」
宇内は珍しく目尻を下げて柔らかく微笑んだ。
「可愛い子には旅をさせよ、だ」
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