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提案

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「隠し味に使われているものとか全然分かりませんが、美味しいというのは分かります。それで充分だと思っています」
「すまん、何が言いたいのか分かるように話してくれるか?」
「つまり、私はケーキの材料を当てる能力は持ってない。でも美味しいケーキは食べられる。殿下も文字の読み書きの能力は持っていないけど、考えて判断することは出来るということですっ!」
 殿下がぽかんと口を開けている。
「読み書きはしない?」
「そうです。料理と一緒です。自分で読んだり書いたりしなくていいとそう割り切ったらどうです?地図は文字じゃないから書けるんですよね?人から聞いた話も理解して私に説明してくれましたよね?読み書きも出来なければ困るという人がいたら、じゃぁ、ジャガイモの皮を自分でむいて食べなさいとでも言ってやればいいんです。ジャガイモの皮をむくのって、それはもう、大変なんですよ?包丁で手を切りそうで怖いし、力加減も難しいし、ジャガイモは手からつるんと逃げていくし」
「公爵令嬢のくせに随分詳しいな。ジャガイモなんて触ったこともないだろ?」
 ギクリ。
「ほ、ほら、これを調理場で作らせたときに、見習いの人の手元をね……見て……」
 ごにょにょ。って、どうしてどうでもいい部分にツッコミを入れるかな!殿下!私の話の肝はそこじゃないんですけど!
 と思って殿下の顔を見たら、目が潤んでいる。
 ひえっ!泣かせちゃった?やばい、どうしたらいいの?
 そう、そうだ。困ったときのアレだ、アレ。
「ひゅごぉぉぉぉほほ!」
 しまった、焦ったからかんじゃった。奇声なのに変な声でた!いや、奇声だからそもそもが変なんだけど!
「お、お告げですわ。ほら、これ持って早速行ってらっしゃい」
 泣いてるところなんて見られたくないだろうと思って、地図に小石と小枝をくるむようにしてまとめると殿下に押し付けた。それから背中をぐいぐいと押してガゼボから追い出そうとすると、殿下が抵抗をみせた。まさか、私とまだ一緒にいたい?
「あ、あれも」
 殿下が、ポテチの皿に手を伸ばす。……そういうとこやぞ!

 それから2週間が経ち、殿下から手紙が届いた。
 開いて見ると、びっしりと美しい文字が並んでいる。
「あー、これは間違いなく代筆に頼んだやつだわ。しかも、一流の代筆屋を手配したのね……どこにもインクの掠れも溜まりも見えないし……」
 内容は、あれから何がどうなったかというのが事細かに書かれている。
「ふぅーん。読み書きしない宣言したんだ。そりゃ陛下も驚くよねぇ。まぁ宰相であるお父様に殿下の味方をするようにお願いしておいたし、しばらくはそれで様子を見ることになったんだ。家庭教師は口頭のみに切り替え。教科書ノートは排除。サインする時と特別な場合にしかペンは持たないのか。橋の話は王都近くの川で試作し実験することになったのか。費用面耐久面など問題なければ実際に使うようになるわけね……」
 報告は5枚もあった。そして次の1枚。
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