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競争の勝敗

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「マーク、ちょっとお願いしていい?」
「え?なんで、おいらの名前……」
 しまった。お告げが……そう、お告げ、お告げ……。
 ポテチを作る私の手伝いをしてくれたマーク。あの時はありがとう。
「ジャガイモを向こう側が透けて見えるくらい……というのは大げさだけれど出来るだけ薄く切ってもらえない?ジャガイモ2個分ほどでいいわ」
「薄くですか?分かりました!」
 周りで様子を見ていた料理人たちが、マークのために場所を開けて、必要なものを準備している。
 本当、調理場の雰囲気っていいよね。助け合いがしっかりできてて。まぁ料理長の人柄なんだろうなぁ。
「エリータ様、申し訳ございません。辺境伯領出身の料理人は本日は休みだそうです。別の辺境伯領出身者を探しましょうか?」
 侍女の報告に首を横に振る。
「では、図書室に行かれますか?」
 そうか。私と殿下の勝負しましょうという会話を聞いていたのね。
 でもまぁ、勝負する気なんて本当は全然ないのよね。
 殿下がせっかく国のことに興味を持っているのだから、もう少し勉強してくれればいいなと思って言っただけで。お城務めをしている官吏に尋ねればすぐに答えは分かるでしょう。
「いえ、結構よ。それよりも、これを完成させて持って行きましょう」


 鐘が鳴りガゼボに向かうと、案の定嬉しそうな顔をして殿下が座っていた。
「俺の勝ちだ!俺の方が先に戻ったんだ」
「そのようですわね」
 私が負けたというのに悔しそうな顔をしていなかったからか、殿下の興奮はすぐに冷めてしまった。
 あ。しまったわ。もうちょっと悔しそうな顔をするべきだった?
「殿下、お茶にしませんこと?先ほどお菓子を食べられませんでしたでしょう?簡単なものを準備させましたの」
 話題を変えると、殿下はすぐに気持ちを切り替えた。いや、単純なだけか?
「菓子?いや、だけど俺は菓子が食べられない呪いが……」
 呪いの内容変わってるじゃないかい!卵だよ、卵!なんで卵が食べられないがお菓子が食べられないにすり替わってるんだよ!人の話ちゃんと聞いてたか?覚えてたのか?
「大丈夫ですわ。卵は使っておりませんの。毒見させていただきますわね」
 薄く切ったジャガイモを油でカラリと揚げて塩を振る。それだけの簡単お菓子。セイラが言うには「ポテチ」という名前のお菓子だ。
 1枚手に取り口に運ぶ。パリパリとした食感と、油の香りと塩味がたまらない。
 食べ出したら手が止まらないし、セイラが食べ過ぎちゃう太ると言いながら何度も作らされたっけ。まぁ、そのたびに私も調理場で食べてたけれど。味見とか毒見って大切ですしね?
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