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舞踏会の日がやって来た

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 とはいえ、エミリオ―ルとか、エミリオロスとか、イニシャルがEはきっと同じよね?
 何色で刺繍しようかな。ふと、エミリーの瞳の色が浮かんだ。よし。瞳の色と同じ色で刺繍しよう。
 もし、エミリーいや、エミリオが違う名前でイニシャルがEじゃなかったとしても、瞳の色まで違うことはないんだから。
 ふんふんふふーんと、鼻歌交じりに刺繍とレース編みを続ける。
 この、少しずつ出来上がっていって、出来上がっていく部分が次第に増えて行く、ああ、なんだろう。すごくこう、この楽しみをなんと表現すればいのか。
 
 待ちに待った、舞踏会の日が来た。
「じゃぁ、リリー、無理しないように」
 今日は2台の馬車でお兄様とは別に公爵邸を出発する。公爵令嬢だとなるべくバレない計画だ。
 お兄様は、エカテリーゼ様のお屋敷に寄ってから会場に向かうため、私よりも前に屋敷を出ている。
「行ってまいりますわ、お父様」
 エミリーに会える嬉しさで、ずっとソワソワしている。
「……大丈夫かい?緊張しているのかい?会場まで付き添おうか?」
 いや、このソワソワは、緊張から来るものじゃなくてと説明することもできずにただ首を横に振ってお父様の申し出を断る。
 馬車は、少し遠回りしてロイホール公爵家へと向かった。
 ガタゴト揺れる馬車の中。ただ、ひたすらエミリーと会えることが嬉しい。
 オレンジ色の新しいドレス。エミリーは見たらなんというだろう。
 胸元には、フリルでもリボンでもなく、仕立屋が新しく作り始めた布の花で飾られている。
 拳ほどの大きさの濃淡で差があるオレンジの花が襟元をぐるりと囲むように付けられている。
 さらに、飾り気のないスカートの上部と、フワフワとしたかわいいスカートの下部との切り返しの部分にも、左右に起きなりぼんのついた花のブーケ・ド・コサージュが付けられている。
 会場に入ると、奥の方に人が集まっている場所があった。
 中心にいるのは、エカテリーゼ様だ。
 婚約者であるお兄様が隣にいて、反対側の隣に男性が一人、後ろに男性が3人。
 そして、その周りに10名ほどの女性が集まっていた。
 エカテリーゼ様は人気があるのね。
 それとも寂しくないように集まってあげているのかしら?
 いえ、違うわよね。ここは独身男女の出会いの場ですから。
 婚約者のいる者は、恋の橋渡し役として参加しているわけで。エカテリーゼ様は積極的に女性と男性の橋渡しをしているのかな。
「あ」
 人が割れて、エカテリーゼ様のドレスが目に入る。
 オレンジ色のドレスに、少し色の薄いオレンジ色のブーケ・ド・コサージュが左肩の少し下あたりに付けられている。
 あれは、お兄様がプレゼントしたものね。早速使っているんだ。


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