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「ご婚約おめでとうございます。アランディス様。妹のアイリーンとヘレーゼ様を天秤にかけてヘレーゼ様をお選びになったのね。3人で楽しめたら楽しそうだとおっしゃっておいででしたが、ヘレーゼ様ともう一人、どなたを入れて3人で楽しむおつもりかしら」
 アランディス様の顔が青くなり、ヘレーゼ様がそんなアランディス様の腕に回していた手を離した。
「ち、違うんだヘレーゼ」
「何が違うの?この変態っ!近づかないでよ!」
 面白そうに集まってきた人の中には血相を変えてこの場から逃げ出そうとする男の姿があった。
 見に覚えがありすぎるんだろう。
 流石に女性を伴っている者は、あからさまに逃げ出そうと言う怪しい高度をして女性に問い詰められるわけにもいかずに言い訳を考えてそっと離れようとしているようだが。
「ああ、ミューナ様。もしかして隣にいらっしゃるアーサー様とご結婚なさる予定かしら?」
 ミューナ様が私に見下した目をむける。
「それが?まさか私のアーサー様にも言いがかりをつけるつもり?あいにくとアーサー様は私に一途なのよ!」
「いいえ、アーサー様はお優しい方ですからよかったですわねと伝えたかったのですわ」
 私の言葉にミューナ様が自慢げな顔を見せる。
「私が、バリオス子爵三男に誰とでも寝るんだろ、俺ともいいことしようぜと体を押し付けられ逃げ出そうとしたけれどそのまま壁に押し付けられ体を触られそうになったところをアーサー様には助けていただいたのですわ」
 ミューナ様が、ふっと口元に笑いを浮かべる。
「そうでしょう。私のアーサー様は、あなたのような娼婦まがいの令嬢にも優しいのよ!」
「ええ。そのまま怖かっただろう、大丈夫かいと、慰めるふりをして部屋に連れ込まれましたけれど……あれも、きっと優しさなのですわね?」
 ミューナが固まる。
「違うんだ、愛しのミューナ。怖かったわ、一人にしないでと言うものだから……」
 そんなことアイリーンが言うはずがない。
「ほ、ほら、やっぱり、ヴァイオレッタが私のアーサー様に手を出したんじゃないのっ!」
 ポケットから封筒を取り出す。
「あなたも、こちらの手紙を筆跡鑑定いたしますか?」
 手紙を差し出せば、ミューナが受け取る前にアーサーが奪い取ってびりびりに破いて捨てた。
 そんな行動をとれば、疑惑が深まるのに。
「こちらのイヤリングは、とある伯爵からいただいたものです。妻には安物で十分だ。君には本物が似あうと、奥様よりも高価なイヤリングだそうですわ。宝石商に奥様用に作らせるときに、普段使い用に同じデザインで安物も作らせたそうですの。これと同じデザインのイヤリングをしている伯爵夫人はいらっしゃいませんか?私、このような年寄り臭いデザインのイヤリングなどいりませんのでお渡ししたいと思っていますの」
 それからも次々に、ドレッサーの引き出しの封筒の中にあった小物を持ち主に返そうとポケットから取り出す。
 そのたびに、悲鳴や怒鳴り声が増えていく。
 いつしか、この騒ぎを聞きつけてかなりの人間が集まっていた。
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