誰の子か分からない子を妊娠したのは私だと義妹に押し付けられた~入替義姉妹~

富士とまと

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「あ、ああ……」
 ルーノ様が手を下ろしたことにホッと息を吐き出す。
「その、アイリーンは、次にどこのお茶会や夜会に参加する予定なのか教えてくれないか?」
「分かりません」
 行けと言われた舞踏会があといくつあるのか。
 アイリーンの出産まであと半年ほど。最低でもあと半年はアイリーンと入れ替わっているけれど……。
 その間に、何度舞踏会へと足を運ぶことができるのか。
 そこまで考えてハッとする。
 バレたらどうしようと思っていた……。アイリーンの身代わりで舞踏会へ足を運びたくないと思っていたのに。
 何度舞踏会へ足を運べるか考えるなんて。
「アイリーンは多くの会に足を運んでいると聞いたけれど……」
「あの……お義姉様が体調を崩して領地で静養中なので……心配で控えるように……していて」
 ルーノ様がピクリとこめかみを動かした。
「そうだったな……ヴァイオレッガが倒れたという話は聞いている。アイリーンは優しいな。さぞ心配だろう」
「私は優しくなんてないですっ」
 心配なんてしてない。
「お義姉様は、命に別状もないとお医者様に言われて……。でも少し休みが必要で……」
 ルーノがそうかと小さくつぶやく。
「何かショックなことでもあったのか……な?その、少し休みがというのはどれくらいだ?いつ領地から戻ってくるんだ?」
 ルーノの探るような質問に首をかしげる。
「あの、お義姉様のことを心配してくださるんですか?……本当に大丈夫ですので」
 ルーノが小さく首を振った。
「今日は、公爵家主催だったから参加したんだね……?上位貴族からの招待は欠席しにくいということか」
 たぶんそういうことだろう。
 いや、それだけじゃない。きっと、お父様は上位貴族主催の舞踏会ならば、多くの上位貴族が参加する。アイリーンを売り込むためか、自分がのつながりを持つためか。そのために参加を決めたのだろう。
 あいまいに笑って返す。
「俺は……こんなことになるなんて……」
 ルーノが苦しそうな表情を見せて手で目元を覆った。
「ルーノ様?」
 どうしたのだろう突然。
 ルーノ様は、顏から手を外すと、私の頬をそっと撫でた。
「いいや、なんでもない。すまない。じゃあ……」
 触れられた頬が熱を帯びる。
「はい。失礼いたします」

 お辞儀を返してダンスホールに一人で戻った。すぐにお父様の姿を見つけて近寄る。
「アイリーン、どこにいたのだ」
 お父様が声を潜めて私に話しかけた。
「知っている人になるべく合わないように、庭園にいました」
「誰にもバレてないだろうな?」
「はい」
「じゃあ、帰るぞ」
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